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【ゴーゴリ「死せる魂」ちょっと書評】

堅い眠り…
あまり気がまわるほうでもないといった幸福者たちだけを訪れる、あの爽快な眠りであった。

ゴーゴリ「死せる魂」

noteにいると、このような眠りなど得たことのないような、この先も得ることがないような、頭が回り、繊細で、生きづらそうな人が、たくさんいるようにみえる。だけども現実世界では一向に出会わない。一体そういうひとたちはどこで生きているのだろうか。じつに不可解である。

ゴーゴリ「死せる魂」を読んだ。訳は工藤精一郎。
小さな都市に現れた、謎の紳士チチコフ。彼は社交の場に顔を出し、あっという間に名声と人気を得る。
彼は地主貴族の土地を廻っては、「死人の戸籍を買えないか」と持ちかける。意見は分かれる。肩を持つ人、眉をひそめる人。良くも悪くも街は彼の話題で持ち切り状態。いったい何が、起こっているのか。
危惧したチチコフは馬車を走らせ逃げ出すが、その先は…第二部なのである。

そしてその第二部の原稿は、制作に4年間を費やしたにも関わらず、ゴーゴリ本人が暖炉で燃やしてしまう。

そのころから彼は目に見えない敵に追いまわされるように、ロシアじゅうの流浪の旅に出かけ、どこに行っても安息を見出すことができず、モスクワにもどり、白昼に幽霊を見るにいたり、神に贖罪を乞うために一週間の断食と祈祷の後、ある夜突然狂乱状態に陥り、激しく泣きながら、四年間の努力と苦悩の結実である『死せる魂』第二部の原稿を火中へ投じ、そのまま虚脱状態に陥り、その数日後に四四歳の生涯を終えた。一八五二年二月二一日のことであった。

ゴーゴリ「死せる魂」作品解説


天才は放浪するものである。ゴーゴリはこの昨品(第一部)をイタリアで執筆したようだ。
たとえばネルヴァルや太宰治といった、頭の中をどうにかしたくて逃げ回るように放浪をする作家は、抜きんでて偉大な作品を残す印象がある。いかにも、本人たちは幸せではなかったように見えるが。ゴーゴリの、「狂人日記」は実体験なのかもしれない。まあ、神のみぞ知る。

ロシア文学は、難しくなんかない。めちゃめちゃ面白いのだ。

【余談】
カフカ全集をKindleで拾った。めちゃめちゃ嬉しい。ちょっとずつ読んでいる。

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