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餃子屋さんで980円のセットを、3人で。

私には行きつけのお店がある。気の置けない友達2人と行く餃子屋さんだ。いつも餃子セットを頼むのだけど、ビールと餃子とおつまみのセットで、1200円。さらに「グルメサイトを見た」と言うと、必ず980円にしてくれる。最初は必ず一人1セットずつ頼むのが習慣になっている。

餃子はパリパリの羽根つき。細めの餃子が20個くらい、ひとかたまりになっている。もう、とってもおいしい。

もう1年前くらいから毎月のように通っているから、店員さんも顔なじみで、この前なんてお店に入ってすぐ、何も言っていないのにビールを出してくれた。ビールが出てきた瞬間、3人で顔を見合わせて思わず笑ってしまった。

このお店を訪れるようになったのは、1年位前のあることがきっかけだった。

私はまだ前職で会社員をしていて、毎日23時まで仕事をしていた。慣れない環境と、ちょっと独特の社風に疲れてしまっているときに、同期入社の友達と3人で飲みに行くことになった。

といっても、23時からスタートになったという、初回にしてはなかなかめずらしい飲み会で。でもこれが大盛り上がり。仕事の話や今までの経験のこと、恋愛の話など、なんでも話せた。その勢いといったら、30代以上の立派な大人の3人が、10年ぶりくらいにオールしてしまうほどで。初めてと思えないほど話が合って、楽しい時間だった。

私は転勤で福岡にきたこともあって、前の職場のつながりでしか友人がいなかったから、本当に久しぶりに心から笑ったと思えた時間だった。

その後、3人で毎週のように飲むようになって、定番のお店になったのが、餃子屋さんだった。3人とも同じくらいビールが好きで、長い時間飲んでいるときは10杯くらいは軽く飲んでいる。それでもだれも脱落することなく、むしろ元気になりながら朝を迎えることもある。

そのくらい、その餃子屋さんで飲むビールはしあわせだった。

でも、2020年4月くらいからの外出自粛で、その習慣は途絶えてしまった。

月に一回、多いときは週に一回は飲みに行って、いろんな話で盛り上がった場所がなくなってしまったのは、私にとってとても大きなダメージになっていた。ちょうど同じくらいに私はライターとして在宅で仕事をするようになって、外とのつながりも完全に途絶えてしまったように感じて。本当につらかった。

そんな間も、毎日のようにLINEではやりとりをしていて、近況は知っていて。でも「いつ飲みに行く?」とは言えない状況で。「リモート飲み」も考えたのだけれど、「飲んだあとにさみしくなるから」という友人の言葉に妙に納得してしまって、開催できずにいた。

もう、飲みに行けないのかもしれない。

そんな不安すらよぎった。

このまま世の中が変わってしまったら。そうでなくても、このままフェードアウトして、3人で笑ったあの場所はなくなってしまうのかもしれない。

そんな、恐さも感じた。

でも、6月。外出自粛が解除された。さすがにすぐにとはいなかったけれど、7月になって、久しぶりに3人で飲もうという約束ができた。久しぶりに会った2人は、何も変わっていなくて温かくて。泣けるほど、ほっとしたのを覚えている。

その後も定期的に月に一回、私たちは餃子屋さんで飲んでいる。この場所で飲むことがこんなにしあわせなことだったんだと、実感しながら。

以前と何も変わらない。相変わらず気の置けない友達の2人。もしこれから、会えない時間があっても「3人なら乗り越えられる」。そんな気がしている。

2人と出会えたことに心から感謝して。

何があっても1日ずつ、前に進んでいこう。

#ここで飲むしあわせ

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