naoya

常に理屈よりも感覚を大切に、直感に従って生きていたい。 もう一度世界中を旅してみたい。

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最近の記事

No.9 熱いどんぶり

 朝の光が窓から差し込み、笛のような鳥のさえずりに耳を傾けながらゆっくり目覚めた。窓の外に目を向けると、朝霧に包まれたマンゴーの木がぼんやり見える。アユタヤの日中は、じっとしていても汗ばむほどだが、この朝の涼しさはタオルケットを引き寄せる。  ピンクのタイトスカートを身にまとい、学校への出発を控えた先生は、住み込み従業員「Tee」と共に庭と廊下の掃除に勤しんでいる。 「good moning ナオヤー!」 と、朝から彼女は元気いっぱいだ。コーヒーは自分で淹れるようにと言い残

    • No.8 ゆか

       トゥクトゥクの賑やかなエンジン音が静かになり、庭にはまた穏やかな空気が戻る。ツアーに行っていた日本人女性が戻ってきたようだ。私は、彼女と挨拶を交わしテラスで遺跡の美しさと神秘について語り合う。トゥクトゥク運転手のカメさんは、彼女の話に合わせて頷き、自分のアユタヤツアーの魅力をアピールする。  私は、PSゲストハウスでラオスの疲れを癒していた。彼女は、まっすぐ私を見て言った。 「まだ、自己紹介をしてなかったね。私、ゆかです。」  その時、ロードレーサー用自転車を押して入ってく

      • No.7 幻

         朝から続く雨は、ラオスの大地を神秘的なヴェールで包み込んだ。ルアンパバーンへの道は、霧にかかる山々を超え、時には現実を忘れさせるような幻想的な風景が広がる。8時間の乗合バスは、山賊の恐れがあるため、夜が明ける前に出発する。運転手は急ぎ足で、細くぬかるんだ険しい山道を猛スピードで進む。乗客たちは、一丸となり、何度も泥に足を取られた車を、全身泥だらけにしながら、崖からの転落を防いだ。命懸けの旅路だった。  そして暗い小雨の中で、私が目にした集落の人々は、まるで幻のようだった。そ

        • No.6 メコンの記憶

           メコン川の水面は、太陽の光を受けて金色に輝く。大きな川の流れは時に穏やかで、時に激しく、小さな船の上で、私の思考を濁った川の如く遠くへと連れ去っていった。  居心地のよかったアユタヤを出て、北上した所にあるチェンマイで1泊、チェンコーン国境から船頭と2人乗りの木造船でラオス側フェイサイに。広いメコン川をこんな小さな船で国境を渡るとは思わなかった。  水田が広がり、水牛がゆったりと草を食む姿、それらはすべてが平和の象徴のようだ。    私が目指すセンコックは、深い緑に覆われ

        No.9 熱いどんぶり

          No.5 改札バサミ

           太陽は既に高く昇り、暑さが肌を焼く。雨季は涼しいと聞いていたが、ここアユタヤは京都と同じ盆地にあり、バンコクよりも暑いというのは驚きだ。  バンコクのファランポーン駅から、ゆっくりと木造の列車が重そうにディーゼルエンジンを動かし北へ向かう。乗車券を15B (45円)で手に入れた。長い車両の向こうから車掌さんが切符を切りに来る光景は、私が子供の頃、日本でも見られた風景。タイの広大な平野を眺めながら、物売りから買ったガパオライスをビールで流し込む。開け放たれら窓からの風が心地

          No.5 改札バサミ

          No.4 古都の息吹

           仕事を忘れ、世界が広がる開放感に包まれる。陽は高く、暑さは空港を降り立った時とは比べ物にならない。  昨夜は、空港からホテルに直行した後、ビールを飲んで寝てしまった。  私は、旅人の聖地「カオサンロード」を散策した。この約300mの通りは、レストラン、お土産物屋、服屋、コンビニなどが軒を連ね、道路には車がやっと通れるくらいの道を空けて屋台が、ひしめき合う。  屋台は、さまざまでタトゥーやドレットヘアを施してくれる店まであった。芋虫やサソリを揚げた店もある。覗き込んでいると

          No.4 古都の息吹

          No.3 交差点

           旅の疲れを癒やす聖地、カオサンロード。眠らない、ネオンとその喧騒。私はやっとのことで、静かな部屋で一息つくことができた。窓はないが、その分、外の騒音から解放される。シャワーを浴び、清潔なベッドに身を投げた。部屋は簡素だ。しかし、私には余計なものはいらない。そして、腹が空き、パスポートと財布だけをポケットに入れ、また喧騒の世界へ。  カオサンは、まだ活気に満ちている。屋台からは、様々な香辛料の香りが漂う。辛いもの、甘いもの、熱々のもの。食べ物の宝庫だ。酒やタバコを片手に、人

          No.3 交差点

          No.2 微笑みの国タイランド

           ドンムアン空港は、深夜1時にもかかわらず、熱風が吹き、湿気の多い空気が身体にまとわりついてくる。  私は、全くの無計画でこの地に降り立った。「カオサンロードへ行けばいい」と言った友人の言葉を信じて。ホテルの予約を一つもしていない旅の始まりだ。  夜中でもそこならホテルを見つけられるだろうし、レストランも開いていると聞いていた。空港の外に出ると、リムジンタクシーの受付が目に入る。高いが、流しのタクシーに乗る勇気はなかった。簡素なカウンターに、つたない英語で「カオサンロードまで

          No.2 微笑みの国タイランド

          No.1 ノストラダムスの予言

          No.1 ノストラダムスの予言  ノストラダムスの世紀末予言に注目が集まっていた。人々は息を呑んでその展開を見守っていたことだろう。  しかし、実際には「Y2K問題」として知られていた別の問題が存在していた。  全世界のコンピューター日付表示が1999年から2000年に変わる際に、誤作動が起こる可能性がある。カウントが「0」表示になり、銀行や政府のコンピューターさらには各国のミサイルや飛行機の電子機器に異常が生じ、ミサイルが発射されたり、飛行機が各地で墜落するのではと、一部の

          No.1 ノストラダムスの予言