展覧会レポ:東京都写真美術館「本橋成一とロベール・ドアノー」
【約1,800文字、写真約10枚】
東京都写真美術館(以下、TOP)で「本橋成一とロベール・ドアノー」を鑑賞しました。その感想を書きます。
結論から言うと、生まれた時代、場所の違うドアノーと本橋成一の作品をTOPなりの解釈で展示することで、写真家が共通してもつ”本能”のようなものを感じ取ることができました。凡人では気付かないキュレーションによって新しい発見が得られるため、TOPにはこのシリーズを続けてほしいです。
▶︎ 「本橋成一とロベール・ドアノー」
TOPには、日本の写真家と時代や地域の異なる写真家の2人を並列してキュレーションするシリーズがあります。今回の展覧会もそれで、ドアノー(フランス)と本橋成一の共通点を見出しながら作品を交互に展示しています。
どのように作品を”魅せるか”、キュレーションによって鑑賞する人の感想は変わります。一般的な展覧会では、一人のアーティストの作品を展示するのか、オムニバス形式で多くのアーティストの作品を展示するのかの2種類あると思います(私は前者が好み)。
この展覧会は、それら二つの間に属する形として、二人のアーティストの作品を展示しています。過ごした時代、地域の違う二人の作品を比較すると、写真家に共通する”本能”のようなものが見えてきて面白いです。
活躍した時代は、ざっくりドアノーは1930年から(1994年没)、本橋氏は1965年から(現在82歳)。両者ともに市井の人をメインに撮っています。炭鉱、サーカス、市場、労働者、子供、貧困。その中で生きることに前向き、生き生きしたものを写すところが共通していると思いました。
ドアノーの作品は「パリ市庁舎前のキス」のようにキリッとした白黒写真の中に、ほんのりユーモアを混ぜている印象があります。鑑賞者に何か訴えるメッセージを感じる写真が多いです(私もそういう写真を撮りたい)。
本橋氏のことはこの展覧会で初めて知りました。印象に残った作品は、上野駅の特急列車の時刻を差し替える駅員、上野駅の構内で酒盛りをする人達、小人プロレスなど(小人プロレスの存在を初めて知りました。今も実在するみたい)。彼の写真からは、当時の勢いや楽しさが迸っていました。2022年の作品である「奈良美智のアトリエ」も展示されていました。
運営面では、全体的にドアノーと本橋氏の対比や共通点がわかりやすいように構成さており、伝えたいメッセージがクリアに読み取れました。
具体的には3点が気になりました。1)キャプションは、ドアノーが赤、本橋氏が緑で統一され見やすい(本橋氏のベラルーシ作品は、ぱっと見ドアノーの作品にも見えました)、2)5章中3章だけは壁が真っ赤で工夫が見られた(なぜ3章だけ赤なんだろう。手っ取り早くメリハリがつくから?)、3)ベンチは合計2ヶ所ほしい(ベンチは2章に1ヶ所あるだけだった)。
▶︎ まとめ
違う時代と土地で過ごしたドアノーと本橋成一が残した作品を見ると、写真家が表現したい共通する”思い”が何なのか、知ることができました。TOPでは、是非このシリーズを続けてほしいです。
▶︎ 今日の美術館飯
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