Cocco 強く儚い者たち
私の子ども時代は、荒んでいた。
ほぼ別居状態の両親、別に仲良くない兄、喧嘩も起こらない殺伐とした空気。
飛び抜けて不幸でもなかったけど、どう考えても幸せとは言い難い家庭だった。
好きな音楽も人並みにあるが、音楽が私を救ってくれることはなかった。
そこにただ好きな曲がある、というだけ。
恋とか友情とか、何を歌っている歌でもその価値は変わらなかった。
そんな時に、テレビでCoccoが歌っているのを初めて見た。
月並みな言い方だけど、稲妻に撃ち抜かれたような衝撃だった。
私が知っているどんな人よりも歌が上手くて、今この人の歌を聞かなきゃと思った。
気づいたらテレビに齧りついていた。
私がその頃見ていた人間も、綺麗なところばかりじゃなかったから、
人間って結局そんなもんだよ、と歌ってくれて、そうか、と妙に納得できた。
自分の中に黒い感情があっても、押し殺して生きていたあの時に、この歌を歌ってくれる人がいて、私はとても救われたのだと思う。
これは多分、一生の思い出の曲。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?