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「椅子とめぐる20世紀のデザイン展」@大阪高島屋に行ってきた【週末美術】

先週の土曜日は久しぶりに展覧会に訪れました。
忘れないうちに防備録として書きます。言語化の訓練としても。

先週の土曜日・午前中の銃砲検査を終え、家に鉄砲を片付けたあとに出発。
私はサラリーマンハンターなので年に一度の銃砲検査が恒例です。
銃砲一斉検査の記事はこちらです。よろしければご笑覧ください。

この日は、夕方から大阪を拠点に活動する身体障碍者によるパフォーマンス集団・態変のサポートに行くついでに、大阪高島屋で行われた展覧会「椅子とめぐる20世紀のデザイン展」に足を運びました。


態変についての記事はこちらです。
何だかすごいものをみた、興奮冷めやらない中、勢いで書き留めているので読みにくいかも知れません、、


「椅子とめぐる20世紀のデザイン」


2024年3月27日(水)→4月14日(日) 
大阪高島屋 7階グランドホール
※現在は終了しています。

JR名古屋タカシマヤで巡回されているようです。※2024年5月5日(日・祝)まで
実際に座れるコーナーもあり、おすすめです。

織田憲嗣さんが監修されコレクションが展示されていた。
20世紀、100年間のデザインを100脚の椅子と巡る、とても贅沢な展覧会。
織田憲嗣さんは、椅子関連本には必ずと言っていいほど名前がある、椅子研究家の第一人者だそうだ。

本展のカタログ。
愛用している椅子《シューメーカー》と

私は椅子やデザインには明るくないのだが、2022年に東京都美術館でみた「フィン・ユールとデンマークの椅子」展、東京都現代美術館でみた「ジャン・プルーヴェ」展で興味を持った。

展覧会図録の序章に「椅子とは」というタイトルで織田さんが寄稿しているのですが、この1ページだけで興味深く、これまで気にとめることもなかった椅子の世界がひろがっていた。

「椅子とは」

椅子という単語を辞書で紐解くと〈後によりかかりのある腰掛け。官職などの地位、〉とある。つまり、物理的な意味としては、身体を受け止め支える支持具としての道具、と言うことができるだろう。
〔中略〕
一方、精神的な意味としては権力を表すもので、組織の長をチェアマンと呼ぶのはその代表的な例である。この2つの意味は人類の祖先が2足歩行に移行した時点で生まれていたと言えよう。一族の強いリーダーは腰を掛け易い石や倒木に掛け、他の者達を頭ひとつ高い位置から脱していたと考えられる。腰を掛け易い物や場所には誰もが掛けられた訳ではなかったのだ。そうした場所は権力の象徴の場所であった。

『椅子とめぐる20世紀のデザイン』p.5より抜粋

むむむ、確かに。
2つ目の意味の、精神的な意味としての権力を表す意味でも使うというのは、意識したことが無かった。

トップの座を狙う、など、この"座"も座ることも椅子と関連しているし。

以前、仕事で関わった海外の動産関連の書類にも"chair man"という署名欄があり、ここにもオーナーのサインを書いていた。

普段、何気なく腰掛けている椅子というのは、デザイン性だけでなく哲学的に見ても面白い。美術作品を飾るための台座にもつながりそうだ。

織田さんのいくつかの本には、” 椅子は最も人間的な道具である ”という言葉を帯に書かれている。このあたりの思想も深く知りたいところだ。

○以下、「椅子とは」続き

椅子の最も古い例としては紀元前7000年紀のトルコ、チャタルホユク遺跡の地母神像の土偶がある。それは肘掛け付きの腰掛けで背もたれは無いようだ。〔中略〕

『椅子とめぐる20世紀のデザイン』p.5より抜粋
椅子の最も古い例
≪チャタル・ヒュユクの女神像≫ 7000 BC
 TURKISH AIR&TRAVEL より引用

左右の肘は、よく見ると二頭のヒョウに支えられています。背もたれは無いようです。

チャタル・ヒュユクから発掘されたこの地母神象は、トルコの首都アンカラにあるアナトリア文明博物館に展示されているのだとか。


○以下、「椅子とは」さらに続き

〔中略〕
産業革命はそれまでの家内工業的なものづくりから大量生産、工業生産への大きな転換点となった。そして20世紀に入り、家具デザインの分野が確立されると、それまで建築家が建築物の一構成要素として家具を設計・デザインしていたのが、家具デザイナーとい う新しい職業も生まれた(イギリスのトーマス・チッ ペンデールなど様式家具を生み出したり、ドイツのミ ヒャエル・トーネットのような曲木家具を生み出した者もいたが、それらはごく限られた例である)。家具デザイナーの出現は科学技術の発展と共に新たな椅子のデザインを生み出し、さながら20世紀は椅子デザインの百花撩乱の世紀とも言える時代であった。

『椅子とめぐる20世紀のデザイン』p.5より抜粋

この時代の建築家は、建物だけでなく家具までデザインされていたのね、、 
足元の靴でヒーヒー言っている私とは世界が違う。

というか、「椅子とは」何か、というところで深過ぎて、全然展覧会の出品作品にたどり着けない 笑

夕方の予定のため、時間が限られていたこともあり、気になった作品をピックアップして記録します。

《ファグス製靴工場のアームチェア》

《ファグス製靴工場のアームチェア》1922
ヴァルター・グロピウス

グロピウスは1919年、ヴァイマルでのバウハウス開校時から1928年 (デッサウ)に退職するまで学長を務めた人物である。開校当初、バウハウスは国立であったが、 最後の1年間は私立として運営された後、ナチスによって解散させられてしまい、1937年ハーヴァード大学大学院の建築科の教授となった。この作品は26~27歳頃の作品でファグス製靴工場のためにデザインされたものだ。現在はドイツのテクタ社で商品化されている。

キャプションより


私は靴業界で働いているので、"製靴工場のアームチェア"というところでこの椅子に興味を持ちました。(単純)
ちょっと調べてみることに。

このサイトにファグス製靴工場について書かれていて、とても読みやすかったです。

建築家ヴァルター・グロピウスは、ル・コルビュジエやフランク・ロイド・ライト、3代目のバウハウス校長を務めたミース・ファン・デル・ローエと並んで近代建築の巨匠と言われているそうだ。

ファグス製靴工場について読んだことを少し書くと、
・椅子と同じく建築家のヴァルター・グロピウスの作品
・世界初のガラス張りの工場
・世界遺産に指定されている


何てこった。
学生時代にドイツに留学していたのに、、しかも私がいたハノーファーから電車でも約1時間半で行ける距離。
無知とは怖い、、

私の通っていた学校の徒歩圏内にあるIKEAから
ファグス工場までのルート。悔しい、、

アルフェルトのファグス工場は、ドイツ中部のニーダーザクセン州の都市アルフェルトにある製靴用の靴型工場からなる世界遺産です。〔中略〕
ファグス工場が建設された1900年代の工場はレンガや石造りが主流で、窓が小さく薄暗い工場内の労働環境は悪く、工員の怪我が絶えませんでした。ファグス工場オーナーのカール・ベンシャイトはこれらの劣悪な労働環境と断絶することを目指し、鉄骨と巨大なガラスパネルで建てられた世界初のガラス張りの工場を建設し、光にあふれた働きやすいファグス工場は「労働者の宮殿」と称賛されました。

世界遺産オンラインガイドより

建築のデザインや技術の進化が、労働者にとって働きやすくなる、素晴らしいソーシャルデザインだ、現在も稼働しているとは、、ぜひ行ってみたい。
靴関連行きたい場所リストに入れておこう。笑

そういえば昨年末に、豊田市美術館でフランク・ロイド・ライトの展覧会やってたなぁ、関西には巡回無しだよなぁ、と見逃したことを少し悔しい気持ちで思い出しました。

「ミッド・センチュリー」1937-1968年


ミッド・センチュリー期(20世紀中葉)といえば、イームズ夫妻をイメージされる方も多いのではないでしょうか。

《ロッキング・チェア RAP》1950
チャールズ・イームズ/ レイ・イームズ

ハーマンミラーのシェルチェアが有名ですよね。


2人のイームズとハーマンミラー。
そのはじまりの椅子となったのがカタログの表紙にもなっているプライウッドチェアだそうです。

《チェア LCW》1945
チャールズ・イームズ/レイ・イームズ
撮影し忘れました、、

イームズは第二次世界大戦中、米国海軍の飛行機の操縦 席の木製シート開発に関わっていた。その頃、成型合板 による三次元曲面化へのノウハウが確立され、後のイー ムズの家具デザインへの道を拓くことになった。この LCW(ラウンジ・チェア・ウッド・ベース=木製脚の居 関椅子)は戦後初の成型合板による三次元曲面シートの 椅子である。このシリーズには、食堂椅子(ダイニング・チェア)のDCW や金属脚(メタル・ベース)のLCM、 DCMなどがある。

キャプションより

イームズとハーマンミラーの初のプロダクトとなったプライウッドチェア。
※プライウッド=合板

これよりも前にイームズはプライウッドを使ったプロダクトを手がけていました。それはなんと負傷した人間の足を固定するための「添え木」だったとのこと。

原点となった脚部固定用添え木

当時は第二次世界大戦真っ只中の時代、戦争の歴史は悲しいけれど、人を助けるために生み出された技術が、後に美しい造形の椅子となることも尊い。

添え木の近影、影が美しい。

プライウッドチェアは誕生後、世界中のデザイナーにも大きな影響を与え、日本でも柳宗理がこの椅子をルーツにバタフライスツールをデザインしたと言われているのだとか。

《バタフライ・スツール》1956
柳宗理
こちらも撮り忘れるとは、、

どこからみても美しい。
床との接点の影の柔らかさも見ていて飽きないなぁ。


イームズについてももっと知りたい。
ドキュメンタリー映画、また観たい。みる。


このあたりで時間が怪しくなり、、
100年を100脚の椅子で巡るという壮大な展覧会だったので、時間配分がうまくできなかったことを反省し、、汗

駆け足気味でまわり、後でしっかり味わおうとカタログを購入し、東淀川に向かったのでした。
後半をもっとしっかりみて椅子に座りたかった、、


記録: 造形が美しいとその床に落ちる影も美しい。

と思って、撮影した椅子。+1

《ウィーン郵便貯金局のアームチェア》1905-1906
オットー・ヴァグナー

そうそう、この郵便貯金局のアームチェアは、椅子の持つ精神的な意味「地位を表す」を具現化した世界初の例だと言われているそうです。この椅子はどんな役職だったのだろうか、、

《バレル・チェア》1937
フランク・ロイド・ライト
《バンブー・チェア》1937
城所右文次
アームチェア《シエスタ・メディツィナル》1936
ハンス・ルックハート/ ヴァシリー・ルックハート
《アームチェアFJ55》1955
フィン・ユール
ダイニング・チェア《ガゼル》1958
ダン・ジョンソン
《センターピース》c.1990
エンツォ・マーリ
ロッキング・チェア《スガルスル》1962
ガエ・アウレンティ
《ロッキング・スツール》1999
ハンス・サングレン・ヤコブセン

おわりに


建築家が建物だけでは無く、照明や家具にまで総合的にデザインされていて、なんと大きな視点で物事を捉えられるのだと改めて驚きつつ、
そういえば2月に訪れた、岡山県にある奈義町現代美術館はまさに磯崎新さんの建築と家具まで作り込まれた空間だったことを思い出した。
また言語化訓練と防備録に書いてみよう。そうしよう。

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