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研究者のコミュニケーション能力の向上

こんにちは、市橋です。
コミュニケーションを通して、毎日多くの学びを得ております。

今回、コミュニケーション能力を高めて仕事にフィードバックしたい方に向けて書きます。

若い頃の私はとても内向的で、人と話すと赤面することが悩みでした。それでも少しずつ克服することができ、今では多数の共同研究や国家プロジェクトの取りまとめもするようになりました。

もともとコミュニケーションが苦手だった私がコミュニケーションを仕事に活用してきた経験に基づき、以下についてシェアします。

1. コミュニケーション能力とは?

本題に入る前にコミュニケーション能力について少し整理させてください。

コミュニケーションは日本語で、「意思疎通」になります。

自分のことを話すのではなく、こちらの話をじっくり聞いてくれる方との会話により、気分が爽快になった経験ありませんか?

自分のことばかりしゃべる人が、自称コミュニケーションが得意と言ったりしますが、必ずしもそうとも限りません。今回、私が大切だと考えてるコミュニケーション能力とは、「言葉のキャッチボールができる能力」であり、相手からのボールをしっかり受けて、的確にボールを投げ返し、その繰り返しによって双方にメリットが生まれやすい状況を作りだす能力だと考えております。

つまり、おしゃべりする能力とコミュニケーション能力は必ずしも同じではなく、おしゃべりが苦手な方でも確かなコミュニケーション能力を得ることができます。

2. コミュニケーション能力を高めるメリット

研究者にとって、コミュニケーション能力を高めると得られるメリットについてまとめます。

【コミュニケーション能力を高めるメリット】
・ 人脈に恵まれる
・ 人間関係を改善する
・ 情報収集ができる
・ キャリアアップにつながる

人脈に恵まれる

コミュニケーション能力を高めると、自然に良い人脈に恵まれます。コミュニケーション能力により、ただの知り合いという関係を超えて、お互い必要な時に協力することができ、節度を持った距離感での人間関係を築くことができます。ただし、築いた人脈がすぐにあなたの人生にとって恩恵をもたらすわけではなく、今後の長い人生の中で思いも寄らない局面で助けてもらえるかもしれない、そういった長い視点での恩恵になります。

例えば、私も10年以上も連絡を取り合っていなかった方から突然連絡があって、共同研究に繋がったことがあります。そういったご縁は数件だけではありません。むしろ私が進めるほぼ全ての共同研究がコミュニケーションを通して築いた人脈のおかげで始まったと言っても良いくらいです。

人間関係を改善する

コミュニケーション能力を高めると、人間関係が改善します。人脈作りに近いのですが、一度作った人間関係を良い形で維持する必要があり、その時にもやはりコミュニケーションが必要です。全ての問題は人間関係から生じてくると言っても過言ではないほど、多くの方が人間関係に悩まさせれています。この問題は完全に解決することはできませんが、コミュニケーションにより、改善することができます。また逆にコミュニケーションがうまく行かないと人間関係はすぐに悪化してしまいます。

私も自分の研究室の人間関係でよく悩むことがありますが、自分自身からコミュニケーションを取ることにより良好な関係性を維持しようと努めてきました。人間関係は丁寧に育むべきものであり、その手段がコミュニケーションになります。

情報収集ができる

コミュニケーション能力を高めると、その時のあなたの状況にあったタイムリーな情報が集まります。他人もあなたと同じように、日々考えて行動しています。しっかりコミュニケーションをした間柄だと、少しでもお互いのために何かできないかにといった気持ちになり、必要な情報をやりとりするようになるからです。

実際に私も新しい動きが必要だと感じている時に信頼できる方からタイムリーな情報をいただき、大きく研究が進展したことがあります。そういった経験から、私も入手した情報が誰かのためにならないかと常々考えるようにしております。コミュニケーションから良い循環が生まれると、自分もその良い循環に貢献したいと思うようになります。

キャリアップにつながる

コミュニケーション能力を高めると、キャリアアップのチャンスが増えます。キャリアアップするためには、スキルや実績の向上、また資格や試験の点数のようにすぐに履歴書に反映できる項目を想像する方が多いかと思います。もちろん、そういった実務に直結する能力をトレーニングすることは重要なのですが、コミュニケーション能力は人間が関わる全てのことに共通して重要になります。そのため、キャリアアップで意思決定をする人々は、コミュニケーション能力について、実務のスキルや実績と同等もしくはそれ以上のウェイトで見ています。

私も研究主宰者であるPIになってから、人事の審査をする立場になりました。その際、技術やスキルはもちろんですが、コミュニケーション能力の高さを重要視しています。特に若い方の場合はスキルや実績にそれほど差が無いため、将来につながるポテンシャルを見定める必要があります。そこで、コミュニケーション能力が高い方は、人脈作り・人間関係・情報収集に優位性があり、結果的に研究に専念して良い成果を出す可能性が高いと判断できると考えております。

3. コミュニケーション能力を高めるヒント

それではメリットが多いコミュニケーション能力を高めるために、実際に私が実践してきた経験に基づいて、どなたでも実践できるヒントをご紹介します。

まずは基本姿勢として、「フレッシュマンであれ」です。

フレッシュマン、すなわち新入生のとき、新入社員のとき、誰でも何か新しいことをはじめるときフレッシュな気持ちを経験されているのではないでしょうか。

【コミュニケーション能力を高める基本姿勢】
フレッシュマンは、
・先入観がありません
・好奇心旺盛です
・聞くことを優先して、少しでも学ぼうとします
・周りの人や物をリスペクトして、行動します

このような姿勢で他者と接することが、コミュニケーションの基本として、とても大切だと実感しております。私も中堅研究者となり、自分の専門分野以外の方と議論や共同研究をする機会が増えてきました。またアウトリーチとして研究者以外の方とも一緒にお仕事する機会が増えてきました。そのようなときは、常にその分野のフレッシュマンであることを自覚して人とコミュニケーションをするようにしています。すると、良い気持ちで言葉を交わすことができ、双方のメリットを高めることができます。また、たとえ相手の方が私を良く思っていなくても、私からフレッシュマンの姿勢で接することにより、徐々に打ち解けていくことができました。他人を変えることはできませんが、自分の心持ちはいつでも変えることができます。とても不思議ですが、自分の心持ち次第で、他者との関係性が良くも悪くも大きく左右するものです。

次に、具体的に私が意識して実践している行動を共有したいと思います。

【コミュニケーション能力を高める行動】
・ 感動する本を読む
・ 声をかける
・ 笑いを入れる

感動する本を読む

私が人間関係で悩んでいるとき、恩師から「全ては共感」だと言われたことがあり、今でも大切にしている言葉です。コミュニケーションは、他者をしっかり受け止めることから始まるため、まずは他者の気持ちを自分の感情で受け取る素地があってはじめて適切なレスポンスをすることができます。そのために、共感することがコミュニケーションに大切になります。

とはいえ、共感しようと頭で考えても、すぐには他人に共感できないものです。

そこで、私のおすすめは、「感動する本を読む」です。もちろん、マンガや映画でも良いと思います。人生を色々と経験すると、自分が実際に体験していなくても当事者の気持ちを理解することができるようになります。ただ自分一人の人生では、多様な人生経験を積もうと思っても限界があります。そこで本やマンガや映画などを通して、登場人物の経験を擬似体験することにより、多くの人生経験を得ることができます。特に名作とされる作品の多くは、感情の描写が優れているものが多く、良質の経験を積むことができると思います。

声をかける

コミュニケーションには相手が必要です。声をかけられるのを待っていても人と話す機会は少なくなってしまいます。人と話す機会が少ない→コミュニケーションの経験値を上げる機会を失う→次第に人と話す自信も失う→最終的にコミュニケーションを避けるようになってしまう、といった負のサイクルに入ってしまう可能性があります。そのような負のサイクルに陥らないためにも、自分から声をかける経験を積んで自信を持つことが大切です。

とはいえ、人に声をかけようと思っても、恥ずかしいのでなかなか実行できないものです。

そこで、私のおすすめは、「自分チャレンジ」です。自分自身にちょっとしたハードルを設定して、それにチャレンジしてみます。クリアしたら、次のハードルを設定してチャレンジします。このことを繰り返すことで、コミュニケーションの経験を積むことができ、自信を持つことができます。実際に私が試していたことは、「毎日廊下ですれ違う方に挨拶する」、「ミーティング中に必ず一つ質問する」、「学会中に憧れの先生に話しかける」といった、ちょっとしたハードルを設定して、小さな経験を積んできました。

またこの方法は海外に留学中も実践しており、大きな自信につながりました。多くの日本人の方にとって、英語は第二言語のため、声をかけるときにとても勇気が必要です。それでも、あらかじめ声をかけるときのフレーズを考えておければ、意外になんとかなるものです。私は英語の発音がとても苦手なので多くの方から典型的なJapanese Englishだとよくからかわれますが、それでも日常生活や自分の専門分野における英語でのコミュニケーションなら特に問題なくできます。これは英語の能力というよりもコミュニケーションできたという経験を積んできたことが大きいと感じております。

笑いを入れる

笑いを取ることはとても高度な技術ですが、効果は絶大です。会話に笑いがあることで、お互いリラックスすることができます。リラックスした状態で会話すれば、たとえネガティブな話題であっても許容する心の余裕を生むことができます。そのために、コミュニケーションに笑いを取り入れること、また取り入れようとする姿勢が、物事を良い方向に導いてくれます。

とはいえ、お笑い芸人でもないから、意識して笑いなんか取れない、と思いますよね。

ここでの笑いとは、大爆笑ではなく、少し場が和むような笑いと考えてみてください。多少滑っても問題ありません。滑ったことでクスッと笑いが起きたりします。もちろん真面目な話の時に、その内容を茶化すような笑いの取り方は好ましくありませんが、ユーモアは緊張した空気を一変して、前向きな会話になりやすいものです。

特に私は「誰も傷つけない内容での雑談をしよう」といつも意識しています。

自動車のハンドルには「遊び部分」といって、すぐにはタイヤの角度を変えないようになっています。これがないと車をスムーズに運転することができません。このハンドルの遊びと同じように、コミュニケーションにもたわいも無い雑談での笑いが重要であり、これにより仕事でのコミュニケーションに彩りが与えられ、お互いにとって記憶に残るような楽しい会話にすることができます。

4. さいごに

情報が多くなった現代では、一人で完結する仕事は少なくなり、どのような仕事でもコミュニケーションの重要性はますます高まっています。そのため、コミュニケーション能力は、研究者を含めてどの職業の方でも成功を収めるために必要な要素になりつつあります。今回紹介させていただいた私の経験が皆さんに少しでも役に立てると幸いです。

ここで私が感動した本を紹介させていただきます。アメリカ留学から帰国する機内で読んでおり、思わず泣いてしまいました。

永遠のゼロ

また私が読んでとても勉強になった対人関係の本も3冊紹介させていただきます。

人を動かす
嫌われる勇気
幸せになる勇気

今回は以上になります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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