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【映画感想131】オールド・ジョイ/ケリー・ライカート(2006)

あらすじ

妊娠中の妻と暮らすマークとつかみどころのない生き方をしている旧友カート。
久しぶりに再開した2人はキャンプに出かけるが、なかなか会話は弾まない。


感想(ネタバレあり)

先日見た「リバー・オブ・グラス」が気になって次作(短編除く)も見て見ました。2人で山奥のキャンプに行く静かな映画。

前作同様、登場人物同士の心理描写が良かったです。

まず冒頭の主人公と妊娠中の奧さんの会話の解像度が高くて、旧友からキャンプのお誘いがかかってきた夫が「妻に聞いてみるよ」と電話口で言うのを聞いて「私に許可を求めないで」と言う。

自分の頭で判断して行くのをやめて欲しい、
私のせいで行けないって言うのか、
行動を制限するのが後ろめたい、

と言う(妊娠中なのでよりナーバスであろう)複雑な心情が混じったリアルな一言だった気がします。

で、夫は夫で「君も行く?」とか言ってみちゃう。妊婦が山登れるわけがないのに。
ここ、とりあえずフォロー入れてみた感がありありで、ああ、奧さんここも絶対いやなんだろうな……と思わず共感してしまいました。笑

そして映画の本題である旧友との再会について、
このお互い悪意はないのになんだか噛み合わない会話もよかったです。
ステータスや環境が違うとどうしてもチューニングは合わなくなって行くもので、
定期的に会えるならまだしも久しぶりだと不協和音はどんどん大きくなって行く。

まともに会話できるのはこれが最後ではないかという少しの寂しさと恐さ。
ある程度の年齢になるとじわじわ感じる名状しがたい感情を、とても丁寧に描写しようとしているように感じました。

温泉パートで「五感で同じものをシェアして繋がりあう各個と言う救済があるので後味は良かったです。まだつなぎ直せる余地はあるのだと。

次は妻とも温泉に行けたらいいですね。

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