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美しい手になりたいの

 手に浮き上がる血管が年齢を感じさせる。そんな時は手を高くあげると目立たなくなり、何やらホッとする。手に溜まっていた血が下がるせいなのだろう。病院のオムツ交換の時使うビニール手袋はMサイズ。Sだと長さも幅も足りなくて破れてしまう。どちらかと言うとコンプレックス。昔、「はなさんの手はグローブみたいだな」と会社のおじさんに言われたことがある。「幸せをたくさん掴むためですよ!」と、今なら言えるんだけど。

 高橋大輔さんが村元哉中さんと組んで、三年前からフィギュアスケートのアイスダンスをされている。去年十二月、日本選手権のアイスダンスのフリーダンスに出場し、初優勝を飾った。たまたまその動画を見たのだけど、高橋選手に何とも言えない色気を感じた。もちろん、村元哉中さんも素敵である。二人の息がピッタリで、アイスダンスを観て、身体がゾクゾクしたのだ。個人的に、高橋選手の表情や、手や指先の繊細な動きがとても好きだ。

 あの動き、少しでも真似できれば、美しい手に近づけるのかな。何かの本で読んだのだけど、カーテンを開け閉めするとき、グーでカーテンを握るのは上品とは言えないらしい。人差し指は軽く伸ばして、中指は半分曲げて、残りの指でギュとカーテンを引くと美しく見えるらしい。手に表情をつけるのだ。一人の時はもちろんグーでバーッと開けるけど、人前でプチ上品な女性を演じるのも、楽しいものである。

 しかしその前に、中指にできた血豆が治らないと、どうしようもないのだ。玄関の鉄のドアに指を挟んだのが十一月。爪の根元だけに鎮座していた血豆が、今では爪の半分まで伸びてきている。爪の成長と共に指から抜けでるまで、あとどれくらいかかるかな?それまでは、マニキュアもできないし、どんなに手にしなを作ってみたとて「はなさん、その指どうしたの?真っ黒じゃない(笑)」と言われるのがオチ。

 最近お気に入りのドラマ『僕の姉ちゃん』で、主人公の姉(黒木華)が弟に言うセリフがある。ざっと内容はこんな感じだ。

姉)会社のボウリング大会で、憧れの人との恋が終わったわ。
弟)ボウリングがものすごく下手だったとか?性格が悪かったとか?
姉)そんなんじゃない。ストライク出した時ハイタッチするじゃない。
  その手が触れた瞬間、何も感じなかったんだよね。

 あーなんかわかるわ。恋に憧れを、いや妄想を抱いていた時期、感覚だけで未来を選んでた、若くて鈍感で、純粋だった遠ーいむかし。恋を探知するセンサーだった手が、今では生活を支える担い手になっている。

 はたらけど はたらけど なおわが生活 楽にならざり じっと手を見る
と、石川啄木さんは言っている。でも、私はそんな思いで手を見たりしない。毎日働きづめの我が手よ、いつもありがとう。去年、たくさん残業をしたから、明日のお給料日は期待できそうだよ。じっと手を見て…万歳!

 


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