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物質

部屋ができた。が、わたしの全財産はスーツケースひとつである。布団を置いたがあまりにも殺風景で、廃材で何か作ろうかなと考える。

今から10年くらい前、わたしは物を拾うことと、盗難との違いが分からなかった。はじめてひとりで住んだ場所の備品は、殆どそういう形で手に入れた。道端で、大きいマンションのゴミ捨て場で、ときには屋上や空き家で。資源回収の日は特に楽しみで、早起きして近所で本や漫画を漁って読んだ。忘れもしない、幸福な火曜日。こうして書いていて思うけど自分は何かがおかしい。

そんなことをするのは人間じゃない、と父はいった。そうかもしれない。だが、人間と人間じゃないものの境界はいったいどこにある?
(ラディゲ「肉体の悪魔」)

その話で突然思い出した文章書いておく


今週末、職場で知り合ったおばちゃんの家を片しに行く。出てきた不要なものは、欲しければなんでもくれるという。その日、わたしはありがとうございます、とたくさん言って別れた。夕方に、「あなたのおかげで、ずっとやろうと思っていた片付けにやっと踏み出せる。ありがとう✨」とメールが来た。すごいなぁと本気で思った。こういう大人を尊敬する。

今なら分かる。全ては物々交換なのだ。それはお金でも、人柄やコミュニケーション能力でも、何だって良いのだが、大人ならどういう方法であれ、自分の力でものを買わなければならない。それを自立と呼ぶのだろう。


【余談】
この曲にかれこれ一週間脳内ハックされてる。


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