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「あの先生は絶対にS だった!」って思っていた話。


下書きに眠ってたの掘り起こして追記。

思い出したんだよね。 

⚠痛かった話です。痛いの駄目な人ご注意ください。


あれは、えーと、確か私が専門学校2年の時。
休日で、シンクの掃除をしていた時の話だ。
狭いアパートのキッチンを有効活用するため、私は水切りカゴをシンクに引っ掛けて使うタイプを愛用していた。

実物はこんなお洒落じゃなくてプラでできた安価なものでした。

↑こんなやつね。

薄暗い廊下のようなキッチンで、電気も付けずにスポンジでシンクを磨いていた。
ゴミが残ってるなと、水切りカゴの下に手を突っ込んで引いたとき、指に鋭い痛みが走った。

え??なに??

そう思って手をあげて見ると、すでにスプラッタ状態。中指の側面から血がポタポタとこぼれている。

やばいっ。やばいって…し、止血!!止血しなきゃ!!

ギュッと指を抑える。
混乱する頭で状況を理解しようと思い
スプラッタなシンクをのぞく。
よく見ると小さな肉片が……落ちている。
その先くらいカゴ下に鈍く光る犯人を見つけた。

水切りカゴの下に包丁の刃が落ちていたのだ。

そう、スライサーにキュウリを引っ掛けるように、私は指を包丁の刃に引っ掛けたのだった。

当時、怖いものなんてないだろうなんて言われていたが、実は私は自分の血に激弱であった。とんでもなく自分の流血が怖い。当時よりマシとはいえ、今も苦手。

痛みは我慢できても、血を見ると力が抜けてしまう。手足が笑ってしまう。
他人の流血は理性でどうにでもなるのだが(それもどうなん?)、自分が血を出している状況はとんでもなく苦手である。

一人ぐらしの家の中、プチパニックである。
夕方にはバイトがあるのに!!
このままじゃバイトいけない!!
それより血が…とまらない。まずい。まずいって!! 

とりあえず、それでも患部を押さえ、必要になるかもと小さな肉片を拾いなるべく清潔にとティッシュに包む。(色々おかしい気がするが、肉片くっつけられるかもとか考えていた)


あ…血…血ぃ…ながれてる…。
圧迫して…圧迫~(泣)

自分の血を見るのも苦手だが、私は圧迫して止血するのもとっても苦手である。
なぜなら、血圧計の圧迫でさえ気持ち悪くなってしまうからだ。

「圧迫=気持ちが悪くなる=怖い」

健康診断の恐怖は血圧計に腕を入れることだと思う。(採血より嫌)
うっ血させる遊び(とても野蛮な遊び)が中学校で流行っていた時は、巻き込まれないように気をつけていた。

とりあえず携帯電話の一番上にあった実家に何故か電話する。パニックにもほどがあった。学校にかけて先生に助けてもらったほうが近いし早かったのに。この間5分ほど。

父親が出たので状況を説明すると
「心臓より腕高くしておいて、救急車よびな」
と言われる。
そりゃそうだ。
他県にいる娘をすぐに助けに来れるわけでもないし、私は車も持っていない。

「うぅーえぇー?!指切ったくらいで?!むりむりむりむりっ」

当時の私はど健康体。
そもそも怪我とかあまりしない子で、病院に行きなれていない。
病院に行くだけで躊躇う人間は、咄嗟に救急車、ましてや休日に、指を切った程度で呼ぶ度胸なんてなかった。(それよりは、病院行くためにタクシー呼べやって話だよね。…お金なかったからなぁ。)

とりあえず、なんとかすると言って電話を切った。

ピンチ!!大ピンチ!!
部屋を手を高々あげて右往左往する。
傍から見たら滑稽だったろうなぁ。

一人で止血を試みるか……でも抉れている傷はきっと何か処置しないと大変なことになるのはわかる……腐るかもしれない……でも、最悪縫うかも……。んんんんーーーー!!

私は意を決して、部屋の外へ出た。
お財布を持って。
ものすごくいいお天気だったのを覚えている。

私が住んでいるアパートのいくつかの部屋は学校が借り上げている。
同級生や先輩が住んでいるのだ。
友達が在宅かもしれない…。
申し訳ないが、助けてもらおう!!

駐車場の車を確認して、隣りの先輩が在宅だとわかった。
ほかの同級生は皆出かけている様子。
私は必死に隣りのドアを叩き声をかける。
人の気配がして、先輩がドアを開けてくれた。

びっくりした顔の先輩に訳を話した。
指を血に染めたそこまで深い仲じゃない後輩が、青い顔して「病院に連れてって」とか、とんだ休日ですよね。先輩、ごめんなさいでした。

大変申し訳無いが病院に連れて行ってほしい。
病院に置き去りで構わないからと頼み込む。
ちなみに一番近い大きな休日救急をやっている病院まで車で15分ほどかかる。
必死である。


結果、先輩は私を病院に連れて行ってくれた。
診察室で待っててくれて、帰り道も送ってくれた。有り難や。


で、その診察の時の事が今日の題名である。
(題名回収まで長かった)

休日の診察所は混んでいた。
様々な患者さんがいるなかで、私は割と早く呼ばれた。明らかに怪我していたからかもしれない。

「指きっちゃったんだって~?」
「痛かったねぇ~」

私の前に現れた休日の先生は、とんでもなく優しい空気を醸していた。
例えるならDr.コトーに似ている。黒髪時代の。あのコトー先生に細身のメガネをかけたら、私の記憶の医師にほぼなる。
のほほんとした喋り方がとっても良い。安心する。

私はパニックになっていたことを微塵も表に出さないようにして、状況の説明をした。

「切れちゃったとこ持ってきた?」

聞かれて気づく。

「あ…!せっかくティッシュにくるんだのに忘れちゃった!!」

あんなに準備したのに、己の肉片を玄関にわすれた。

「あ~そっかぁ。綺麗に切れてたら、くっついたかもと思ったけど忘れちゃったかぁ」
「でも……シンクに1回落ちた…(謎に言い訳する)」
「あ、そうな?じゃ、バイキン入っちゃうから駄目だったかな。大丈夫、大丈夫。なくてもなんとかするからね~」

先生はそう言って私が巻きつけたティッシュをとる。痛い。顔を歪める。

「痛いねぇ~」

先生は私をチラッと確認して、声は変わらず穏やかなのだが、何か嬉しそうな顔をしている。
何やら小さい声でブツブツといいながら楽しそうに患部を観察した。

心配そうな私の顔をちらっと見てニコニコしながら
「んん~っ。縫ったほうがいいかなぁ。ビミョーだなぁ。痛そうだねぇ…」
などと言う。

「麻酔する?ですか?縫ったことないぃ……」
「ん?ふふっ。こんくらいならしなくても出来るよ~。ちょっとチクチクって痛いだけだよ~ふふふっ」

もう、完璧に笑っている。せ、先生。楽しんでる!!私の傷口を楽しんでるでしょ?!

「ま、1回整形の先生に確認してみるよ電話で。待っててね~ふふふっ」

私は待っている間『縫われる…縫われる…』とドキドキしていた。
ドキドキしながら忙しそうな看護師さんや、先生達を眺めた。それから置いてあるものを眺めた。

ペットの専門学校では消毒液なんかも使うことがあった。人間用でも、使えるものは獣医師の指導の元使っていた。学校にあるものが周囲にいくつかある。面白かった。

縫われるときは潔く縫われよう。
などと思っていた。潔くもなにも、そうしなきゃならないなら、そうするしかないのに。

気持ちが落ち着いたころ先生が戻ってきた。

少しだけ残念そうに
「整形の先生が縫わなくて良さそうだって~。縫うと引き攣れちゃったりして痕になることもあるから、確かにこのまま治すのがいいかもね~!」
そう言う。

「ふふふっ。良かったね~。あ、でも消毒だけしていこうね~。バイキンはいると良くないから。しみるかもだけど我慢してね~」

せ、先生。不安そうな私のこと面白がってますね?!

そのあと、消毒をされる時はしみたが、耐えられないほどではない。
しかし、やはり顔は真顔ではいられないのである。先生は終始笑顔だった。安心させる為かもしれないが、明らか楽しそうな空気もあった。

『Sだっ!!この人はSなんだっ!!』

そう心で叫びながら優しげで、楽しげな先生に見送られながら病院をあとにした。
そんな思い出なのだ。


そのあと治癒には、そこそこの時間がかかったがそこまで傷も目立たなくなった。


今考えると、あの先生はSというより、患部に対してオタク気質だったのかもと思う。
…何科の先生だったんだろう??
その後、内科だの何だのとその病院には少しお世話になったのだが、あの先生には当たらなかった。


あの時の、先輩と先生有難うございました。
包丁はすぐにしまう癖がつきました。


本当、痛いしスプラッタで心臓ドキドキでした。
当時、10代か。若かったなー。



私は病院にあまりかからないのだが、かかる時の見た感じが不安そうなのか、先生がやたら優しくお話してくれるパターンが多い。
泌尿器科のおじいちゃん先生なんて、孫に話しかけるがごとく優しく優しく慰めてくれた。もう、いい大人って年齢だったのに!!笑
ただの膀胱炎なのに。笑
いや、あの時も急性で血尿が出たあとで、血ぃぃとなってたから顔色悪い悪かったんだろうな…。


血圧器の圧迫で具合悪くなるのなんとかならないかしら。
友達には「皮膚薄いし、肉ないから、血管押されすぎて気持ち悪いんじゃない?」とか言われた。


怪我しないように気をつけつつ、怪我したら冷静に対処できるようにしつつ、とりあえず日々過ごしていきたいなぁと思います。




















サポート設定出来てるのかしら?出来ていたとして、サポートしてもらえたら、明日も生きていけると思います。その明日に何かをつくりたいなぁ。