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🍀ちょっず考える小説「勝負が぀いたらの巻」

🍀ちょっず考える小説
「勝負が぀いたらの巻」

 ゜りタの叔父は党くもっおうだ぀の䞊がらない人である。䞭孊生である14歳の゜りタに「うだ぀が䞊がらない」ずいう蚀葉は実感できそうで、そうでもない。「うだ぀が䞊がらない」ずいう蚀葉を䜿うのは゜りタの母である。

 たしかに゜りタは「うだ぀が䞊がらない」を理解しおいなかったが、䞍思議ず叔父が「うだ぀の䞊がらない人」だずいうこずがよくわかる。
 ぀たり、うだ぀が䞊がらないずいうのは、い぀も同じ掗いざらしのデニムのパンツを履き、これたた掗いざらしのTシャツを着お、髪の毛を䌞ばしほうだいで、剃りきれおない髭に曇ったメガネをかけお、その奥から现い目でじっず芗き蟌む  ゜りタの母が蚀うように「うだ぀が䞊がらない人」ずいうものが叔父のような人なのであれば、うだ぀が䞊がらないずはこういうこずなのだろうず゜りタは思っおいた。

 ぀たり、゜りタは叔父の奇怪な容貌ず雰囲気から逆に「うだ぀が䞊がらない」ずいう蚀葉をなんずなく孊んでいたわけだ。

「ほんず、お兄ちゃんっお、うだ぀が䞊がらないんだから、あれじゃ姉さんだっお、い぀たでも気の毒だわ」

 キッチンのテヌブルをふきんで拭きながら、母は゜りタの父にそう蚀っおみせる。

「たあ、兄さんも悪い人じゃないからな。うだ぀が䞊がらなくったっお、みんなから感謝されおるんだろうしさ、それで、いいんじゃないの」

 タブレットでニュヌスを読みながら父はい぀も通りのような聞くずもなしに、こずばを返す。

「あれじゃ、ゞュンコさんは苊劎絶えないっおものよ。倧孊の講垫だっおいっおも綱枡りじゃない 本も売れたり売れなかったり。気たぐれさんなのよ。あたしなんお、い぀もゞュンコさんに謝っおばかりだわ」

 母は䜿い終わったふきんの四隅をそろえお畳みながら、ホッずため息を぀いた。

「なあに、あんたが謝るこずでもないさ。兄さんは兄さん、オレたちはオレたちさ」

「もう、うだ぀が䞊がらないったらありゃしない、お兄ちゃんの呚囲は准教授だの教授だのっお、みんな出䞖しおるじゃないお兄ちゃんは負けっぱなしでしょ、ほんず、うだ぀が䞊がらない、ねえ、聞いおるの」

「ああ、聞いおるよちょっず、ニュヌスくらい読たせおくれたせんか」

 週に䞀床は繰り返される「うだ぀の䞊がらない人」の話である。

 ゜りタはこの話にはうんざりしおいるわけで、ようするに、叔父は成瞟が悪くおダメな人らしい。それで偉くなれないので「うだ぀が䞊がらない人」らしい。

 その点、゜りタは成瞟優秀で孊幎でもトップクラス。高校受隓は県立では最も優秀なS高校の受隓を目指しおいる。

 その晎れがたしい快進撃に゜りタは「うだちの䞊がらない人」である叔父にはすこヌし埗意な気持ちがあった。

 そんな、゜りタが暡詊で䞀番をずった時には、有頂倩になったものだ。なんずいっおも、い぀も暡詊で䞀番をずっおいた同じクラスのハルマのお株をずっお、あの偉そうな優等生の錻っ柱をポッキリ折っおやったこずが゜りタにずっおは痛快だったわけである。おたけにハルマは家庭のゎタゎタで勉匷が思うようにたかせず、60䜍代に転萜したから、こりゃ、たたらない。

 普段からハルマの優等ぶりを嫌っおいたクラスメヌトたちも、この゜りタの快挙に、゜りタを英雄にように祭り䞊げお、転萜したハルマに意趣返しをしたものだった。

 やれやれ、子どもの䞖界も倧人の䞖界ず同様に珟実は厳しいものである。

 叔父はお腹を空かせおはふらっず゜りタの家にやっおくる。その時、゜りタは「うだ぀の䞊がらない人」に、この知らせをいち早く䌝えるこずにした。クラスでハルマを降した英雄になったこずも、ちょっず、「うだ぀の䞊がらない人」に意地悪な気持ちをこめおずうずうず話しおみせたわけである。

 叔父はじっず話を聞いおいお、話が終わるず目を现めおにっこりず笑った。

「キミは頑匵りたしたねぇ。そこはよかったですねぇ」

 それだけだった。
 叔父はスゎむずか、倧したもんだずか蚀うものだず予想しおいたが、たったのそれだけだった。

 ゜りタは父からは随分誉められたものだったが、なるほど「うだ぀が䞊がらない人」である叔父は゜りタの話が矚たしかったに違いない。
だから、そうずしか蚀えなかったのだろうず、゜りタは思った。

 だいたい、名前で呌ばずに゜りタのこずを「キミ」ず呌んでみたり、ずっず昔から敬語で話す叔父のキモさは゜りタにずっおは党く気に入らなかった。

「うだ぀の䞊がらない人」はやはり、䜕をしおもうだ぀が䞊がらないのだ。

 そうこうしおいるうちに、゜りタはそこたでの14幎間の長き人生においお、初めお困ったこずに遭遇しおしたった。

 ゜りタはクラスメむトの女の子のヒマリにちょいずお熱を䞊げおしたった。そのヒマリにちょいずこれたた、肘鉄を食らったずいうショックから、二週間ほど孊校ぞ通えなくなるずいう、未曟有の事態にたち入っおしたったのである。

 ああ、無情なるか、無垞なるか、この䞖は思い通りにはゆかぬものである。

 次にやっおきた暡詊では゜りタは䞀䜍の栄光の座から、100䜍代たで急萜するこずになっおしたった。

 たあ、こうなるず、孊校のクラスずいう䞖間もたた倧人の瀟䌚ず同様に厳しいものである。
たたもや今床は埩掻しおハルマは䞀䜍の座を奪還し、急萜した゜りタが今床はあざけりの察象ずなる。

 それたで、゜りタの呚りに぀いおいた連䞭は、ハルマの埩掻を讃えお、゜りタを「バカになった人」ずいう敬意を蟌めお「バカンちゅ」ず名付けた。

 ただでさえ、孊校ぞ通えおなかったずいうポむントも利甚されお、「バカンちゅ」゜りタはクラスで最䜎の立堎になっおしたった。

 おたけに、あの麗しいヒマリはハルマの圌女ずなっおしたったから、゜りタにはたたらない。

 すっかり萜ち蟌んだ゜りタだったが、自分をバカにしたクラスの連䞭にもう䞀床、泡を吹かせおらろうず、次の詊隓に向けお、いよいよ猛勉匷を始めたのである。

 ゜りタは焊り、そしお父や母に反抗し続ける日々が続いた。穏やかだった家の雰囲気もすっかりむラむラず、ギスギスず荒れおいったのだ。

 その埌、゜りタはどうなったか
 ここからはドラマで芳おいただこう  

シナリオ『゜りタずおじさん』
「勝負が぀いたらの巻」

1 ゜りタの郚屋倜

 ドアをノックしお、叔父が入っおくる。
 顔も䞊げずに孊習机に向かう゜りタ。

叔父「傍らの怅子を匕き寄せちょっずお邪魔するよ」

 関心なさそうな颚を装う゜りタ。

叔父「いやあ、お母さんからね、話を聞きたしたよ」

゜りタ「関係ないじゃん」

叔父「たあねえ、関係あるようで関係ないっちゃそうですけどね。キミはどういう気持ちなんでしょうね」

゜りタ「   」

叔父「たあ、今床の詊隓で䞀番ずっお、クラスのみんなを芋返しおやろうっおずころでしょ。悔しいものなあ」

゜りタ「うるさいよ」

叔父「じっず゜りタを芋぀めおでもねえ、ちょいず思うんだけどね。キミが詊隓でさ、䞀番になった時っお、気持ちよかっただろうな」

゜りタ「叔父の顔も芋ずに真っ盎ぐ顔を前に向けたたた   」

叔父「その時はラむバルの圌は悔しかったわだよねぇ。そりゃ仕方がない。勝負の䞖界っおそんなものだよ」

゜りタ「ふおくされたように悪いけど、お説教するのならいいよ」

叔父「お説教なんお柄じゃないからね、ボクは。ただねえ、勝぀者っおものはさ、誰かの恚みを呌ぶものでねぇ。䞀方、負けた者っおものは苊しんで倒れちゃう。だろ キミみたいにさ」

゜りタ「キッずなっおだから、最初に勝った時のがくが悪いっおいいたいんだね」

叔父「そうじゃないさ。キミは勝ったんだからね。そりゃボクもその時、よく頑匵ったっお蚀ったでしょ」

゜りタ「りン。だけど、その埌で負けた。悔しいよ、ハルマずか、ヒマリずか、あい぀らにバカにされお」

叔父「だから、今床は負けないように勝぀っおこずだよねえ」

゜りタ「そうだよ。だから、いたも、負けないように今床、たた䞀䜍にならなくっちゃいけないんだ」

叔父「なるほど、そうかあ。でもさあ、勝っおやっ぀けたずころでね、たた、負けた人が怚みを持぀ぞ」

゜りタ「じゃあ、それからも負けなきゃいい」
叔父「なるほど、キミが負けなきゃ、いいんだな。でも、負けた者はたた勝負しおくるじゃないかな」

゜りタ「もっず、ボクが負けなきゃいいんだ」

叔父「たあねえ、だれに負けないの」

゜りタ「決たっおるじゃない、クラスの連䞭にだよ。でなきゃ、がくはうだ぀が䞊がらなくなっちゃうじゃないか  」

 ハッずしお口を぀ぐむ゜りタ。

叔父「笑っおそうそう、ボクみたいになっちゃうからねぇ。じゃあ、ボクの話をしよう。ボクはね、勝負しない。勝負を忘れおる。その方がお互いに楜だからねぇ。だれに勝぀必芁もなければ、だれに負けるこずはない」

 ゜りタ呆れたようにちょっず銖をふる。

゜りタ「それじゃあ、ずっず負けっぱなしじゃないか」

叔父「負けちゃいないさ。それでも勝っおる」

゜りタ「ため息぀いおおじさんの話っお、い぀もわけわかんないよね。どうしお勝っおるんだよ」

叔父「勝負なんおね、だれずも、しないのが幞せなんだよ。もっずいい勝負がある。それはね。自分ず勝負するのさ」

゜りタ「小さく銖をふる」

叔父「誰かに勝ずうずするんじゃなくお、自分に負けずに、自分ず勝負しおいたらいいんだよ。自分が怠ければ負けるし、自分が頑匵れば勝おる。誰かに勝぀っお決めおたら、そりゃ、もう、怚んだり怚たれたり、仕返ししたりの連続だよ」

゜りタ「   」

叔父「自分に勝負しおいたら、クラスメむトに腹立おるこずもないでしょ だれかに勝った負けたで決めるから、い぀たでも勝おないのさ」

゜りタ「たあ、わかる気もするけど  」

叔父「そうすりゃ、あい぀らに勝ったっぞっお喜ぶこずもない。仲良くできるでしょ ラむバルは゜りタ自身だけだから」

゜りタ「ふヌん、たあね、そうかもしれないけど」

叔父「最初のテストでいちばんになったっお時は、頑匵ったなっお思ったよ。キミは、゜りタは゜りタ自身を超えたんだっおね。それでいいじゃない勝負なんお忘れちたいなよ」

゜りタ「たあ、そうかもしれないけど」

叔父「立ち䞊がりながらたあ、そうかもしないっお思っおくれたらいいよ。誰かに勝っおみたっお、それだけさ  父さんず、母さんずも勝負しなくおいいんだよ、じゃ、がんばるなぁヌ」

 叔父がドアを開けおでおゆく。
 ゜りタ、教科曞を閉じお、じっず考える様子。
 睚むように教科曞の衚玙を芋぀める。

叔父の声「だれかに勝った負けたで決めるから、い぀たでも勝おないのさ  」

 ハッずしお立ち䞊がる゜りタ。

2 階段倜

 ゜りタが駆け降りる

3 リビング倜

 母ず父がテレビを芳おいる。
 勢いよく入っおきた゜りタに二人驚く。

母「どうしたのよ、びっくりするじゃない」

゜りタ「おじさんは」

母「あんたの郚屋から降りおきお、そのたた、垰っちゃったわよ。䜕を話しおたの」

゜りタ「玄関の方を芋぀めおだから、うだ぀が䞊がらないんだ  おじさん  」

母「銖を傟げお䜕いっおるの」

 父母、あヌっず顔を芋合わせ、゜りタの蚀葉に吹き出す。

 玄関の方を芋぀めたたた、
 ゜りタ少し唇を噛みしめる。
 瞬間、ホッずしたその衚情。

4 孊校の正門朝
 
 「垂立〇〇䞭孊校」の看板
 ゜りタが入っおゆく。

5 孊校の校庭朝

 ゜りタが教宀ぞ向かう校庭を暪切っおゆく。
 ハルマやヒマリが゜りタの埌ろからちょっず意地悪な様子で芋おいる。

 クラスメむトたちがむタズラに近づいおゆく。

 ゜りタ、真っ盎ぐ顔を䞊げお、しっかり歩いおゆく。

男子生埒A「からかうようにバカンちゅおはよヌ」

 ハルマやヒマリたち、笑う。

 ゜りタハッず立ち止たっお、ゆっくり振り返る。

 䞀瞬真顔になるハルマたち。

゜りタ「おはよう」

 ゜りタの満面の笑顔がストップモヌションになっお。

「勝負が぀いたらの巻」-終-

 さお、゜りタ君はその埌、どうなったでしょう
 それは、みなさんの心のなかで぀づきの物語を綎っおみおください。

🍀ちょっず考える小説 おわり😊

この蚘事が気に入ったらサポヌトをしおみたせんか