【鍼のように使う】

博心堂鍼灸院の、いんちょです。

鍼施術の折、患者さんから「先生は鍼を使わないのですか?」と尋ねられます。

「もちろん使いますよ」とお返事します。

くわえて、「鍼を使っていいのが鍼灸師です。鍼を使わなくちゃいけないわけじゃない。」ということも添えて。


博心堂鍼灸院へ足を運んでくださる患者さんの中で、「ここ(博心堂鍼灸院)は、一つのことを聞くと100答えてくれる。ほかのところだと1つくらいしか答えてくれないのに。」なんてことを言っていただいたことがあります。

ぼく自身、鍼施術を受けるとき、見てくださる鍼灸師さんがどんな風に僕のことを見てくれているのだろうと、とっても気になります。

また、その鍼灸師さんが僕の体をどんな風に見立てて、どんな施術の組み立てをしているのか、どんな理屈で鍼を当てるツボを選んでいるのか、なんてことを聞いてみたいわけですね。

ぼくは自分がしてもらいたいなぁということを、僕を選んでくださる患者さんたちにも届けてあげたい。


鍼灸師は鍼を刺していいという資格を取得しています。

でも、鍼を刺さなきゃいけないわけじゃない。

鍼を刺すだけじゃないですよぉ、なんて間口を広くしていたら、鍼施術だけじゃなくて、ご自分の体の状態や症状の原因などを聞いていただけたり、患者さんご本人やご家族の季節の過ごし方やおススメ食材、症状対策のアドバイスなども、ずいぶんいただいています。


長年のたくさんの多岐にわたるぼくへのご要望に応えながら、最近では「東洋医学的なメンタルケアサポート」と称して、「お悩み相談」を受け付けています(鍼施術とは別料金)。

東日本大震災以降、うつ症状やパニック症状への対策として鍼施術を受けていただく患者さんたちが増えました。

今ではほぼほぼ、こうした心理面と体調面の不安を抱える患者さんばかりなんじゃないかな。


人の体は雄弁です。

ココロに抱え込んでいる不安は、実はカラダで受け止めている。

ココロの不安症状があるときは、そんな不安とリンクしているカラダの場所をケアすることで、不安が楽になります。

これとは逆に、カラダの症状が、じつはメンタルトラブルが原因だったりすることがあるわけです。

こういう場合、痛いところに鍼を刺すのではなく、施術中にメンタルのバランスが整い、「ココロのうっ血(たまった不安)」を吐き出させるような対話をしていくわけです(いわゆる「口鍼」というやつですね)。


施術が終わってからは、整ったカラダやココロが維持できるように、過ごし方のアドバイス。

最近だと湿気対策と、急な気温差に対する対処法ですね。

家でできる手軽な方法を具体的にご紹介できるように、衣食住や運動や睡眠など、話題をたくさん準備しています(メルマガ記事では毎週紹介)。

僕の施す鍼施術は、カラダの表面を刺激していく「接触鍼」という手法がベースになっています。

全身に鍼を当てながらカラダの反応を及ぼし、それを瞬時に解釈しながら、鍼を当てるツボを選んでいく(時折脈で確認したりしますね)。

鍼を当てていきながら、脈の状態を確認して、途中で施術の流れを変えることもあります。

これと同じことが、施術中や対話を中心とする相談の時間にも、行うことがけっこうあります。


施術後のアドバイスで食事の内容をお伝えするのに、食材や調理法の好みでかなわないことがある。

「血流を促しながら消耗した血を補うのに、ニンジンをソテーして食べたらいいですよ」なんて伝えても、「ニンジン嫌いっ!」といわれれば、ほかの食材や調理法を代替案としてご提案。

これも、施術の流れや対話の流れを変えるのと一緒ですね。


ぼくが鍼を持たなくても、ぼくの患者さんへのかかわり方がいろいろあっても、すべて鍼施術をする流れが根本です。

鍼施術のベースにある理論が、「易理=物の道理」というやつです。

長年培ってきた鍼施術。

手を変え品を変えながら、「易理=物の道理」から外れることなく患者さんとかかわり続ける。

すべて「鍼のように使う」。
僕の多岐にわたる患者さんへのかかわり方のタネ明かし。

最後までお読みいただきありがとうございます。


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