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【最近読んだ建築本】50・60年代カンボジアのフレンチモダン建築 New Khmer Architecture

新クメール建築

プノンペンを初めて訪れた時に強いインパクトがあったのは、ガイドブックにあるような王宮や虐殺博物館ではなく、まさかここで出会うとは思わなかったフレンチモダン建築でした。

ベトナムにもフレンチモダン建築はありましたが、既に取り壊されているものが多かったです。プノンペンはフレンチモダン建築の宝庫でした。

建築学科の学生時代に教科書で学び、図書館の資料集で素敵だなあと眺めていたフレンチモダン建築が、普通に(というか、どちらかというと雑に扱われて)トゥクトゥクから見えては消えていくことが印象的でした。

Building Cambodia: "New Khmer Architecture" は、世界大戦後のカンボジア独立(1953)からポルポト政権直前(1970)までの、プノンペンのモダン建築の写真と図面の資料集です。

カンボジアは非常に印象的なアンコール遺跡で知られており、それは400平方キロメートルの古代クメール文明を力を表しています。一方で、1953年にカンボジアが独立した後の、国際基準で建てられたユニークで本格的なモダン建築はあまり知られていません。
Cambodia is renowned for one of the most impressive Wrold Heritage sites; the Angkor complex of 400 square kilometres that illustrates the prowess of ancient Khmer civilisation. What Cambodia also has, and which has been little recognized, is a unique and authentic heritage of modern buildings of an internationally high standard, built after independence in 1953.

バサック・リバー・フロント(ホワイトビルディング)

この本は一度、プノンペンのボパナセンターで読みましたが、このバサック・リバー・フロントのプロジェクトを再度読みたいと思っていました。シェムリアップにもこの本があり感謝です。

バサック・リバー・フロントプロジェクトは、(第二次世界大戦後にフランス留学した)カンボジア人建築家、フランス人建築家、そしてロシア人建築家から成るグループによる大規模な首都の都市計画でした。

私が2015年に初めてプノンペンを訪れた時には、そのプロジェクトで唯一残っていた建物はホワイトビルディングであり、見るも無惨な姿になっていました。
ポルポト時代にプノンペンから人がいなくなった後、政権交代でホワイトビルディングは元の住人と違う人が住み着き、無法地帯になったとのことです。一方でアーティストや医者などの様々な職業の人が住んでいたという話もあり、香港の旧九龍城のようだなと思っていました。

ホワイトビルディングの取り壊しをテーマにしたこの映画もリアリティありました。(実際に現場で撮影していて、ドキュメンタリーの側面もあります)

ヴァン・モリヴァン以外のモダニズム建築家

Lu Ban Hap
1931年コンポンチャム生まれ
1949年にパリに渡航しEcole Nationale des Arts et Metiersに留学する予定が入試で失敗してしまう。同期でパリに留学していたヴァン・モリヴァンの強い勧めで専攻を建築に変え、Ecole Speciale d'Architectureに入学した。

その結果、カンボジア人留学生住宅に住むことになり、その住宅は後にクメールルージュ幹部が政治思想を話し合う場となった。

プノンペンに戻ると政府より都市計画を命ぜられ、バサックリバーフロントを始め、プノンペンの主要な建築物を設計した。

代表作
オルセイマーケット
オリンピックマーケット
チェンラシアター
カンボジアーナホテル

New Khmer Architecture | P36 Lu Ban Hap

日本のトヨタ財団の支援で研究・出版された本でした

この本、よく読むと日本のトヨタ財団の支援で出版された本でした。カンボジアに住んでいると、インフラから教育まで様々な分野で日本の支援が入っていると感心します。残念なニュースも多い中、このような発見は嬉しいものです。

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