千住で天下を取りにいく
成瀬に会ってみたい。
「かつてなく、最高の主人公、現る」という帯のキャッチコピー通りだと思った。フィクションだから、もちろんいるわけもないのだけど。
本屋大賞「成瀬は天下を取りにいく」を読み終わった。大津に行ってみたいとすら思った。主人公の成瀬はものすごく真っ当な人である。それなのに本書の中でも、読者にとっても成瀬が一見、異質な存在に感じられる。そして同時に読み進めていくと最終的にとても魅力的に見えることが、この青春ストーリーの醍醐味。一方、痛快なエンターテイメントであるとともに、成瀬を通して、自分たちがいかに日常的に歪んで生きているかということを突きつけられる。真っ当に生きている成瀬が異質に見えるというのが、その代表的な表れだ。あんまりいうとネタバレになるので、これ以上は控えるが、もし全人類の20%が成瀬だったら、世界は生きやすくなるんじゃないかと思ってしまう。成瀬シリーズ2冊は、令和の聖書にするといい。
続編の「成瀬は信じた道をいく」を読み終えて本を閉じた。面白いなぁ、僕もしっかり成瀬中毒になってしまったのだが、最後にちょっとだけ気になった部分があり、僕はモヤモヤし始めてしまった。もしさらなる続編があるなら是非とも読みたいような、これ以上は読みたくないような気分になる。これは青春の物語なのだ。大人になった成瀬がどう生きていくのか? それは知らない方がいいような気もしてしまう。ただし、今は成瀬ロス…。
成瀬は自分が楽しむことを諦めない。僕も可能な限りそうしたいと思う。ということで、今日は北千住で気になっている店に飯を食べにいくことにした。
北千住も気がつくとお店が色々変わっている。「マタドール」という牛骨ラーメンの姉妹店で「味噌味専門マタドール」というお店があった場所が、いつの間にか「柳麺マタドール」に変わり、さらに今は「らぁ麺屋のさかいさん」となっていた。普段なら、この新しいラーメン屋さんが気になって仕方ないところなのだが、実はその隣の店が今日の目的だ。
グルテン制限をし始めたことで、ラーメン屋以外の気になるお店に目が行くようになった。なにかをはじめてみるって、やっぱりいいね。面白いことが増えていく気がする。
で、この隣のお店には、いつも外に待ち人がいるのだ。店名は「ここのつ」、定食屋のようだ。なんでこんなに並んでるんだろう? とメニューを見てみると、究極のレバにら炒め定食と書かれていた。究極! 大きく出ましたね。そんなの食べないわけにはいかないでしょ。ただ、先日は待ち人が10名くらいいた上に、僕に時間がなかったので、そのうちここに来ようと心に決めていた。それが本日。
今日は待てるだけの時間がある。10人くらい並んでいても全然大丈夫! 確実に今日のために用意してきたのだから。
先客は、2人組が2組だけ。良かった。多分すぐに入れるぞ。入り口前にあるウエイティングボードに名前を書き入れて、待つことにする。
思った通り5分も待たずに、入ることができた。店内はこじんまりとしているが、2人がけのテーブル席が6つくらいある。4人客は2人がけをくっつけて4人席にしているようだ。あと、一人用の小さなテーブルがあり、僕はそこに案内された。
テーブルの上のメニューを眺める。
究極のレバにら炒め定食。Wってのもある。つーか、鶏のから揚げともつ煮丼ってのも気になるなぁ。うーん、悩ましい。じゃあ、やっぱりこれか、究極のレバにら半分と鶏のから揚げ3個。よし、これでいい気がする。と店員さんに注文。
めっちゃワクワクすっぞ。
店内は、女性一人のお客さんもいる。確かに入りやすいよね。反対にWの他に単品でからあげ頼んでいる男性2人組なんかもいる。単品もあるんだね。
から揚げは単品で1個から注文できるんだ。あれ? 自家製タルタルソースもある。オムレツも気になるな。なるほど、次回はちょっとこっちのメニューと合わせて頼んでみよう。いや、それより、夜にこれらをつまみにハイボールってのも良さそうだ。こんないい店知らなかったなんて! 一杯呑んじゃうか? 昼だけど…。と、うずうずしていたら、お盆が到着した。
究極のレバにら半分と鶏のから揚げ3個 ここのつ@北千住
素敵! 半分だからレバにらちょっと少なかったかな? 秒で食べてしまいそうだ。ともあれ、まずはレバにらからいただこう。
うまーい! なるほどね。ここのレバは鶏レバなのだった。臭みもなくとろりとなめらか! 確かに究極という名に恥じない味だ。余計なものはなく、レバとにらだけの炒めもの。にらも旨いし、炒めているタレ?がとても旨い。絶品と言える。これは旨い。Wで頼めば良かった。
味噌汁はキャベツの味噌汁。なんか家庭の味って感じの優しさ。
で、から揚げもいってみる。
抜群に旨くて笑ってしまった。このから揚げ、めちゃくちゃ旨いぞ。
僕は以前大分県中津市に1ヶ月ほど撮影で滞在し、市内中の中津から揚げを食べまくった。それで中津から揚げが大好きなのだけど、それとは違い、ニンニクも生姜味もないのだけど、下味がしっかり肉自身に染み込んでいて、抜群な旨さ。白飯止まらない。
ここは鶏専門店だったのか。もつ煮も鶏もつ煮だったし。これだけ旨い鶏料理を揃えられるなら、もっと高級なお店にもできたろうにと思ったところで、成瀬の言葉が頭によぎる。
「何になるか、ではなく何をやるか」
そうか。定食屋でも高級店でもそれはどちらでも良いのだ。旨い鶏料理を食べて喜んでもらうというのが大事なのだね。
一人の女性客はもつ煮丼を食べている。やっぱり旨そうだ。別の女性客は納豆丼を食べている。納豆も旨いのか? 食べてみたいメニューがいっぱいある。レバにらもからあげも抜群に旨かった。この店、最近発見した中で最強かもしれない。
すぐ近いうちに、定食屋の百名店にも名前を連ねることになる気がする。
「かつてなく最高の定食屋、北千住に現る」
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