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歯医者さんが頑固なわけ

一応、本記事は前記事「歯医者さんも知らない。フロスの新常識」の続きとして書いてますが、単体で読んでも分かる内容になってます。

前記事「歯医者さんも知らない。フロスの新常識」では「デンタルフロスを有効と考える科学的根拠が薄すぎる!!」という結論を出しました。

ということで、今度から歯医者さんで「フロスを使ってください」と言われた時に、
「え?フロスのエビデンスってあります??」と聞いてみてください。

・・・聞けないと思いますけど(笑)

その時に、どんな反応が返ってくると思いますか?

なんか、絶対怒られそうですよね!!

ちなみに、余談として「フロスのエビデンスあります?」に対する反応別の評価を後半に載せてます。余談です。

なんで怒られそうと思ったか。歯医者さんに限らず、お医者さんでも、企業の社長でも、警察官でもなんでもいいんですけど、権力者って頑固なイメージないですか?
「あいつは権力握って、性格変わった」みたいなことってありませんか?

事実、権力者は性格変わるのか?って研究がなされてるんですね~。いやぁ~科学って面白いですねぇ~。

今回紹介する論文は、権力を持つと①自己中になる②思い込みが激しくなる③感情を読み取る能力が下がる。という内容。

論文はこちら

アダム・D・ガリンスキーという人が2006年に出した論文です。ちなみに、この人が「権力と行動」についてまとめた論文が最近2019年6月に出てるんで(すごい最近!w)、興味が出たら、こちらも読んでみるといいかもしれません。

実験方法を説明します。

「権力を持つと・・・」←この部分が、ガリンスキーさんの実験の面白いところです。実験のために学生を2つのグループに分けるんですね。片方のグループには「過去の自分が他人の上に立った経験」を書いてもらって、もう片方のグループには「過去の自分が他人に支配された経験」を書いてもらうんですね。(前者を「権力者グループ」後者を「非権力者グループ」とこの記事ではします。)
実験のために、莫大なお金を与えたり、他人を支配できる環境にしたりとかではなく、「思い込み」をさせたんですね。

え!?たったそれだけで、なにか行動とか考え方が変わるの!?

変わったんですって!面白いですね~!!

この「権力者グループ」「非権力者グループ」に4つの実験をしています。

1つ目が57名の学生を2つのグループに分けて、「自分の額にEって文字を書いて下さい」と指示してマジックを渡しました。って実験なんですけど、面白すぎません!?実験の写真が論文にあるんで、是非見てほしいんですけど、シュールすぎます(笑)

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そうすると上の絵のように、「自分から見てE」って書く人と「相手から見てE」って書く人がいるんですけど、結果は約3倍近く「権力者グループ」の方が「自分から見てE」を書いたんですって。もちろん有意差ありということです。
研究者は「自分から見てE」を「自己中なE」って表現しています。「自己中」は言いすぎかもしれませんけど、「自分から見てE」なのか「相手から見てE」なのか、思いやりがあれば「相手から見てE」かもしれませんね。「自分から見てE」と「相手から見てE」のどっちが良いかはさておき、「思い込み」でも行動が変わったって事実は驚きですよね。

どうでもいいですけど、「おでこにマジックで文字を書く」って言われると、「肉」って書きたい衝動に駆られる人は、同世代ですね(笑)左右ほぼ対称なので実験にならないですが・・・

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2つ目と3つ目は、セットで一個の実験のようなものですが、権力者は「相手もきっと自分と同じように考えているに違いない!」と考える傾向を調べる実験です。
2つ目の実験では42人の学生を、3つ目の実験では51人の学生を、1つ目の実験のように、「権力者グループ」と「非権力者グループ」の2つのグループに分けました。内容がプラスの意味にもマイナスの意味にも受け取れる文章を読んで、その文章がプラスの内容なのか、マイナスの内容なのかを答えてもらいました。そうすると、「権力者グループ」のほうが、「相手もきっと自分と同じように考えているに違いない」と考える傾向が確認されたんですね。

4つ目の実験は、70名の学生をまたまた「権力者グループ」と「非権力者グループ」に分けて、4つの感情の顔写真(幸せ、恐怖、怒り、悲しみ)を見せて、その写真の人が4つのうちのどの感情を感じているか選んでもらって、何問間違えるかを計測したそうです。そうすると「権力者グループ」のほうが顔写真の表情を読み間違える傾向が確認されたそうです。ようするに「他人の感情に鈍感になる」ってことですね!こわっ!

ということで、まとめると


「権力を持つと、①自己中になって、②思い込みが強くなって、③相手の気持が分からなくなる」

とのことです。
これって、ちょっと過去の体験なんかを思い出して、「権力があるように思い込ませる」程度で、はっきりと違いが出たところが、面白いところであり、怖いところでもあるなぁと思いませんか?実際に権力を持つことになると、数時間だけ権力を持つとかではなく、何年とか何十年とかいうスパンで権力を持つことになるので、その影響って・・・ってなりますよね。

もちろん、そうなることのメリットもあると思います。例えば、経営者が、いろんな従業員の話を平等に扱い、思い込みもなく、全員の気持ちや心情に共感してたら、スムーズな意思決定などは到底不可能ですし、なにより多分精神的に病みます(笑)他には、外科医が患者さんの気持ちに共感しまくってたら、体にメス入れるたびに「あ~痛い!!痛いよ!!」って思うわけで、そんな外科医、嫌すぎるでしょ(笑)かくいう私も歯科医師で外科的な仕事が多いわけですが、
仕事の時は必要な切開に躊躇いなどありません( ー`дー´)キリッ←書くんじゃなかった嘘くさい(笑)(でも、不思議なもので、オフの時はテレビなんかの血が出る痛そうなシーンなんかも「痛い!痛い!!」ってなるので、あんまり見たくありませんw)

メリット・デメリットあるとしても、「権力者は頑固になりやすい」ってことを頭においておくことは、大事だと思います。自分がそうならないように気をつける事が、この記事を読んで貰っている人に出来る最大のことだと思います。反対に「頑固な歯医者さん」をなんとかしようって考えるのは、色々私も調べたり勉強してみたりしましたが、結構ハードルが高いので、担当医を変える方が手っ取り早いかもしれませんね。


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以下、予告していた余談です
「フロスのエビデンスあります?」の反応別評価!!
(私の評価です!!あくまでも!!)

パターンA
「エビデンスですか!そう言えば知りませんね。調べておきますね」

パターンB
「科学的根拠は確かに弱いですね。よくご存知ですね。でも、フロスを私達歯科医師や歯科衛生士レベルに上手に使えれば、効果が出てる論文はあるので、私達はその使い方も徹底的に指導させていただいてます」

パターンC
「あ~あれね。アメリカで言われてたフロス無意味説ね。エビデンスがなくても使ったほうが良いに決まってるでしょ!」

パターンD
「エビデンスは知らないですけど、歯と歯の間の汚れを取るにはフロス使うしかないじゃないですか?歯を守りたかったら使ってください。」

評価軸は3つあります。
①:勉強しているか
②:柔軟に考えることが出来るか
③:物事を科学的に判断することが出来るか

パターンA
①勉強不足だが②それを認める柔軟性と成長する意志がある。私だったら、一番このタイプに担当医をお願いしたいかも。

パターンB
①勉強している②柔軟にその事実を受け入れている③科学的に使用するメリットを伝えられているので、超優秀な方。ただ私が一般の歯科知識レベルなら、ちょっとこの歯医者さんは警戒するかも。
理由は②の柔軟性がホントにあるかどうかが分からないから。
というのは確証バイアスと言って、(そのうち確証バイアスについては記事にできたら良いなぁ~)人間には自分に都合のいい情報だけを収集してしまう性質があるので、この歯医者さんは賢いのは間違いないですが、「フロスの科学的根拠少ない」って知った時に、無意識かもしれないけれど、なんとかして、「今までの自分が信じてきたこと」=「フロス有用説」を支持する情報を探してきた可能性があるからです。それだとちょっと②柔軟性や③科学的判断は弱いかもしれないですね。

パターンC
①勉強不足の可能性高い(少なくとも自分では調べてない)②頑固③科学的に判断することは出来ない。私とこのタイプは合わないので、担当医になって欲しくないタイプ。

パターンD
①勉強不足②柔軟さ低い③科学的に考える力は少しはあるかもレベル。私だったら、担当医をして欲しくないかも。

という印象ですかね。
歯科医師も人間ですから、全知全能の神ではないですから、知らないことは沢山あります。大事なのは、それを認めて常に勉強する姿勢だと思います。私も含めてみんなで勉強して、知識をつけて、より良い選択が出来るようになると良いですね。
※更新が遅れすぎて、申し訳ございません。自分の勉強する姿勢にも喝をいれなければ!!

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