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ナカさんの読書記録「浮世に言い忘れたこと (P+D BOOKS)」三遊亭 圓生

昨年2020年春から本を読みまくっています。こんなに読書が楽しいものかと驚いています。中学~高校生の頃が読書のピークでした。図書館の利用券は文京区・台東区・千代田区・荒川区と持っていて、ネットで検索し取り寄せて借りて読む、返してまた予約する、の繰り返しで結構忙しい毎日です。どこも素晴らしい蔵書で、各図書館にはとても感謝しています。

台東区立中央図書館谷中分室は落語や演芸の本の揃えが良いように思います。やはり古今亭志ん生の住んだ町、日暮里だからですかねぇ。十代目金原亭馬生の家があったのもたぶんこの辺り。落語中興の祖、三遊亭圓朝のお墓がある全生庵もこの図書館のすぐ近く。そんな落語の町・日暮里にある図書館で三遊亭圓生の本を見つけました。P+D BOOKSという小学館から出ているペーパーバックです。初版は昭和50年、旺文社から出版されたようです。

内容は圓生の生い立ちや芸談です。圓生は神経質で細かくて品格があって孤高の人という印象です。悪く言えば気難しくて細かくてウルサイオジサンとも言えます。林家彦六師匠のトンガリともまた少し違うかな・・・トンガリの師匠と圓生ではマァ性格合わなかったのはメッチャ分かるな、って感じです。フニャフニャの古今亭志ん生とは逆に相性が合ったのでしょう。

気になったところを少し引用します。
「噺家であたくしよりも先輩といいますと柳家金語楼さんだけですね。文楽、志ん生、柳橋、この人たちはみんな、あたくしより後輩なんです。」
想像しただけでスゴイ!~綺羅星のごとく名人が活躍していた時代!この辺りの噺家さん達を生で聴いたことあるよ!ってドヤ顔で自慢してくるオジサン達いるけど、気持ちわかるなぁ。。。同時代を生きてみたかった!
「あたくしは、晩年の志ん生は見たくなかったですね。あわれで、かわいそうで・・・噺をしていても、半分以上は何を言っているのか、さっぱりわからない。生きているといったって、もう芸の出来なくなった志ん生を見るのは辛い事でした」志ん生の晩年の録音聴くと正直モニャモニャしちゃって聴き取りづらいんですよね・・・(なので初心者には志ん生はオススメしづらいです)圓生は満州へ志ん生と一緒に行った仲ですし、とても思いやりのある一文ですね。「芸を通しておたがいに感じ合う緊張感てえのは、何ともいえない、うっとりするような、一種の快感すらありましたね。それが、志ん生がいなくなっちゃ、そうしようもない。しゃべれなくても、志ん生がいるというだけで、なんか心に張りがありましたのにね・・・」志ん生は圓生より6年早く亡くなりました。男同士の友情を感じる一文です。

噺家は良い着物を着ないといけない、というくだりの一文。
「あの藍みじんなんてえのは、粋な人が着ればじつに粋に見えるが、いなかのおじいさんが着ると田舎柄ですよ、あれは。同じ着物を着ても、片方はたいへんに粋に見えて「いいな」っていうのと、東京でいう「間抜けな着物を着てる」っていのとあるわけですよ。ですから、イキとヤボは紙一重ですね。誰がきてもいいかというと、そうはいかないんですからね。」圓生の美学ここにあり!って感じです。圓生は自分でも言ってるけど派手な着物着ても似合い過ぎちゃうのだそうです。圓生師匠の着物姿の写真見るとどれも絵から抜け出たように素敵ですものね。。。身なりも芸も気品があります。

今の若い者は洋食なんて食べてるからダメだ、というくだりの一文。
「(くさやの干物)あたくしも好きですが、うちの猫がまた好きなんですよ。くさやを買ってくるといちはやく匂いを嗅ぎつけて、ニャゴニャゴ、ニャゴニャゴ、うるさくてしょうがない。」圓生は猫好きだったんでしょうかね。あの渋い佇まいの師匠が猫抱いてる姿、想像するとニヤケますね。
若者の西洋かぶれはダメ、と言っている割に圓生は洋酒党だったようです。
「肴には、甘みを抜いたチップやチョコレートなど。ウイスキーとチョコレートってのはなかなかオツなもんで具合のよろしいもんです。これはエノケンさんにおそわりましてはじめたんですが、その中でもとくに白桃が具合がいい。それから、アレキサンダーなんてのも季節になるとけっこうなものです。」アレキサンダー、洋梨のことでしょうか。どこまでも粋ですね。

最期に小学館のP+D BOOKSシリーズについて。
「P+DBOOKS(ピープラスディーブックス)」とは、後世に受け継がれるべき、我が国が誇る名作でありながら、現在入手困難となっている昭和の名作の数々を、B6判のペーパーバック書籍と電子書籍を同時に、同価格で発売・発信する、まったく新しいブックレーベルです。(HPより)

おそらく文庫本より軽いです。通勤や外出時にカバンに入れても重くならないし寝転がって読むにも腕が疲れなくて良いです!ラインナップ見てもとても魅力的なタイトルが並んでいます。値段が安いのも◎。こういうコンセプトの本はもっと普及して欲しいです。


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