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地方の交通を守るにはどうしたらよいかの雑記

 私は田舎に生まれ、長年地域交通を利用した後、首都圏へ出てきた。その後、色々な地域を見て回っているが、地方で特に問題視されている事の一つに、地方の交通が都会と比べて大変不便である点が挙げられる。

首都圏や大都市圏に住めば、朝方なら2分に1本、平時も4-7分に1本電車がやってくる。しかし、田舎はそうはいかない、2-3時間に1本しか汽車(電車ではない)が来ない事は当たり前である。場所によっては、1日1本しかない地域もあり、最悪日帰りできないか、行きと帰りは別の交通機関を使う必要がある。

一方、国鉄が分割民営化した際、JR北海道・JR東日本・JR東海・JR西日本・JR四国・JR九州の6社に分割された。分割から30年後、JR東日本・JR東海・JR西日本・JR九州(上場までは大変であったが、色々な多角化経営を経て)は株式上場まで至る大企業となったが、JR北海道・JR四国は、苦しい状況にある。

他方、高速道路の日本道路公団は、NEXCO東日本・NEXCO中日本・NEXCO西日本の3社で分割された。JRもNEXCOも、会社ロゴが北海道・東日本地域のロゴは緑、東海・中日本は橙、西日本は青(JR九州は赤で異なるが)と、同じ色使いをしている。

また、JR北海道とJR東日本が緑、JR西日本とJR四国が青(両社とも厳密には少し色が違う)は会社ロゴの色が近似しており、元々は1社として考えていたような思いも伺える。

このような状況下で、再度、不採算地域の鉄路を国有化し、国鉄の復活をするにしても、株式上場したJR各社は株主の意向を得ずにJR北海道、JR四国の経営に関わるのも何かと思う。

ここまでくると、交通の重要性は、鉄道、バス、タクシー、航空も含め、広く交通を中心とした法人を作りだし、単に一方で得た利益で負債を補うだけでなく、JR上場各社や、東急をはじめとする大手私鉄のような、鉄路に対して地域開発を行ってきた実績や経験のある法人が関わらなければ、やれ絶対鉄道を守らなければならないだの、バスの運転手が少なくて路線廃止されただの、やれ民間移譲したほうがいいだの、やれ上下分離がいいだと、業界毎の問題点を同じ業界だけで考えては全く解決はできないと考えついた。交通を一体的に考えず、一方的な議論をしていては、破綻する事は間違いない。このままでは車社会といわれても、車すら運転できない交通弱者や、一定の高年齢になれば、車を運転しないほうがよいという文化醸成が、より公共交通の必要性を強めていくものと想定される。

その為には、長距離交通から近距離交通を、航空、鉄道、バス、タクシーの各所が一番活用される交通網へ総合的に組み替えていき、地域経済とも密接に関わる運営方法へ変えていく方法だ。

となれば、全方位型の交通を担う法人に、地域交通を担ってもらう方法もあると思う。例えばこういうものだ。

(1)持株会社
・国鉄にあたる法人。国50%と民間会社50%の出資とし、鉄道(JR上場会社・東急・近鉄などの大手私鉄+バス+タクシー等の運営会社)、航空会社(JAL/ANA)、自動車メーカー、商社、IT事業者からも幅広く出資を募る。
・同社へ出資した法人に対しては、法人税の減免などのメリットを享受。
・鉄道、バス、タクシー、航空を個別の子会社として有するだけでなく、各社の事業経営を横串に行い「次世代の交通」を生み出す。
・地方自治体との窓口役となり、地域と共に生きる会社とする。交通網を維持するに十分な利益を確保しつつ、一部を地域振興に投資する。地域商社や道の駅の運営など、国や自治体との関係性の高い事業へ積極的に携わる。(勿論、コンペなどを経て選定される事を前提とする。)
・ITを活用する。高齢者の方でも使いやすくするよう、タッチパネル型のタブレットや音声認識などを利用し、操作性を高めたサービスを開発する。
・電子マネーを活用する。決済にはSuicaのように全国共通ICのカードを用いる。いわゆるチャージもできるが、5-10万円以内のかけ払い(クレジット)や、銀行と連携した即時引き落としのプリペイドサービスも提供する。
・各種交通網との乗り継ぎサービス、マイレージサービスを一体化し、一枚のカードで全てが賄える会員サービスを提供する。多く交通サービスを利用してもらえば特典が得られやすくなる。(航空マイレージの相当額を鉄道の運賃で利用できるなど)
・現金決済を禁止せず、使いやすい現金決済を提供する。(ワンマン電車内で、搭乗時に引き取った半券と現金を投入すれば、自動計算し、お釣りが出てくる自動精算機など。JR北海道バスで採用されている。)
・すべての交通網と施設にクレジットカード決済を導入する。日本人は勿論、訪日外国人であっても、クレジットカードで支払える安心感を持たせる。
・出資者の交通事業者が所有する旧型車両を譲ってもらい、設備の入れ替えを促進する。
・地元法人とも連携する。交通系ICやクレジットの決済機能を交通網全体で利用できるようにした後、その地域にある店舗へもこれらと同じインフラを提供し、キャッシュレス社会を推進したり、商工会の発行する独自スタンプや割引クーポンの代行役としても機能できるようにする。
・幅広い人材を受け入れ先進的な組織にする。出資者からの人材受け入れは勿論の事、地元人材の受け入れ、就職氷河期世代の受け入れ先として機能する。鉄道事業者・航空事業者の安全性、IT事業者の先進性など、各業界の長所を生かした組織づくりをする。
・急な運行中止などが発生しない経営基盤を維持する。例えば、急にバス事業者が特定便を廃止したことにより、通院や夜勤ができなくなったとの事例を防ぐ。(運行中の便を廃止するには、3ヶ月〜半年前から周知するなどして、事前告知を確実に行う。)

(2)統合される会社
既存の鉄道・バス・タクシー・航空を合併し、一手に担う法人を設立する。
・JR北海道/JR四国/国鉄から移管された第3セクター各社
・JAL/ANA以外の地方向け交通を担う航空会社(HAC/JAC/RAC/AMX/FDA/AIRDO/Starflyer/SolassedAirなど。可能であればSKYMARKも)+航空のコミューター路線運行会社
・主要バス会社
・地方にあるタクシー会社

(3)鉄道部門
・鉄道事業は貨物輸送も担うライフラインの為、安全性高い鉄路の維持と、大手私鉄のような観光資源を生かした路線の運行を目指す。
・高速バスとの親和性を取り、主要地域までの大量輸送、地域間輸送の住み分けを行う。(例:30-100万人規模の都市圏間は鉄道を維持し、その先の1-10万人規模の都市圏は30分-1時間の間隔で運行する高速バスへ移管する等)
・現在敷設されている鉄道のうち、新幹線の並行在来線や、現状でも500名/日以下の利用数である地域については、BRTへ移管し、専用交通路線と一般道路を併用した使いやすいダイヤを組む交通へ移管。(やみくもにBRTへ移管せず、早朝の混雑、輸送量などの過渡な時間と、平時との運用差を見て検討する。また、三陸鉄道リアス線のように、JRから移管して一体化する事のメリット・デメリットや、地域経済として鉄道が南北の移動を維持している地域性なども考慮する必要がある。)
・航空部門との連携により、大都市への移動に適したダイヤで運行する。(JR北海道の快速エアポート増発などの事例。)
・市内交通などにはLRTを利用し、富山市の活用例(JR西日本からのLRT移管と南北による鉄道運営事業者の統一)も参考にする。
・必要に応じて鉄道路線の改良も行う。JR西日本の可部線の事例(一度廃止した区間を電化して復活)や、JR北海道の学園都市線の事例(都市交通として鉄路を電化し改良。気動車から電車を乗り入れる事で、函館線・千歳線との一体運用を実現)に類似する案も検討する。
・鉄道施設を改善する。例えば、古い跨線橋を廃止し、構内踏切に切り替えたり、上下線毎に改札を設けるなどして、高齢者にやさしい施設とする。以外かもしれないが、跨線橋を構内踏切に変えるだけでJRのUXは相当UPする。
・JR各社との連絡運輸を維持する。通算運輸や特急料金の通算割引など、JR相当の運賃利便性を確保する。ただしこれは安さばかりを求めるものではない(後述)。
・地域輸送を担うに適切な運賃設定を行う。単に高額な運賃を設定するのではなく、輸送サービスに個別の運賃を定める。ただし、首都圏にあるような運賃設定では厳しい事実を理解頂ける運賃を求めるべく、利用数や利用率の適時開示し、輸送サービスの維持が理解される運賃設定を適宜実施する。(例えば、一部を特急として速達サービスに変え、特急券として得るなどの改変も望ましい。)
・定期券収入を増やす。1-6ヶ月は勿論の事、東急が提供する12ヶ月の長期定期券も販売する。Suicaにすれば、紛失リスクも低減できる。
・交通サービス共通のポイントを提供する。航空マイレージ、バスのバス特などのサービスを統合し、シンプルなポイントサービス、もしくは自動キャッシュバックする機能を提供する。(航空サービスにはマイレージとは別に、上位顧客を算出する基準を設けると他社と同等のサービスが提供できる。)
・JR貨物の運行維持に務める。また、鉄路からトラックへ積み替えする貨物駅の設定も必要に応じて行う。一部地域には混載なども実施し、運送事業者の配送料低減や無駄のない効率運営ができるようにする。

(4)バス部門
・鉄道から先、地域間の高速輸送を担う高速バスの運営を行い、利用者に応じた多頻度運行(最大20-30名程度を30分-1時間の間隔で運行する事が理想)を行う。
・各地域において、鉄道網のない地域で、経済圏となる地域と住宅地間の輸送、もしくは鉄道駅までをつなぐ路線バスを多頻度運行(最大20-30名程度を30分-1時間ごと、早朝は10-20分の間隔で運行する事が理想)する。
・鉄道から変わるBRTの長距離輸送を担う。
・航空部門との連携により、観光地へのダイレクト輸送を担う。
・自動運転化を行い、運転手に依存しない体制を作る。(地方であれば交通量が少ない道路も存在する為、自動運転に適しているかもしれない。)
・鉄道をBRT化し、専用路線で運営する場合、自動運転を積極的に取り入れる。

(5)タクシー部門
・バス路線では規模の大きい5名程度のジャンボタクシー等を運行し、地域の多頻度運行(最大5名程度を30分-1時間ごとが理想)する。
・自動運転化を行い、運転手に依存しない体制を作る。
・自宅/地域と医療機関/繁華街との直通路線を作る。医療期間への通院しやすさや、夜間に繁華街で楽しんでも酒気帯び運転や代行運転を気にせず呑める文化をつくる。

(6)航空部門
・東京/大阪をはじめとする大都市圏と地域経済を結ぶ国内線を運行する。
・アジア各国からの顧客に対する国際線を運行する。(運行時間が片道3-4時間程度のアジア圏をターゲットにする。長距離路線はJAL/ANA、もしくは後述する航空連合の提携先が担う。)
・コミューター路線を維持した方のいい地域に対して、鉄道・バス・タクシーと連携した広域輸送を担う。
・設立時から航空連合の1つである、スカイチームに属する。スカイチームに属する外資系航空との共同運行(コードシェア)便を運行する事で、海外旅行者の利用者数を増やす。(日本は3大航空連合すべてが揃う国となる)
・JAL/ANAが出資・提携していた航空会社が経営統合した場合、JAL/ANA便とのコードシェアを維持する。実質的にJAL/ANAのマイレージ会員や上級会員(JGC/SFCを有する顧客)も、変わらず利用できる利便性を増やす事になり、第三国でも敵対的な立ち位置ではなく、支援的立ち位置の航空会社を表明する。(現在検討がなされている地域コミューター会社を維持する施策の立ち位置をこの施策に持たせる。)
・FSCとLCCの中間的立ち位置であるMCCを目指す。細やかすぎるサービスは不要だが、利用頻度の低い利用者にも優しいサービスを目指す。LCCにある個別オプション毎の価格設定や手荷物容量の課金などがわかりづらい印象がある為、それらをのサービスは一定金額内に包含しつつ、FSCに近いものがよく、AIRDOをはじめとするMCCがちょうど担っている分野となる。初めて利用する方にも丁寧で、価格がこなれていれば、無理にLCCを選択せず、MCCが利用されると想定される。これにより、日本特有のMCCを他航空会社との特徴点としたい。(勿論、JAL/ANAの提供するファーストクラス、プレミアムクラス、クラスJなどの上級席相当にあたるサービスの提供を否定するものではない。また、MCCで航空サービスに慣れた方が、FSCやLCCを使う事により、より発展が見込める為、滅多に航空旅客サービスを利用しない利用者に対する入口になってほしい。)

(7)事業部門
・地域と連携した交通網を作り出し、観光資源を活かる施策を進める。
・駅ビルや駅ナカ店舗の運営、ホテル運営、観光施設の運営、パックツアーなど、交通部門の地域性が活かせる事業を展開する。
・鉄道駅を建物内を改良(リノベーション)し、地域施設(後述)の機能をもたせる。
・鉄道系スーパーマーケットに近似する方法で、北海道であれば、セコマなどの地域コンビニと連携し、地域毎に買い物がしやすい店舗を設けるなど、生活に密着したサービスを提供する。コンビニ+αの地域施設(買物・銀行もしくはATM・簡易郵便局・区域の会館・交通機関の停留所)を自治体・流通事業者と組んで設ける。その施設へ行けば、人が集まっている安心感を生み出す。

…と、ここまでやって、交通が維持され、経済が維持されると思う。ここまでくると政治が関わってほしいのですが、民間企業でここまでやれたら最高ですね。

具体的な名前を書いたのは、この規模の会社が集まって作り出す集団でなければ、地域交通は変えられないと思っています。複数の会社が同じ方向を向いて活動する事も必要ですが、交通を維持する意味では、地域の末端から世界の人々まで、大きくつながる輪の中から、地域交通を区別することなく、交通の輪の中に含めて考える必要があるものと思っています。

※なお、ここに記載したものは私見であり、私自身は記載されている法人との関わりはありません。

(追記)
JR、私鉄、各社バス会社をはじめ、鉄路・バス路線を守っている皆さまは、収益性だけで路線の改廃がしづらいのは事実だと思います。鉄路の見直しが想定される地域において、高額な維持費がかかる鉄路に日々数名しか搭乗しないにも関わらず、鉄路が失われたら地域が衰退するから、なんとしても残すというのは、あまりにも意味がありません。過剰なサービスである以上、第三セクターにして残しても、負債は地域が追う訳で、長期的に見て生活サービスが低減する可能性の方が高いと考えられます。

勿論、鉄道が敷設されるのは特別な事ですし、滅多にあるものではありません。その貴重性ばかりを論議するのではなく、時代にあったインフラ、地域にあったインフラに変えるべきです。

消滅地域へのカウントダウンを早めるより、もっと良き答えがあると思うのです。

鉄路の見直しがあった大きな事例としては、3.11による三陸鉄道とJR山田線の移管の件があります。三陸鉄道が地域の広域輸送を担う為に、地域に根付いたサービスが提供できる一方、JR東日本の赤字切り捨てだったのか、地域経済の為だったのか、色々な見方はあると思います。JR東日本は旧山田線を復旧させるるだけでなく、常磐線も復旧させており、一方的に鉄路を捨てる選択はしていません。BRTもその地域の輸送事情にあっている事、早期復旧ができる事、多面的に考えて敷設されたものと思います。

地域にあった交通を、多面的にとらえて、考えていきたいものです。

何かお役に立てたようでしたら幸いです。