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【挿絵あり】№3_召喚術の授業は××な魔物と、 (月下美人系魔物 VS 安全第一なぼっち学生)

【月下美人系魔物 VS 安全第一なぼっち学生】の召喚契約を巡る攻防を描く、割と現代的で現実的なファンタジーです。
№2~№10まではBL版・ブロマンス版、共通になります。



最初に魔物が破裂した時も、陰でコソコソ言われていた。
二回目となってからは、あからさまに疑惑や嫌悪を示された。

”またあいつ殺したのかよ!?”

”二回連続って…偶然じゃないだろ。あいつ、何かしてるんじゃねえの?”

”こ、怖ッ!あんな事する人が、こ、こんな近くにいたとは…”

”一緒に授業受けるとか視界に入るのも無理なんだけど。学校の方で退学にでもしてくれよ”

”むしろ自主退学しろって、お願いだからさぁ…”

遠巻きに向けられる異常者や犯罪者を見るような、目。
「っっ”……」

元々僕は、人と話したり関わりを持つ事が苦手だった。
クラスメイトなど周囲と友好な関係を作れていなかったことも、拍車をかけたのだと思う。
そうして僕は、クラスはおろか学校中から孤立した。

 

正直、校内での冷遇には理不尽さを覚えていた。
自分は何もしてないのに。あれは偶然で一時的な事象だったはずなのに。
(なのに…なんであんな目で見られないといけないんだ…ッ?!
 っ…どうして僕ばっかり…ッ!!)

――嘘だッッ!!!

ふと、見たことがない色で自分を強く睨みつけた目が脳裏に蘇った。
「…っ……、…………、」

(………他の人からすれば、狂人の類が野放しで生活空間にいる状況、かな…)

それから僕は努めて冷静に振舞おうとした。
幸いなことに皆、僕を心底不気味がっていたので暴行や嫌がらせは受けなかった。
周りに合わせて自分からも距離を置いた。
そうして周囲に不安や不快感を与えないよう心がけた。

それに人の目よりずっと、不安なことがあった。

――周りが言うように、自分が無意識に何かしていたのではないか…?

もし、そうだったら?
自分のせいで、魔物達が破裂したのだとしたら…?

「っ、」

ぃや、だ、…嫌だっそんなの…だって、それじゃ………

「…っ”、………」

僕が、彼らを死なせた?
いや違う、
……………殺した?

(…ッ、う”っ、ッあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ーーー!!!)

ごめん、ごめんなさい。
殺してしまってごめんなさい。
ほんとにごめんなさい、きて、来てくれたのに…
あんなっ…、あんなひどいことをしてごめんなさい。
ごめんなさい…
ごめんなさいッ………!!!

パリンッ!!

揺らぎ漏れ出た魔力によって、安眠剤を飲む際に使ったコップが砕けていた。
「……」

――ッガシャン! バリンッ!!
扉の外で響いた、陶器の割れた音。息をのむような短い悲鳴。静かに咎める声。
「だってなんでッ!?なんで兄ちゃんばっかりッ!!ずるいよ……ッ”」
それに続いたのは、糾弾するようでいて悲しみが詰まった痛ましい叫び。

自分を責め立てるような音を遮るため、ドアに背を向けベッドの陰で毛布を被る。
それから毛布と共に抱えてきた魔界図鑑を開いた。

魔素と魔力が満ちる、こちらとは違う世界。
日々揺れ動き、形を変える大地。
時に地に潜り、時に天を翔ける魔力の河。
そのほとりに広がる湿原には、白緑色の巨木群がそびえ立つ。

さらに魔界には異なる空間へ繋がる”歪み穴”なるものも存在する。
うっかり踏み込んでしまったら、灼熱の海、白い魔素だけの砂漠、浮雲の中の森…どこへ飛ばされるか分からない。

そして、そんな想像もつかない所で暮らす多種多様な魔物達。

過酷な環境に耐える生体機能を持つ種。
環境の変化に合わせて自身を絶えず変化させる種。
魔力の流れを読むことに長け、暮らしやすい場所を転々とする種。
強い魔力で生活範囲を自身に合うように変えてしまう種…

中には魔力によって空間が歪みやすい事を利用し、亜空間を生み出すものもいるという。

(僕も亜空間?を創れたらなぁ…いや歪み穴で飛ぶのもいいか)
灼熱の海に飛ばされるのは嫌だけど、砂漠は静かそうだ。
こっちの砂漠には意外と生き物がいるけど、魔界には全然いないのかな?

ここではない所、未知の世界や存在へひたすら思いを馳せること。
それが子どもだった僕が見つけた、その時自分にできることであり支えだった。

 

「…っ、…ハァッハァ…ッ、ハァッ、ハァッー……」

(っ、落ち着け、)
精神のゆらぎは、魔力の状態に影響を及ぼす。
だから僕達魔術学校の生徒は精神を安定させたり、精神と魔力の状態を切り離す訓練を受けている。
内側を落ち着かせるため、深呼吸をくり返した。
「…フー、……スー…、……、……。」

 

(…なぜかは分からないけど、僕が召喚すると魔物は死んでしまうのかもしれない)
自分にとって魔物や魔界はずっと憧れてきた存在で、それ自体を心の支えにしてきた。
「っ、…、……………。」

でももう、その憧れも手放すしかないのだろう。

 


今回はここまでにします~
ではまた~ 

1話目はそれぞれこちら↓

BL版↓

ブロマンス版↓



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