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【聴講】スタインウェイとともに〜スタインウェイの音の秘密を探る(交詢社にあるスタインウェイ ピアノについて)

ご覧いただき、ありがとうございます!
ピアニストの吉村直美です♪

“卓越したピアノ会社と評されて”いるスタインウェイ

 現在、世界各地の著名なコンサートホールにはほとんど常設されているスタインウェイ・ピアノ

 そのスタインウェイについて、先日、スタインウェイ・ジャパン創設に携わられた鈴木達也元代表取締役社長より、

 『スタインウェイとともに〜スタインウェイの音の秘密を探る(交詢社にあるスタインウェイ ピアノについて)』

と題された講話を拝聴する会に、参加させていただきました。

講話が行われた会場です。

 会場は、福澤諭吉により中心に設立された『交詢社』でした。日本最古の実業家社交クラブとも称される場です。

 今回は、『交詢社』社員の方による主催で、ご縁をいただき参加させていただきました。

 このたびは、スタインウェイ誕生から変遷、そして、ピアノの発展における秘話をお聞きでき、さらには、『交詢社』に常設されているスタインウェイ・グランドピアノピアノの見学も、特別に行われました。

交詢社大食堂に設置された時のスタインウェイ・グランドピアノ

 ピアニストとしても、毎日接するピアノに込められた込められた労力や歴史を少しでも知ることは、ピアノの音色に対する価値を深められる機会になるかと感じましたので、『備忘録』として、綴らせていただくこととしました。

 今回は、許可いただき、掲載させていただいております。

 初めは、2つの記事に分けることも考えましたが、鈴木氏が1回の講話で全てお話されたことを踏まえ、1つの記事にまとめさせていただきました。

 長めの『備忘録』となりますので、ご興味あられる方は、目次からお読みいただけますと幸いです。

1. 登壇者について

 登壇された鈴木達也元代表取締役社長(現在:スタインウェイ・ジャパン最高顧問)とは、2008年にスタインウェイ社を通じてお目にかかり、その後も、コンサート出演等で、大変お世話になっております。

 実は、2021年に、私自身も、交詢社での同じ催し物で登壇させていただきましたが、その時に主催された方が、鈴木氏のご出身大学でご後輩にあたることも判り、今回のご登壇のきっかけともなられたようです。

鈴木達也氏の略歴


【プロフィール】はこちらです。
鈴木達也(85歳※2023年7月現在)1938年東京生まれる。
・1962年慶応義塾大学経済学部卒業、同年日本楽器製造株式会社(現ヤマハ株式会社)入社。
・1968年米国ロサンゼルス米国現地法人ヤマハ・インターナショナル・コーポレーションへ出向。
・1978年同取締役副社長。1984年帰国、ヤマハ株式会社秘書室長。
・1986年(財)ヤマハ音楽振興会専務理事。
・1989年ヤマハ株式会社取締役、米国本社ヤマハ・コーポレーション・オブ・アメリカへ出向、同代表取締役社長。
・1992年帰国、ヤマハ株式会社顧問。
・1997年スタインウェイ・ジャパン株式会社代表取締役社長。
・2008年より会長、相談役、スタインウェイ会会長
・2010年よりスタインウェイ会最高顧問、現在に至る。
・2012年サポートミュージックソサィエティ理事長
・2016年「一般社団法人サポートミュージックソサィエティ」理事長、現在に至る。学校法人上野学園監事、国際ピアノデュオ協会常任理事。他

2. スタインウェイ誕生

キッチンピアノ

ドイツ・ニーダーザクセン州のゼーセンで、家具製作家であったハインリヒ・エンゲルハルト・シュタインヴェークにより、スタインウェイ・ピアノ第一号が誕生しました。

 第一号ピアノが、台所🟰キッチンで製作されたことから、『キッチンピアノ』というあだ名が付けられたそうです!

 『キッチンピアノ』の名称は、なんとなく耳にしたことがありましたが、このお話を聞くまでは、キッチン用のピアノ・・・かと、わたくし勘違いをしておりました💦

 ドイツのマイスター制度を経た作られたであろう家具製作家による家具は、相当な拘りが込められた芸術作品でもあったかと想像しますが、その芸術魂がスタインウェイピアノ誕生に生かされたのではないかと・・お話をお聞きしながら、想像は膨らみました🎹

スタインウェイの名前について

 第一号スタインウェイピアノを製作したハインリヒ・エンゲルハルト・シュタインヴェークは、1850年に妻と9人の子供のうち8人と共にドイツからアメリカ合衆国へ移住します。

 それまでは、ドイツで受け継いだ姓『シュタインヴェーク(Steinweg)』ブランドの名でピアノを作っていたそうです。

 アメリカ合衆国へ移住後、『スタインウェイ(Steinway)』に改名したそうですが、元の名前から比べると、一部はドイツ語が残り、そしてもう一部は英語に変えられた名称になっています。

 ドイツ語での元の姓、Steinweg は、『Stein(石)』➕『Weg(道)』ですので、もし、移住先の使用言語である英語に合わせるなら、『Stone(石)』➕『Way(道)』と、なるところですね。

では、何故わざわざ『Stein(石)』ドイツ語🇩🇪➕『Way(道)』英語🇺🇸としたのでしょう??

 登壇者の鈴木氏は、名称についての謎が気になり、スタインウェイ&サンズ社に入社されて以来、アメリカ🇺🇸ニューヨークやドイツ🇩🇪ハンブルクの方々にお尋ねされたそうなのですが、「分らない」という回答しか得られなかったでそうです。

 そこで!!

 なんと、お話の途中に、私宛まで質問を頂きまして、ドイツ生活が長かったという理由でお聞きいただき、恐縮だったのですが、、

 私自身も、「回答をお聞きしたことは、ありません💦」というのが、正直なお答えです😅

 ただ、私一個人の想像とはなりますが、ドイツ語で『Stein』は、礎(いしずえ)という意味もあることから、ドイツで(継承された礎の元に)製作した楽器という想いを残したかった・・ということなのかな・・と今になって思います。

 鈴木氏は、ハインリヒ・エンゲルハルト・シュタインヴェーク(後のヘンリースタインウェイ)は、ドイツ魂を残したかった🇩🇪のではないかと、仰ってらっしゃいます。

その想いについては、『ピーター鈴木の横丁ばなし』シリーズの動画の中でもお話されています


3. スタインウェイの設計

スタインウェイ社による特許は、なんと、140以上もあるそうです!
重ねられてきた改良のうち、重要な特許をお話くださいました。

①交差弦

低音の弦をより長くできる『交差弦』により、低音により深みを持たせた音色の演奏が可能となったのだそうです。

②デュープレックス・スケール

演奏中、打鍵されない弦の部分を共鳴させる装置です。釘が一切使われていないことで、一音づつクリアな音色を響かせることが可能です。

 演奏者としての一個人の感想ですが、この装置によって、ピアノの中に小宇宙が鳴り響いているような感覚となり、特に、小さな音量の音色のバリエーションが、豊かにされている感じがいたします。

 以前、いつもお世話になっている調律師さんからも、教えていただきました。

③一体成形リム

"カエデなどの硬く緻密な木材を使用し、曲げ練り製法により一体として製造されたアウターリムとインナーリム"

ウィキペディア(Wikipedia)より

 その木材は、厳選され後、スタインウェイ工場に運び込まれ、念入りに保管されることで、曲げ練りにも耐え得るだけの性質を備えるのだそうです。

 以前、スタインウェイ・ハンブルク工場を見学したとき、『どのように木材保管するかで、その後すべての質を決める』と、案内くださったスタインウェイ・ハンブルクの方が力を込めて教えてくれたことを、思い出しました!

4. ニューヨーク製とハンブルク製

スタインウェイピアノの生産工場は、現在、アメリカ合衆国・ニューヨーク(1853年〜)、そして、ドイツ・ハンブルク(1880年〜)の2箇所にありますが、歴史を経て、作り上げられる音色も変化してきたとのことです。

ニューヨーク・スタインウェイ

【音色】
ニューヨークでスタインウェイピアノが作られ始めた頃、メインの演奏会場といえば、カーネギーホールのように1000人以上の観客を収容する大ホール内で、音色を隅々まで響かせる必要性があったため、音色は煌びやかに鳴る方向性にあったようです。

【製造】
ハンブルク製に比べると自由に製造されているとのことで、硬化剤やより柔らかいハンマーフェルトが使用されているでそうです。

【外観】
外観の特徴としては、鍵盤両端の部分が直角になっていて、ペダルの部分に金属を装飾に使用していることです。

ハンブルク・スタインウェイ

【音色】
音色一つ一つが鮮明でありつつ、柔みを帯びているのが特徴的です。ドイツで製造され始めた時は、最大300席ほどの大きさの会場に響き得るサロン的なコンサートホールが主流だったことが、このような音色が特徴つけられるきっかけともなったようです。

【製造】
ニューヨークに比べると、より堅めのハンマーフェルトを使い、音の調整は針を刺す方法で行うそうです。

【外観】
鍵盤両端の部分は、角が丸くなっているのが特徴です。

現在では、日本に入るスタインウェイピアノのほとんどがハンブルク製だそうです。ちなみに、私も、我が家ではハンブルク製を弾いております🎹

5. 交詢社にあるスタインウェイ ピアノ

ピアノについての詳細は、ご覧の通りです!

 この日は、エントランスに置かれた状態で、内部や外装について、鈴木氏が以上のお話を踏まえ、大変分かりやすくご説明くださいました。


記念に撮っていただきました!

6. おわりに

ピアニストとして思うこと

 初めて、ピアノの構造について触れたのは、スタインウェイ・ハンブルク工場を見学させていただいた時でした。

はじめてスタインウェイ・ハンブルク工場に行ったのは、2008年でした。
当時のスタインウェイ&サンズ・ハンブルクのアーティスト・マネージメントの方と。

 大事に保管されている木の状態から、ひとつひとつの過程を見させていただき、それぞれに多くの職人さんが心を込めて携わってらっしゃる様子を拝見し、3時間の見学を経て最後に完成された1台のピアノを目にした時は、奇跡の瞬間でした。

 その日、自宅に戻った後、毎日弾くピアノが楽器に成るまでに、どれだけの年月と愛情が注がれたかを思い返すと、簡単に触れない思いでした。

 今回は、鈴木達也元スタインウェイ・ジャパン代表取締役社長より、さらにスタインウェイの歴史と秘話の一部についてもお聞きでき、これまでスタイウェイピアノに注ぎ込まれた労力に、ただひたすら畏敬の念しかありません。

『ピーター鈴木の横丁ばなし』🎥

 今回、登壇された鈴木氏は、月刊音楽雑誌ショパン連載の『ピーター鈴木の横丁ばなし』動画シリーズに登場されており、他の貴重なお話についてお聞きいただけます!

 同シリーズに、はじめてスタインウェイの話題が公開されるタイミングで、お声がけいただき、お話の合間と演奏出演をさせていただいております。

 2021年にスタートされた『ピーター鈴木の横丁ばなし』は、今も継続中で、鈴木氏ご本人によりますと来年の話題も決まっているでそうです!

 音楽界の巨匠と接してこられた数々の実エピソードを、是非、鈴木氏のお声でお聞きいただければと思います。

ピーター鈴木の横丁ばなし 第19回【ヘンリーZ.スタインウェイⅠ】
1997年、スタインウェイ・ジャパン発足!

ピーター鈴木の横丁ばなし 第20回【ヘンリーZ.スタインウェイⅡ】
1997年スタインウェイ・ジャパン発足!! 

ピーター鈴木の横丁ばなし 第21回【ヘンリーZ.スタインウェイⅢ】
ヘンリー氏からのウィットに富んだ手紙

音色に触れる

 ピアノの素晴らしさを体験する最終的な手段は、やはり『音色』を聴くことにあるかと思います。演奏家が、音色の美しさを演奏に表現することができてこそ、先代の労力も報われるのかもしれません。

 ピアノの良さ最大限に生かして美しく響かせる奏方については、また、別の機会に、綴らさせていただきたいと思います🎹

木材の厳選と保管に始まり、改良を重ねられた装置や部品が使われているのは、楽器自体を美しく響かせることにあります。

 弾き手としては、やはり楽器そのものが響かせる生の音でないと体感できない感動があるとも感じます。

 現在のピアノを弾けることを感謝しながら、これからも、美しい音色を響かせる追及と勉強を可能な限り続けたいと、あらためて願います。

番外編

素敵な花束をいただきました💐

この日、以前からコンサートを聴きに来てくださったり、いつも応援くださっている方々より、受賞のお祝いにと、サプライズで花束をいただきました😭

当日の集合写真です
我が家のピアノの上に置かせていただきました

ありがとうございました😭✨


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