【詩】隠れ湯の燕
名門大学建つ通りには
鴉みたいに真っ黒な服の若い女
女の手を引き先を歩く男
その覚束なさに重ねる自分
周りの評価で己を縛る
棘だらけのハリネズミ
プライドの奥にあるのは恐怖
傷つけられた過去よりも
傷つけた過去の重みが後ろめたい
発車する電車のひとつが遅れるくらい
どうとでもなるものを
線路上尊い生命が消えようと
スマホからは目が離せない
駅前ビルの看板には
架空の夢物語と高速鉄道
便利ばかり果てなく求め
自ら壊す脳細胞
自身を失くし
自信を奪い生きてきた
それでも幸せ欲する愚かな我欲
堂々めぐりの末に
路地裏銭湯に逃げ込めば
曇った鏡に写る胸元には
信じる勇気求めた燕
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