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大事なものほど手離して、変わった先で待ち合わせ。

いいことがあると、きまって何か不吉な予感がしていた。だから、いいことが起これば起こるほど私はいつも準備を始めてしまっていた。───きっと、何かが起こってしまうから、この幸せにちゃんと溺れて、得体の知れない不吉な何かも乗り越えるエネルギーをつけておこう───

逆も然り、悪いことが続いても “これだけ悪いことが続くなんて、このあとにどんな幸せが待っているんだろう” なんていう誰も責めない、しずかに受け入れていく運命。

だから私はいつだって多くを望んでこなかった。期待はしすぎない、そんなルール。誤解しないでほしいのは、自信がないというわけでも、投げやりになっているわけでもないということ。ただ、何かの線引きがあるとして、それ以上の何かを得たい、というマイナスではじめる私のポジティブシンキング。

そんな綺麗なことを言ったけど、ただ逃げているだけだということも自覚している。傷つかないようにそっと、ひっそりと。足音を立てずに近づいて、何事もなかったかのように去っていく。それを綺麗に言うと「さっぱり」だったし、「風のよう」だったと思う。

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今でも神様は不平等だと思う時はある。欲しがれば欲しがるほど、頑張っても、手にできないものがたくさんある。期待しすぎない私がいつの間にかできてしまっていた。

だれかが羨むようなものもちゃんと持っている、とも思う。会うべき人には会える運命。これは運命だ、とみわけられる第六感。過去を始点としてはじまっていた物語に気づけるちょっとメルヘンな想像力。“傷つきやすい” を感受性豊かだと言い切れるしずかな自信。

出来事が私の中を通っていくのには、あまりにも時間がかかる。抽出速度が遅いから、濃縮されていくこの感覚も好きなんだけど。でもそれを早めてくれる “触媒” なるものがあるとするなら。

いつだって、好きなものはあふれている。でも絶対に手離せないなにかは、多分数えるほどしかない。大事じゃないかもしれない、と言い聞かせる抑圧がきかなくなる瞬間は突然訪れる。言わないと決めていたけれど、そんな私からも卒業するために、気付けば文字を綴っていた。

私は、私を心地よくさせてくれる甘いだけの何かにずっと浸っていたいわけじゃない。かなしい微笑み、きっとそれが、今の私の触媒。多分、これからも。

どうにか保っていたプラマイの天秤がくずれるときが来てしまったな。それでも多くは望めない、手にしたいわけじゃない。ただ、私の大好きな余白にそれを置いていたいなんていう願いも叶えることはできないのだろうか。

「変わった先で待ち合わせ、しよう」

かなしい微笑みがどうして惹かれるか、の話はまた今度。ただいつも思うことは、物事の正解はいつだって、思考ではなく感覚の先にあるということ。
───どうか、しまっておいてください。

読んでくださってありがとうございます。今日もあたらしい物語を探しに行きます。