今日もまた眠れやしない。

夜更かし仲間たちも、みんな「おやすみ」と一足先に今日を終わらせて明日に行ってしまった。

待ってくれ、まだ心の準備ができていない。置いていかないでくれ。

別にもう今日やることはない。
明日は大学の卒業者発表。単位はもう取り切っていて、何かとんでもないことが起こらなければ卒業出来るはずだ。

別に安心して寝ていいはずなのに、何故私は煌々と明かりをつけた部屋でスマートフォンを眺めて不要な思案を巡らせているのか。

どこでもドア。

どこでもドアの仕組みを知っているだろうか。昔の恋人がドラえもんオタクだったのだが、彼によると、あれはドアノブのところで感情を読み取り、ドアの前で1度消滅してから、目的地で再構成される、というものらしい。

「どこでもドアの前と後で、本当に同じ人間なのかな？怖くない？」

そんな彼の言葉を思い出してしまったから、今日は眠れないのかもしれない。

「眠る前と後で、本当に同じ人間なのかな？」

そんな問がぐるぐると頭を回っているのだ。

眠ることによって「私」の意識は1度途切れる。そして明日また覚醒するわけなのだが、今の私の自我と明日の私の自我は本当に、同じなのだろうか。

途方もない話だし、何を言っているのかわからないかもしれないが、そんなどうでもいいこと、考えても仕方のないことを考え出すと止まらないのがこの時間だ。

眠りに落ちた瞬間の記憶はないが、もしかしたらその時間に自分が切り替わっているのだろうか。夢は記憶を整理しているとかいう話を聞いたことがあるが、そりゃ自分が切り替わるんだから情報処理くらいは必要だ。昨日眠った「自分」はどこに行ってしまったのだろうか。辛い思いをしていないだろうか。昨日の「自分」が辛い目に遭ったのならば、次は私の番だ。怖い。何をされるんだろう。ああ明日は卒業者発表か。卒業できなかったらどうしよう。今から就活もう一回か。あ、でもどうせ消えるのか。ならいいのか？いやだな。消えたくないな。涙が出てきた。

支離滅裂。全くもって支離滅裂だが、それがこの時間帯だ。

ああそんなことを思っている間にねむくなってきた。眠ってしまったら、自分はきえてしまうのかもしれないけど、とってもなんだかこわいけど、きょうもまた、おやすみ世界。