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音楽の街・国立市「洋菓子・喫茶の白十字」: 映画『おおかみこどもの雨と雪』に登場するレトロな喫茶店

中央線沿いの駅である「国立」。

筆者は東京でよく使う駅であるため、よく「国立ってどこ?」と聞かれると、「国分寺と立川の間!」と答えるようにしている。

そんな国立は、関東大震災(1923)以降に国立に移転した一橋大学(旧・東京商科大学)や、国立音楽大学付属中学・高等学校(国立音楽大学は、1978年まで国立にあったが現在は立川にある)、桐朋中学校・高等学校、都立国立高等学校などがある学園都市でもある。

一橋大学の国立移転に伴い、都市計画が進められた国立。

国立駅前の大学通りには、見事な桜並木で有名であり、周辺には、コンビニやチェーン店もあるものの、比較的老舗の店が残っている印象を受ける。

今回紹介する喫茶店・白十字もその一つである。

現在は、フランスで修行をした二代目・山井和恒氏がパティシエを務める。

1955年に創業した白十字は、細田守監督の映画『おおかみこどもの雨と雪』(2012)に登場したことでも有名である。

本作の冒頭部において、主人公の花と彼(おおかみおとこ)は、一橋大学らしき大学で出会ったという設定になっており、また彼らが白十字前で待ち合わせする様子が作中で描かれている。

細田守監督の映画『時をかける少女』(2006)にも吉祥寺のパティスリー・アテスウェイが登場するなど、映画に登場したカフェ・ケーキ屋さんとなると、俄然お店に訪れるのも楽しくなる。

白十字では、映画をモチーフにした雨と雪のクッキー(税込155円)が販売中である。

他、昔の三角屋根の駅舎が描かれたマドレーヌなど、レトロなパッケージデザインや、

店頭に並ぶ色鮮やかな食品サンプルも、人工的でありながら、美味しそうに見えるから不思議。

喫茶メニューも比較的リーズナブルな上、音楽の街・国立を意識した「ノクターン」「メヌエット」、「カンタービレ」、「ピアノショコラ」という名前のケーキやショコラも見逃せない。

また、「桜サブレ」や「国立物語」、「学園ポテト」など、国立市をモチーフにした焼き菓子は、お土産にうってつけである。

白十字のケーキはケーキのサイズのわりには値段も300円台からと手頃、その上種類も多い。

席数はなんと100席、常に地元の人で賑わっている。

大学の友人からは、

「白十字は、比較的年齢層が高いお客さんやマダムが行くお店だから」

とあまり行かないという意見を聞くが、実は白十字、全席フリーWiFiが完備されている。

ひんしゅくを買わない程度にではあるが、電子機器を片手にゆっくり過ごすことができる店でもある。

また、月に1回、店内には、歌の好きな人たちが集まり、ケーキ・飲み物付きの歌の会が開かれる他、不定期でサロンコンサートが開かれている。

音楽のイベントは、人が集まらなければ続けることができない。

それを続けることができるというのは、白十字が、街の人々に愛されている証拠であろう。

オレンジハーブティーと雨と雪クッキー。

オリジナルデザインの伝票もレトロ、思わず写真に納めてしまった。

2019年8月現在、国立駅周辺では再開発が進み、駅周辺では取り壊し予定のため閉店となった店もある。

赤い三角屋根の国立駅は、長い間街のシンボルであったが、2006年に解体。

現在は、東京駅丸の内駅舎のように、1926年に建てられた国立駅舎を復元する工事が進められている。


一度は壊したものを、街のシンボルとして復元するという試み。

利便性の追求のために最新の技術を駆使して、新しいものを作ることができたのに、あえて古いものを再現する計画には、街の歴史を後世に伝えようとする人々の思いが反映されている。

最近、大学の友人の間では、ついに国立の大学通りにもタピオカ屋さんができたことが話題になっていたが、白十字は、古き良き国立を伝える名店として、これからも大学通りに変わらず営業していてほしい、と願いたくなるような喫茶店である。



洋菓子・喫茶の白十字

住所:東京都国立市中 1-9-43
営業時間:9:00-21:00(年中無休)
※日曜・祝日は20:00閉店
※ラストオーダーは20:00(日曜日は19:00)

公式ホームページ:kunitachihakujuji.g3.xrea.com/index.html

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