展覧会レビュー:深瀬昌久 1961-1991 レトロスペクティブ@東京都写真美術館
東京都写真美術館(写美)で開催中の写真家・深瀬昌久の展覧会に行ってきました。その感想を書きます。
結論から言うと、私はもともと深瀬昌久を知らなかったため、深瀬昌久の活躍期ごとの代表作を見ることができ、その時代の有名な写真家と共通する部分も感じることができて勉強になりました。
深瀬昌久については今回の展覧会で初めて知りました。
この企画展では全部で8章から成っていて、そのほとんどが写美の所蔵というから驚き。今まで何度か写美のコレクション展にも足を運んでいたが、深瀬昌久の名前については記憶に残っていなかった。
中でも「2章 洋子」「4章 烏(鴉)」「8章 ブクブク」が記憶に残った。
「2章 洋子」:妻の洋子を約10年間撮ったもの。1974年にMoMAで開催された展覧会でも展示されたという深瀬昌久の代表作らしい。この展覧会のメインビジュアルにも採用されている。洋子のいろんな表情や当時のおしゃれなファッションが興味深い。なかなか撮ろうと思っても撮れないアンニュイな表現がさすが。見ている側も楽しいような切ないような気持ちになれた。
「4章 烏(鴉)」:ただカラスを撮ったもの。第2回伊奈信男賞を受賞しているくらい世の中み認められた作品らしい。良いとは思ったが、そこまでの良さはわからず。「アレ・ブレ・ボケ」を多用し、森山大道感がある。ちょうどこの時期に活躍した白黒写真家は似た感性があったのかなと思う。この辺りから深瀬昌久の芸風が変わってきて、前衛的な表現に傾きつつある。
「8章 ブクブク」:1991年、深瀬が自宅の湯船の中に潜った自分の姿を約1か月間写し続けたもの。一部ショッキングな作品も含まれ、チャレンジング、攻撃的であり、工藤哲巳のような印象も受けた。芸風がここまでくると「彼は一体何をしたいんだ?何を伝えたいんだ?」とインスピレーションよりも疑問の方が大きくなってくる。それが芸術家のなせる技か?!
まとめると、私は深瀬昌久を知らなかったため、深瀬昌久の代表作をわかりやすい章ごとに知ることができたこと、その時代に活躍していた写真家とリンクする部分も感じることができて勉強になりました。
また、写美にしては合計8章に分けるのは多く、それぞれの部屋が狭い。椅子は最後の部屋にしかありませんでした。章を減らして、その他の部屋にもどこか椅子があって少し休憩できる部屋があると助かると感じました。
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