スライド6

PJ08-プロジェクトがコミュニティに変わる「3層2軸の掛け算」

 プロジェクトやチームを立ち上げ、規模やネットワークを拡げていくことについて、今までのnoteでは書いてきたわけだが、木で言えば「”高さ(行動・企画)”や”枝葉(規模・ネットワーク)”をどう成長させていくか」と言うお話しだったわけで、改めて今回は”根”とも言える「チームのみならず予備軍や賛同者までどう巻き込んで(チーム)ビルディングしていくか」という部分を書いていきたい。「予備軍・賛同者まで」という範囲まで含めて(チーム)ビルディングを考えることはもはや「プロジェクト」というよりも「コミュニティ」や「新たな居場所」の形成を考えることと同意義である。そのため中心人物は「参加率は様々なレベルに分かれた中で成長するためにはどうしたらいいか」といったことまで考えを拡げることが求められる。

画像1

 上図の赤囲みの通り、プロジェクトの「拡がる期」から「チームビルド期」に移行していく段階では「関われる人全員が居られる場を作る」「新しいメンバーがプロジェクトを利用して新しいチャレンジをしてもらう」といったことが目標になる。しかし一方で、この段階ではいわゆる立ち上げ期メンバー(コアメンバー)と後から合流してきた人たちとの温度差や意識差にイライラしてしまったり、どこかテンションが合わない、となる”落とし穴”がある。

 この目標を目指しつつ、意識差の落とし穴にはまらないようにするには、プロジェクトの性質の変化も理解しておかなければいけない。(数名の)個人が立ち上げた初期衝動の産物がプロジェクトの様相を帯び、それが徐々にコミュニティへと変わっていく経緯や変化していくことを俯瞰的に理解するためにも、今一度大きくおさらいをし、プロジェクトがどのような構造で成長し、変化しているのか。そのためには、どのような役割が求められるのかといったことを述べたい。

なにはともあれとにかくやる(立ち上げ期)

画像2

 プロジェクトの「立ち上げ期」は数名の「やろう!」「それいいな!」という初期衝動から始まる。むしろ、続くか続かないかは、まずこの初期騒動から始まっているかどうかで大きく分かれる。また、プロジェクトを数々立ち上げていて思うのだが、「場を持っている人・持っていない人」という組み合わせがある方がいい流れを生むことが多い。

画像3

 ここで最も求められる役割は「プレイヤー」である。たった一人でも「やる!」という意思のもと、とにかく実行していくことで徐々に仲間を増やしていくことが重要だ。ここで集める仲間の数は”乗用車に乗れる人数(5〜8名)”が適正だと思うし、それぐらいまでは「ひたすら行動あるのみ」ということで動いて大丈夫だ。(乗用車に乗れる人数は、マニュアルや説明なしで、互いに暗黙知や”あうん”の関係で動け、なおかつ言わずともビジョンを共有できるギリギリの人数である)

これは以前のnote【コトの立ち上げ方、進め方】でも書いたことだが、「やろう!」「それいいな!」という初期衝動が今後の「続くか否か」「拡がるか否か」「コミュニティになるか否か」の最初の出発点であるが、その初期衝動を活かすためにも、プロジェクトの振る舞いとして下記の3つのコツを心がけておきたい。

画像4


①無理しない、させない(自分もしないし、相手にもさせない。これが続く秘訣)
②すでにあるものを活用する(加えて「ないの”ある”を活かす」「すでにあるものをズラす」
③ストーリー展開を考える(いくつか展開を妄想しておくことで、打ち手に未来の仕込みを入れる)

 とは言え、「無理しない、させない」と言っているが、「お手軽にできる」という意味ではもちろんない。そこに至るまでの実験、軌道の乗せ方、周囲のハレーションへの調整など、手間はもちろんかかるだろう。そして小さく試していることがほとんどのため、自分たちも「これであっているか」という不安もあるし、周囲の理解も「意味あるん?」みたいな冷ややかな目線がある。その中で、ある程度の賛同者が集まってくるまでは、やはり相当の意識と信念が求められる。(こういうところに、コアメンバーの意識と後から合流する人では差が生まれてしまう。なのでいつかはコアメンバーはプロジェクトの愛着をずっと維持しつつも、どこかの段階で手放す勇気を持つことが求められる)

これは余談だが、「②すでにあるものを活用する」についてはそもそもの視点の置き方が重要である。「すでにあるもの」(特産品、歴史、偉人、有名人)ばかりでなく、ネガティブに捉えている特徴(夜は真っ暗。ベッドタウンで観光場所がない、など)を良いところに変換させること(真っ暗なら闇が楽しめる、月夜。ベッドタウンであるならマーケットはすでに潤沢、など)や、良いところをズラす(お米が特産品であるなら単に流通やブランディングを目指すばかりでなく、田舎体験をのんびり過ごせる観光開発・移住支援や自然から学ぶ環境学習から親子世代に来てもらうなど、領域をずらしていく)といったところまで含まれる。こういった視点の置き方ができるようになってくると、集まる人たちも多様になり、柔軟な考え方がプロジェクトに定着するので、今後のことを考えると意識している方が良い。

道ができれば、掛け算へ(拡がる期)

画像5

 コアメンバーで立ち上げて活動していくと、自然とそれに賛同する人たちが集ってくる。その時、理解しておきたいのが、どうしても「3層に分かれる」ということだ。「コアメンバーのように気持ちはしっかりあるが、時間や関係性の中にそこまで入りきれない層(※気持ちはコア層)」と「賛同はしている(だけの)層(※賛同者)」だ。

 この3層を理解した上でコアメンバーがプロジェクトをどう手放していくか。つまりコアメンバーは支援者として”気持ちはコア層”の背中を押すような関わり方を目指す(“「やりたいをやる」が一番楽しい、という喜びを他者に差し出す”という意味で手放す、という表現をしている)。このように手放せるか否かが、「続くか否か」「拡がるか否か」「コミュニティになるか否か」の分岐点でもある。

 さらに言えばコアメンバーは「場を持っている」と「場を持っていない」で支援の仕方が変わることを理解していると良い。そのため、コアメンバーがそれぞれで動くことも想定されるため、今までは「とにかく動くことが正解」としていた機運を少しずつ「どう展開していく?それは誰が手がける?」といった戦略や未来図を描く「プランナー」が大切になってくる。

画像6

 プランナー役は、今までのコアメンバーの行動力や性格も踏まえた上で、いかに「気持ちはコア層」や「賛同者」に開かれた場をどう作るか、どう展開させるか、ということに頭を巡らせるが、ここでようやく「3層2軸の掛け算」というべき選択肢をとると良い。

 つまり「場を持っているコアメンバー」は「場を持っていない”気持ちはコア層”」の(あんなのやってみたいなあ)を実現させてあげるために場を開き、情報発信まで含めて一緒にやる、というスタンスだ。

画像7

 これは以前のnote【プロジェクトが拡がるコツとチームづくりの一歩】で言った「迎え入れるコンテンツ」のことを指している。一定、失敗しないようなところまで育っているプロジェクトを、新しい一歩を踏み出したい人のために開くことは、リスク少なく成功まで導ける貴重な機会である。

画像8

 ここで精一杯頑張れる人は、間違いなく次のステップに行ってくれる人であり、プロジェクトにとって貴重な人材になる。きっとその中にはコアメンバーになる可能性のある人がいるはずである。

 そして次の「3層2軸の掛け算」は「場を持っていないコアメンバー」が「場を持っている”気持ちはコア層”」に働きかけるやり方だ。

画像9

 「場を持っている”気持ちはコア層”」は店舗などを持っている人が多いため、「その専門性をいかにアレンジするか」「どのようにコンテンツにするか」という視点が重要である。

 これも以前のnote【プロジェクトが拡がるコツとチームづくりの一歩】で書いた「出かけるコンテンツ」のことを指している。「場を持っていないコアメンバー」は、自らの得意技や視点を持って「「場を持っている”気持ちはコア層”」の場をどう面白くするか」と関わることが大事だ。既存の場をいかに魅力的にできるかで、その人のやる気は大きく左右される。

画像10

 このようにコアメンバーが”気持ちはコア層”の背中を押す関わり方を実現できれば、プロジェクトは重層的になってくる。とはいえ、それだけではまだまだ「わかる人だけ、好きな人だけが関わっている」という見え方にしかならない。

 「拡がる期」から「チームビルド期」に移行していく時に肝心なのは「賛同者」への働きかけがうまくデザインできるかどうかにかかっている。

賛同者の“好意”を「参加」と「逃げ道」にする(チームビルド期)

画像11

 賛同者はほとんどの場合、静かなファンであって、控え目な人が多い。自己認識は「応援団」「ボランティア」ということが多い。ここをいかにチームないしはプロジェクトの一員的に位置付け、開いてやれるかが重要になる。しかし、”賛同者”は”賛同者”のままである方がいいことも理解しておかなければいけない(このバランス感覚が一番難しい)。

 つまり、賛同者は見方次第で「メンバーの一員」でもあり「協力していることでつながっている関係」でもあり「なんとなく協力している“良い人”」でもあり「離れたければ離れられる自由な存在」といった多面的な存在であり、そのような関わり方や関係を認めておける場にするようにしておきたい。

 賛同者には能動的な関わり方だけでなく、「逃げ道や言い訳の居場所」もどれくらい用意しておけるかが重要だ。地域やコミュニティのプロジェクトはいわゆる「まちづくり」という言葉に回収されることが多い。「まちづくり」という言葉はある種の”正しさ”が力を持つため、逃げ場がないことがある。そこに自覚的になっていないと「街が好きなら、協力をなんでしないの?」という圧力が自然と出てくる。いや、こちら側が思っていなくても相手はそう感じてしまう。そのため「参加しなくてもいい理屈」「気分が乗ったら賛同者にすぐに戻れる居場所」をどれくらい用意できるかがプロジェクトを担う人間の大切な心構えであり力量だ。

最終的にはコアメンバーは支援者へ(チームビルド期&熟成期)

画像12

 様々な参加のグラデーションを用意できれば、最終的にはコアメンバーはただただ支援者に回る。と言うか、「気持ちはコア層」同士でコラボレーションが生まれてくる状況こそ、理想的な状況だとコアメンバーは思いたい。

 この段階まで来ると、会議自身も開かれた場にしなければならないし、支援していく際のプロセスデザインも重要になってくる。まさに求められる役回りは「ファシリテーター」である。

画像13

 立ち上げ期メンバー以外が、会議からの参加や「やりたいこと」をここで実現していく過程の中で、プロジェクトを自分ごとに捉えていってもらうことが重要になる。それが実現できれば、プロジェクトはすでに立ち上げ期メンバーが「やろう!」といった「自分(たち)がやりたいからやっただけ」というものから「私たちのもの」「みんなのもの」「地域のもの」という公共性を帯びてくる。

段階ごとに役割が違う

画像14

 改めて振り返ってみよう。プロジェクトは「立ち上げ期」「拡がる期」「チームビルド期」「熟成期」とそれぞれの段階に分かれるが、「3層2軸」をどう形成していくか、どう「3層2軸の掛け算」でコラボレートするか、仕掛けを作るかといったことが重要であり、求められる役割も「プレイヤー」「プランナー」「ファシリテーター」と要所要所で変わる。もちろん、それぞれ明快に役割分担できているわけもなく、この3つの役割は重なり合う部分もあるし、人によって得意領域も異なる。

個人的にはその重なる領域こそが移行には大切だと思うので、最後はその重なる役割の部分について説明をして今回のnoteを終わりにしたいと思う。

画像15

プレイングプランナー

 「自ら率先して楽しむ」というプレイヤー志向が強いが、一方で行動している状況やその場で起こっていることをリアルタイムで俯瞰的に捉え、その現象が起こった要因を仕掛けや構造レベルで抽出できるタイプ。こういうタイプの人がいると、物事は「動きながら考える」「会議をシュミレートしながら進める」という荒技ができる。立ち上げ期の混乱を最小限にとどめ、なおかつ最短で仕組み化し、拡がる期をスムーズに進めていく。

プランニングファシリテーター

 プランナーとして仕組みや計画やビジョンを最短で作れ、かつ最後までの見通しがつく技量を持っていながらも、関わるメンバーの理解度に応じて、一つずつステップアップしていく提案ができるタイプ。プランナー特有の頭の回転の速さ以上に、“待てる”才能が求められる。もしくは、ファシリテーターとして関わるメンバーの納得度を紡ぐのだが、その時にプランナー脳が働き、一歩二歩先(だけ)の提案ができるタイプ。話し合いが多くなる拡がる期やチームビルド期に最も必要とされる。むしろプロジェクトがコミュニティ化していった際には永遠に必要。

プレイングファシリテーター

 「自ら率先して楽しむ」というプレイヤー志向を持ちながらも、最初から誰かと関わりながらその人の個性を活かすタイプ。やりながら関わる人たちの新しいチャレンジや意識を顕在化し、常に他者を通しプロジェクトを更新していく。2020年代に活躍するプレイヤーはこのタイプが多いだろう。プレイングプランナーと同様に状況を俯瞰できるのだが、常に関わる人たちの現状に応じた背中を押す関わり方を手がける。このタイプは常に立ち上げ期に中心人物の横にいてくれるとスタートアップの成功打率が飛躍的に上がる。

プロジェクトプロデューサー(コミュニティデザイナー)

 プレイヤー・プランナー・ファシリテーターの3つの役割が重なりあう部分を状況状況に応じて使い分けられるタイプ。プロデューサーの21世紀像であり、コミュニティデザイナーとも称される。ただし、どこかに秀でたものがないため、専門性に特化が求められることは苦手。もしくはどこかに秀でたものを持ちながらも、平均以上は他の役割もこなせるタイプかのどちらか。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

プロジェクトAtoZ

 これらの多様な役割が噛み合うことによって、プロジェクトはコミュニティ化し、私のモノから公に変わる。そして、それは関わる多くの人たちのライフステージに必要な場として機能し、また長く長く続くことによって、一度は離れた人がライフステージの変化に応じて戻ってくることもあり、時の流れを実感できる豊かなサードプレイスとなる。そうなってくると、もはやコアメンバーといったことなど、どうでもよくなってくる。時代や社会の流れに対し、このような場が創造され、どう反応して変化していくか。ゼロから1を創り出す面白さも魅力的だが、長く続けていく面白さもまた別次元の魅力と苦労がある。しかしだからこそ、ここだから登れた頂きから見える風景は誰も見たこともない光景だろう。その光景をたった数名ではなく多くの人たちとともに分かち合える喜びを知っている人は、この世界でもすごく少ないだろうと思う。私自身、ようやく15年目を迎えるプロジェクト(ないしはコミュニティ化しているプロジェクト)に携われているばかりだからだ。自分が15年間多くの人とともに歩んできた中で見えてきたことを振り返り、徒然なるままに述べてきた。しかし、これはプロジェクトAtoZであり、まだ私は自分の役割における言及を言い表せたとは思っていない。プロジェクトに関するnoteはここで一区切りにするが、今後は自分の在り方を決定付けた「ファシリテーター」「ファシリテーション」について述べていきたいと思う。ただし、あくまでも私はプロジェクトやコミュニティデザインにおけるファシリテーターであり、もしくはプレイヤー・プランナーの要素も使い分けながらファシリテートしていくタイプである。その中でどのようなファシリテーションを発揮してきたのか、ないしはファシリテーターに求められるものとは何か、ということに言及して行きたい。そのためにワークショップへの言及も並行に行うであろう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今までのnote記事
<プロジェクトのHOWTO もしくはAtoZ>

・はじめに
「平成」という時代とファシリテーター、ワークショップデザイナーに至るまで

・プロジェクトが始まる前に気をつけたいこと
プロジェクト型チームの危険性と心構え

・さあ!スタート!そんな時に
【コトの立ち上げ方、進め方】

・プロジェクト、少し慣れた頃の次のステップ
【プロジェクトが拡がるコツとチームづくりの一歩】

・プロジェクトを拡げるにはチームづくりから!
【プロジェクト型チームを作るコツと注意点】

・プロセスで衝突しがちな「そもそもさん」「とりあえずさん」
【ナナメの存在とプロセスデザインの話】

・組織内で進めるプロジェクトにおけるナナメ役の立ち回り方
【ナナメの関係の作り方(従属関係のある中、進めていくプロジェクトの場合)】

・そもそも日常にナナメ役の介入を作れる視座を持っているか
【ナナメの関係(日常のバグ編)】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今までのnote記事
<ワークショップの記録と振り返り>

「HOW TO or NOT HOW TO」(アイデア創出系)

「ツレヅレ市場弁当」(価値の変換、疑い系。出かけるコンテンツ)

「ワイルド午後ティー」(価値の変換、疑い系。出かけるコンテンツ)

「いつも何度でも(ワークショップデザイナーver)」(学びなおし系(メタ認知促進型))

「知らない街」(価値の変換、疑い系)






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?