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本屋、ひらく(読書感想文)

 小学生の頃、友達と遊ぶのと同じくらい一人で行動するのが好きだった。自転車を走らせて、だいたいいつも行く場所は同じ。
 町の小さな「歴史資料館」。ひんやりとした誰もいない大きな納屋みたいな場所に、昔の人が使っていた農具や食器、かめ棺が陳列されていた。昔もここに人がいたんだ、と想像を膨らませロマンに浸るのが好きだった。
 小規模ホームセンター。「ないものは作る」両親の影響で、自分の手で何かを生み出すのが好きだった。ホームセンターは四次元ポケットみたいだ。

 そして、近所のちょっと大きい本屋。ここにはほぼ毎日通った。SNSのない時代、気になることは全部本に頼った。時間はたっぷりあったから、自分なりのサードプレイスを自分で見つけては、そこで自分を探検し、世界と繋がった。

 この本は、全国の個人書店を始めた方々の言葉で出来ている。何をもって成功と言えるかわからないこの時代に、他の人が描く「成功」ではなく、自分軸で生きている人の言葉は深くて面白い。そして軽やかで重みがある。
 いわゆる安全な道から横道に入っていった先の、軽やかな人生。生活の糧と生きる糧。悩み抜く中でのアイデア。
 一つ一つの決断がリアルだが、理想と現実は同居できるのではないか、と希望を感じる。

 本屋が好きなので、タイトルで一目惚れして購入したけれど、本というよりも人の生き方に触れる、ずっと手元に置いておきたい大切な本になった。

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<心に残った言葉(順不動)>
●本屋は「個」でいられる場所(ボルべニールブックストア:金野典彦氏)

●「いま、ここで」への関心が著しく高くなっている時代において、本屋で「いまもむかしも、さまざまな場所で」に触れられる価値はいくら強調してもし過ぎることはない。(UNITE:大森皓太氏)

●それは現実を物語のようにしたいとか、物語を現実のようにしたいということではありません。物語と現実の両方を同じように肯定したいという願いです。
(つまずく本屋ホォル:吉田尚平氏)

●マクロとミクロのどちらの領域においてもポジティブな行動が必要であるわけで、ぼくの場合はおそらく今後は微小な方向に向かった方が、せめても自分の資質を生かせる気がしたのだ。(早春書店:下田裕之氏)

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