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研究者から学ぶ、ひらめきを生む方法

こんにちは、市橋です。
現役研究者として毎日多くの研究者のひらめきに触れています。

今回、アイデアがなかなか出なくて困っている方、発想力を向上させたい方に向けて書きます。

発想のプロフェッショナルである研究者のひらめきは、一体どこから生まれるのでしょうか?ひらめきとは、「素晴らしい考えが瞬間的に思い浮かぶこと、直感的な鋭さ」と定義されています。私自身も一人の研究者として、ひらめきの瞬間を体験してきました。また共同研究を通して多くの研究者のひらめきに触れてきました。

そこで、私の研究者としての経験より、ひらめきを生む方法をシェアします。

1. ひらめきのエピソード|Lazyな研究者

まず、ひらめきの天才と過ごした2年間の体験を紹介します。

私がアメリカに留学したとき、抜群の発想力を持つ先輩研究者と同じ研究室になりました。彼は、私が全く思い付かないような斬新なアイデアを次々に着想し、研究室でのディスカッションで常に中心的な存在でした。

当時の私は学位を取ったばかりの新米研究者で、彼が進める技術開発プロジェクトに参加することになりました。彼はとても面倒見がよく、私がアメリカに入国したとき、空港まで迎えに来て家族との夕食に招待してくれました。それからはほぼ毎日、平日は研究で、休日は家族とともに、多くの時間を一緒に過ごさせていただきました。彼には感謝することばかりで、また一人の研究者として彼のような方と出会えたことは非常に幸運だったと思います。

彼は子供がそのまま大人になったみたいに無邪気でした。彼はデスクにじっと座っていることができない性格で、いたずら好きで、たまに派手なことをしてしまって周りに迷惑をかけるのですが、彼だから許される、そんな愛されキャラでした。彼は少し変わった境遇だったためか、どんな国の方でも、どんな宗教や考えを持った方でも、すぐに打ち解けることができる性格でした。実際、遠い日本からやってきて英会話が苦手な新米研究者の私がすぐに研究室に馴染めるようにサポートしてくれたも彼でした。

彼は何かと議論することが好きでした。研究に関することはもちろん、時事のニュースに関することでも常に誰かと議論しておりました。また彼は多くの方とは違う視点で意見を言うため、口論に発展することも多々ありましたが、それでも最終的には折り合いがついておりました。私も研究の進め方で何回か口論になったことがありました。そのようなときでも彼は、一方的に意見を言うのではなく、ちゃんと私に言いたいことを言わせてくれました。今振り返ると、彼は純粋に議論をすることが好きで、議論から何か建設的なアイデアを導き出そうとしていただけかもしれない、と思いようになりました。

彼は毎回、私が思いもよらなかったようなアイデアを持ってくるので、あるとき「どうしてそんなにアイデアをよく思いつくのか?」と聞いたことがあります。その答えが「俺は Lazy だから」でした。当時の私は、”Lazy” が怠けているというネガティブの意味しかないと思っていました。確かに彼は自分であまり手を動かさないし、論文発表も積極的にする方ではなかったので、楽することばかり考えて不真面目な人だと感じておりました。また彼の考え方や行動は、私が知っていた研究者像とあまりにもかけ離れていたため、当時の私では彼の能力を正しく受け取る素地がありませんでした。

しかし、研究者のひらめきについて考えてみると、彼は間違いなく抜群の発想力を持っていたし、多くの先生方からも一目置かれていたことを思い出しました。最近になって、”Lazy” にはのんびりというポジティブな意味があることを知りました。

もしかしたら彼は、あえて「のんびりしたライフスタイル」に徹することで、発想のプロフェッショナルを追求していたのではと思うようになりました。

2. ひらめきの根源

これまでの私の経験から、研究者のひらめき・発想が生まれるシーンをまとめたいと思います。

【ひらめきが生まれる3つのシーン】
・ 楽しいとき
・ 制約があるとき
・ 安心しているとき

楽しいとき

好きなことをしているときに、次から次にアイデアが出てきて、それを試さずにはいられないようなか気持ちを体験したことがありませんか?行動の原動力になる興味がなければ、何事も始まりません。目の前にある対象を楽しいと思うことにより、時間を忘れて没頭することができます。自分の興味をとことん追求した先に「発見」があります。

制約があるとき

意外かもしれないが、あれこれ条件がついて制約があるとき、ひらめきが生まれます。ある大学での発明コンテストに審査員として参加したことがあります。そのとき、特に決められたテーマはなく、自由に発明をしてプレゼンをするという形式でした。しかし、実際にエントリーされた発明品を見てみると、その多くが同じような発想であったことを目にしたことがあります。全くの白紙から考えるのではなく、具体的な条件のもとで考えるほうが良いアイデアが生まれるものです。「必要は発明の母」と言われる所以がここにあると思います。

安心しているとき

ある物事をずっと調べたり考えたりしているときよりも、リラックスしているときにひらめきが訪れます。実際、私は研究者仲間とお酒を飲んでいるときに思いついたアイデアから新しいプロジェクトや特許につながったことがあります。ただ、リラックスしていることだけが重要なのではなく、リラックスする前にとことん考えるというプロセスを経て、ふと安心したとき、ひらめきに出会うことができるのです。

3. ひらめきを生む方法

それでは、ひらめきを生む方法として、私が実践している方法をいくつかご提案したいと思います。

【ひらめきを生む方法】
・ なんでも楽しむ
・ 深く考えて話す
・ 心身を健全に保つ

なんでも楽しむ

チャンスがあれば、どんなことでも食わず嫌いにならず、興味を持って体験することを心がけています。やってみると初めて気付くことがあり、また自分の得意な分野とは異なる分野の話を聞くことで様々なアイデアが貯蓄されます。ひらめきはアナロジー的に出てくることがあり、他の分野で当たり前のことが自分の分野で新しい視点になったりします。

またなんでも体験することで、俯瞰的な知識を得ることができ、発想のバリエーションが増えます。そもそも全く新しいアイデアというものは無いかもしれません。科学的な発見においても、これまでの知見の蓄積から自然な流れで発展した先に良いひらめきが生まれます。

またなんでも楽しむため、日頃から「質問力」を鍛えておくことをおすすめします。的確に質問することができると、物事を効率的に知ることができ、より一層楽しむことができます。私は学生のころに「ミーティングに出て質問しないのは欠席しているのと同じ」と厳しくトレーニングされました。そのおかげで、どんなことでも質問するようになりました。質問して理解が深まると、より興味が湧いて、なんでも楽しむことができます

深く考えて話す

深く考えること、そのときに置かれた状況で知りうる全ての情報に基づいて、具体的な行動に落とし込むまで考えることを心がけています。先ほど紹介したように、ひらめきは制限があるときに生じやすいため、枠組みを最初に設定して、その制約の中で自由に発想した方が人間のひらめきを最大化できると考えているからです。

知り合いの芸術家さんから聞いた話があります。芸術の世界でも、人が理解できる範囲内での独自性が求められ、そこには枠や形式であったり、伝統的な文脈で決まるお作法があり、その中で想像力をいかに発散することができるのかということを創作活動で実践されているそうです。

また深く考えた上で、話すこと、すなわち他人に自分の考えをアウトプットすることを心がけています。話すことは、自身の考えを論理立てて相手に伝える必要があるため、それまで考えてきた思考を自然に整理することになります。自分の頭の中ではつじつまが合うと思っていたことが、実際に相手に伝えようとしていると論理の飛躍に気がつく瞬間があります。それは思考を洗練させる上で大変良いトレーニングになります。また親しい同僚や友人との会話であれば、自分の考えで不可解な部分や足りない部分を指摘してもらえるので、さらに先の思考へと発展させることができ、良質なひらめきにつながります。

心身を健全に保つ

身体的な不調や精神的なストレスにさらされている状況ではなかなか良いひらめきは生まれません。例えば、1日の中でもしっかり睡眠をとった後の朝が心身ともに回復した状態であり、ちょっとしたひらめきが多く、調子が良いなと感じることがあるかと思います。

逆に、くたくたに疲れた夜にはなかなか生産的な活動を実現するのが難しく、つい非生産的なことに時間を費やしてしまった経験が誰でもあるのではないでしょうか。忙しい現代社会では常に心身を健全に保つことが難しいとされます。まずは規則正しい食事と睡眠を心がけることでずいぶん思考がクリアになることを実感できます。

モーニングルーチンと言って、朝に一定の習慣を続けることが良いと推奨されています。まさに朝の習慣を自分のライフワークに合った形で実践することができれば、心身の健全を保ちやすくなり、ひらめきが溢れた毎日を過ごすことができます。私も朝の時間をとても大切にしている一人で、朝起きてから仕事を開始するまで毎日同じパターンで行動しています。このような習慣により、どんな状況でも心身を整え、ひらめきのチャンスを最大化にしようと努めております。

4. さいごに

今回は私の研究者としての経験を中心に書かせていただきました。

ひらめきは研究者に限らず、多くの職種の方にとって必要なことだと思います。また何よりひらめきを生むことで日常に彩りが加えられ、幸せの指標の一つになると思います。皆さんの生活に多くのひらめきが訪れることを願っております。

学生のころに読んで感銘を受けた本を紹介します。

科学の方法、ポアンカレ

また私は睡眠を見直すことで脳のパフォーマンスの向上を実感しました。
こちらの本では、睡眠時間を十分に確保できない方でも実践できる具体的な方法を紹介しています。

濃縮睡眠

今回は以上になります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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