見出し画像

「模倣」をしそうになった時に考えるべきこと

コンサルティングの仕事をする際に、できるだけ事例を多く挙げるように心がけています。

理論だけを話しても相手はなかなかイメージできないものですが、具体的な事例があると頭の中で像が浮かびあがり理解しやすくなるからです。

しかし、時々、世の中にある成功事例をご紹介すると、「うちも同じことをすればいいんですか?」とおっしゃる方がいます。

そんな時、もちろん自分の説明不足を反省するのですが、同時に「この人は危険信号だな」と感じます。

事例を事例のまま受け止めてしまう方は、潜在的に「表層的な模倣をしてしまう危険性」を秘めているからです。

例えば、「フィットネスのカーブスは男性、メイク、鏡の3つを無くすことで、主婦が男性の目や自分の体型を気にせず、気軽にフィットネスができるようにした」といった例を出すとします。

この事例から、「お客様が潜在的に気になっていることを取り除くことによって気軽に通える環境を作ることができる」という本質を導き出せる方もいます。

しかし、「男性とメイクと鏡を無くせば成功する」と表層的に捉えてしまう方もたまにいるのです。

前者の、本質を導き出せる方の場合、このような考え方をされます。

事例(具体例)を知る
(例:カーブスの事例)

本質(抽象的なもの)を引き出す
(例:お客様が潜在的に気になっていることを取り除くことによって気軽に通える環境を作ることができる)

自社に照らし合わせる
(例:自社のお客様が気にされていることとは?どうすればもっと快適になる?)

自社なりに本質を取り入れる
(例:自社のお客様は男性ビジネスマンなのでロッカーにスーツがかけられるようにしよう)

しかし、後者の、表層的に捉えてしまう方の場合、このような考え方をされるのです。

事例(具体例)を知る
(例:カーブスの事例)

事例(具体例)をそのまま取り入れる
(例:男性とメイクと鏡を無くす)

コンサルタントとしては、そのような場合、当然もう一度考え直してもらうということになります。

なぜなら、事例をそのまま取り入れるのは、ただの「模倣」だからです。

カーブスの例はどちらかと言えば「サービスを提供する環境づくり」に関することなのでまだ良いかもしれません。

それが形のある商品になった場合、何も考えずに「模倣」をする、つまり模倣品を作ることは非常にリスクが高いのです。

自社のブランド価値全体を貶めることになり兼ねませんし、知的財産をめぐる係争に発展する可能性もあります。また、本質を掘り下げようとせず模倣を繰り返すことで、企画力や提案力が育たなくなります。

そして最大のリスクは、今までの顧客の信頼を失ってしまう可能性が高いことです。

世の中には、模倣品を見て、生産者の品性を疑ったり、明らかな拒絶反応を示す人も少なくありません。

なぜなら、何も考えずに模倣する行為を「知的でない」「クリエイティブでない」と評価したり、「他社の開発費やデザイン費にただ乗りしている」と考える方も多いからです。

(自分の好きなアーティストの作品が盗作だったとわかったとしたら…といったことを想像するとわかりやすいかもしれないですね)

当然、世の中にあるものは突き詰めて考えれば何かの模倣であったり、既存のものの組み合わせであったりすることがほとんどだと思います。

今の時代に、何も模倣せずにゼロからものを作り上げるのは、非常に難しいと言えるでしょう。

とはいえ、何かを見て、その何かから本質を掘り下げてからエッセンスを取り入れるのと、見たままを模倣するのでは天と地の差があるのです。

何かの事例を見聞きして、これを取り入れたいと思った時、その本質は何なのか、自社に照らし合わせるとどんなことができるのか、立ち止まって考えてみることが大切だと思います。

今までのお客様やご自身の会社を大切にするためにも。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?