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ラヴィッツァ(Ravizza dal 1871):ガレリア近く、老舗洋裁店併設のバール

友人をミラノ案内していると決まって言われる言葉がある。

「町の人がおしゃれでびっくりした。」

確かに、人それぞれである。

また、たまたまモンテナポレオーネ通りなどのミラノの中でも一番のお洒落スポットを案内していたために、きちっとした身なりの人を次々と見かけたせいかもしれない。

それでも、ミラノで働く人は、高いブランド物というよりは、「きちんとしたもの」を着ている印象を受ける。

中央駅、ブレラ地区、ガリバルディ駅、サン・バビラ駅付近は、男性も女性もビシッとした格好で決めたビジネスマン・ウーマンが多い。

特にミラノの年配の方々は、男女ともにとても洗練されている。

膝上のスカート(でも下品ではない)にストッキングを履き街を闊歩するおばあちゃん、帽子を深めに被りバールで新聞を読みふけるおじいちゃんなど、それぞれの雰囲気に見合ったものを身につけているように思われる。

このように、ファストファッションの逆を行くお店として、スーツなどの洋服を仕立てる店「サルトリア」(sartoria)が街にはある。

そんな「サルトリア」の中でも一風変わったラヴィッザ(Ravizza)、この老舗仕立て店に併設するバールを今回は紹介したい。


有名な揚げピザ屋ルイーニやガレリア、ドゥオーモ近くでありながら、このラヴィッザが店を構える通りは、サン・バビラ広場にも続いているせいか、観光客とビジネスマン、両方で賑わっている。

サルトリア・ラヴィッザは、1871年に、もともと銃などの狩猟用品の販売を意図したアンジェロ・ベロッティ(Angelo Belotti)によって創業された。 

ガリバルディとヴィットーリオ・エマヌエーレ2世によって、イタリアが統一されたのが1961年、そしてその十年後の1971年、ローマに首都が移されたその年に、ラヴィッツァは誕生したわけである。

1910年、カルロ・ラヴィッツァ(Carlo Ravizza)が会社を引き継ぎ、今も使われている犬がモチーフのブランドロゴを採用、ミラノに3つの店舗をオープンさせた。

その後、何度か店は移転されたが、1954年には、今のホエプリ通り(Via Hoepli)の店舗がオープンした。


カルロは、息子のフィリッポに経営の座を譲り、1964年、ラヴィッツァは株式会社になった。

軍需用品や狩猟用品を製造し、顧客のニーズに応えていたラヴィッツァであったが、1970年代に入ると、その需要が少なくなり、経営も落ち込んだ。

経営見直しの時期を経て、ラヴィッツァは世界に誇れる品質の狩猟用品やスポーツ用品も作り続けた結果、特にオーストリア、ドイツ、英国、アイルランドといった他のヨーロッパ諸国にも市場を広げていくことになる。



さらに時流を読んだラヴィッツァは、狩猟用品や軍需用品だけではなく、スーツなども対象にした仕立て業も展開するようになり、エレガントで伝統的でありながらも、実用的な商品を生み出していくことになる。

ラヴィッツァはそれだけでは終わらなかった。

ミラノのコーヒー会社オットリーナ(Ottolina)とコラボレーションし、店内にバールを入れたのであった。

1階とアーケードテラスにバールスペース、2階と1階の一部分がショップと工房という造り。

筆者が訪れたのは昼時であったが、店内は、外のテラスもバールのカウンターも、せわしなくランチをとるあるいは食後のコーヒーを飲むビジネスマンたちでいっぱいであった。


またこちらは外のショーウィンドウ。

昼間に撮影したため、反射して見にくいが、ディスプレイはとても洗練されている。

大人の男の遊び心をくすぐるようなデザインばかり。

小物も魅力的である。


バールのメニューはこちら。

エスプレッソはカウンター席で1ユーロととてもリーズナブル。


ショーケースにはフルーツを使ったケーキなどのお菓子の他、パニーニなども並んでいる。

イタリアで久々に見たカフェラテ2ユーロ。

カプチーノはどこのバールでもあるが、カフェラテはあまりミラノでは目にしない(言えば作ってくれると思うが)。

受け継ぎ残すべきものもある一方で、柔軟に変えなければならないものもある。

ラヴィッツァというサルトリアとバールは、まさにそれを体現した場であった。



参考:「Vol. 6 イタリア:ラヴィッツァ(RAVIZZA)/ コーヒービジネス最前線」『全日本コーヒー協会』(2014年8月15日付記事)

Ravizza (ラヴィッザ)

住所:Via Ulrico Hoepli, 3, 20121, Milano, Italy 

営業時間:9:00-19:30(月曜から土曜まで)

公式ホームページ:ravizza1871.com

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