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青春は葛藤だらけ〜本気で芸人を目指した高校時代〜

今年でちょうど高校を卒業して10年。先日、卒業10周年を記念した同窓会で、久しぶりに会った先生から「お笑いの調子はどうだ?」と聞かれ、ふと昔の自分に出会う憂き目にあった。

◇◇◇

思えば、私の高校時代は葛藤ばかりだった。

当時の夢は、お笑い芸人になること。最初は友達を誘って漫才をしていたが、友達が本気でお笑い芸人を目指さないことに苛立ち、インターネットの相方募集掲示板で知り合った他校の女の子とコンビを組む。

そして、〝女子高生漫才師“という色物感全開で、代々木公園で路上ライブや劇場で活動していた。

当時、とても焦っていた。

自分が〝女子高生の中では“ちょっと面白いレベルであることは百も承知。売れる気は全くせず、女子高生というブランドがあるうちに、まずテレビに出たいと思っていた。

その割に一発屋にはなりたくなく、「早くテレビに出たい」でも「一発屋は嫌」という気持ちが葛藤。

熱意だけは誰にも負けておらず、正直お笑いに命をかけていた。

学校が終わればマックのいつもの席に陣取り、マックチキンを片手に夜遅くまでネタを書く。週に何度かは相方と多摩川の土手で漫才の練習。

家に帰ると、録画した爆笑オンエアバトルのアンタッチャブルさんのネタを再生と一時停止を繰り返しながら、ノートに書き写し、ネタの秒数とボケの数を細かく計算……。

問題はそこまで本気だったのに、「お笑い芸人になりたい」という意思を親に伝えられていなかったこと。

小学生から塾に行かせてくれて、私立中高に進学させてくれた親を裏切ってしまうような気がしていたのだ。

妹から見て姉の将来には期待できず、姉妹では自分ばかりが期待されているような気がして、「両親の期待に応えたい気持ち」と「自分の夢を叶えたい気持ち」が葛藤する。

そんなある日、待ちに待ったテレビのお話を頂いた。

喜んだのも束の間。テレビ局の人から当たり前のように「出演には親の許可が必要」と言われ、現実を突きつけられた。

意を決し、母に伝えることにする。

「お母さんちょっと話があって……」

変なドラマを見過ぎていた私は、これまでお笑いのことは何も言わずとも、娘の様子を見て「フフッ、わかっていたわよ」なんて言ってくれるのでは?と淡い期待をよせていた。

現実はそう甘くない。

「この嘘つき! 何よ勉強するとか言いながら、コソコソ違うことして!」

何度も私に「嘘つき」と言い、母は泣いた。「ずっと机に向かっている割に成績が全く伸びないから、心配していたのよ」と言われた時は心が痛んだ。

問題児だった姉が毎日両親に怒られている様子を見て、「怒られそうなことは言わない」と決めていた次女の私。

これが母を本気で怒らせた最初で最後の経験。半ば強引に親の許可を得た。

◇◇◇

しかし、テレビ収録直前にコンビで大ケンカになってしまう。

もともと漫才をすることでしかつながっておらず、仲は決して良くないコンビ。

きっかけは「ウケないのを私の書いたネタのせいにされた」とか「漫才の練習に時間を取られて彼氏と会えない」という不満が募ったとか……そんな些細なことだったと思う。

ケンカを機にコンビは解散。1つの大きな夢だった、”テレビ出演”は直前にして儚く散った。

今思えば、相方にもっとすがりつくべきだった。葛藤の末、若さゆえの変なプライドが邪魔をした。

今までやってきたことは、何だったんだ……

目標を失った私は、毎日学校に5分ずつ遅刻するようになる。今まで走って間に合わせていたところの踏ん張りが効かなくなったのだ。

あまりにも遅刻が多いので、しびれを切らした担任が「遅刻したら、学年主任のN先生に報告をしに行くこと」という特別ルールが敷いた。早速翌日も遅刻をし、絶対怒られると思いながら報告すると、意外な反応が返ってきた。

「そうか! よく(学校に)来たな。明日も来いよ!」

親も誰も期待しないが命をかけていたテレビの夢は寸前で儚く破れ、遅刻して怒られてばかりいたのに、学校に来ただけでほめてもらえるとは。目を潤ませながら教室へ戻った。

冷静に考えれば、N先生お得意の金八ライクな〝ちょっとくさいセリフ”だが、この時ばかりは胸に響いた。

「あれも叶えたい」「これも叶えたい」欲望が渦をまき、葛藤を重ねた私の青春。よく考えると、社会に出てからも人生なんて葛藤ばかりだし、高校時代は葛藤の練習期間だったようにも感じる。

そんな中、N先生の言葉には助けられた。ありのままを肯定してくれる言葉はありがたい。

今日も先生は葛藤している誰かに「よく来たな!明日も来いよ!」と言っていることだろう。

編集:アカ ヨシロウさん

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