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【旅の記憶】とにもかくにもボンジョルノ(もしくは10単語ほどで行くイタリア)

フィレンツェに来てから、まだアルノ川を眺めていないじゃないか、と気づいて
細い通りをぶらぶら西へ歩いていると、雑貨店を見つけた。
ボンジョルノ!と元気よく店内へ入ってみる。
店員の女性は私と同じぐらい元気よく挨拶してくれたあと、頃合いを見計らって
「えーっとイタリア語でいいかしら?英語の方がいい?」と尋ねてくれた。
これはとても親切で嬉しい尋ねられ方である。
相手を慮ってくれているのがよくわかるし、こちらも気兼ねなく
「英語でお願いします!」と言えるのだから(2択なら、という話です・・・)。
きっと母国語でない会話に慣れた人なのだな、と思った。

彼女はとても日本が好きらしく、
「一度日本に行ってみたいの。トラディショナルな京都とかにね。
大阪には母の友人がいるし。日本の伝統文化に触れたいのよ」ととても楽し気に話してくれる。
だから私もかつかつの英語で「フィレンツェは美しくて来られて本当によかった」というようなことを喋った。
他にどこへ行くの?と問われてヴェネツィアにと答えると、「すっごくロマンチックよ」とものすごくお勧めされたりもした。

町の名所を描いた立体的なマグネットが可愛らしく、数色ある内の青色ばかり探していると、
「ブルーが好きなの?ちょっと待ってね」とショーウインドウの方で何やらごそごそし始めた。
「私もブルーが好きだから、こっちに飾っちゃってるのよ」と。
気にしないで、と言いながら、お店でのこういうちょっとしたコミュニケーションが嬉しい私は、うきうきと楽しい気持ちになる。
ドゥオーモ(フィレンツェのシンボルの大聖堂)の描かれた、もちろんブルーのマグネットを買ってまた歩き出す。

ついでなので少しだけここで語学について・・・
旅行に行く前には少しでも現地の言葉を覚えてコミュニケーションに役立てたいと思っている
(って英語圏以外はフランスに続いてここが2ヵ所目でまったく自慢できる話じゃない・・・)。
もちろん今回もイタリア語の会話集は持参して常にバッグに入れ、
何かあればすぐに出せるようにはしていたのだけど、
(持っていったのは、旺文社の「ことりっぷ会話帖イタリア語」。薄くて軽くて可愛い)
やっぱり挨拶だけでもできると、ちょっと楽しい気持ちになる。
今回覚えた主なもの。

○ボンジョルノ・ボナセーラ(こんにちは・こんばんは)
○アリヴェデルチ(さようなら)
○スィ・ノ(はい・いいえ)
○グラツィエ [ミッレ]([どうも]ありがとう)
○スクーズィ(すみません←エクスキューズミーにもアイムソーリーにも、どちらの「すみません」にも使える優れ物)
○プレーゴ(どういたしまして)
○ペルファボーレ(~ください←前に欲しい物を入れるだけ)
○ソノ ジャッポネーゼ(私は日本人です)
○バースタ(それだけで結構です←あれとこれと、と注文したとき、最後に使う用)
○バンニョ(トイレ←死活問題)
○カルチョーフォ(アーティチョーク←日本語で朝鮮アザミ、好物。
日本でなかなか出会えないので、ヨーロッパ行くなら食べたい)
○ブオンナターレ(メリークリスマス←季節柄)

こんなけかいっ、と突っ込みたくなるのだけどこれだけで、文法となるとまるで手が回らなかった。
後は必要になる直前に会話集を見て、「日本までの切手3枚ください」とか「アイス、コーンで小さいの一つください」とかやっていた。
それに特に料理関係では、イタリア語が日本に浸透しているので、ドルチェやジェラートなどは意味がわかり(食いしん坊)、
全く未知の言語ではない安心感が少しはあった。

実際に来てみて実感したのは、まずこちらの人は(少なくともフィレンツェ、ヴェネツィアですが)
想像よりずっと自然に英語で会話してくれるということだ。
また、もう一つ強く思ったのが、イタリア語は発音がわかりやすい!ということ。
聞き取りやすかったと帰国後知り合いに言うと、イタリア語わかるなんてすごい、と誤解されたのだけど、
そういう意味ではなく、音としてはっきりしていて(カタカナに置き換えられるというか)、
フランス語のように(比較対象がこれしかないんです)何度も聞き返すようなことにあまりならなかったのだ。
私の拙いイタリア語も、ともかく会話集に書いてあるカタカナどおりに発音すれば、一発で通じた。
そう、カタカナ言葉でOKなのである。
途中からはこのきっぱりした音が段々気に入ってきて、
最初はボンジョルノ、と普通に言っていたところを現地の人の真似をして、「ボンジョールノ!(「ジョ」で強く上がる)」、
「ボナセーラ!(「セ」をかなり強調)」と言いながら店に入り、
出る時は「グラーツィエ!(「ラー」を強く長く)」と手を振ったりなんかして
にわか現地暮らしを自ら盛り上げていた。
これはいずれちゃんと勉強するならイタリア語だな、とイタリア語ファンになって帰国した次第である。

あれから10年、語彙はまったく増えていない、どころか今回書いていてほぼ忘れていたことに気づいた。嗚呼。

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