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ないものねだり

健全で前向きで明るい彼は同じ顔を持ちながらあまりに遠い存在だった。
沢山の人に見上げられ愛される彼とは裏腹に、僕は人と目が合うことすら少ない。
僕から見えるのは、綺麗な月や星に目を奪われているか俯きながら歩いている姿だ。
僕は僕を見てほしかった。
何もない僕を。
僕は青空が嫌いだった。


冷静で思慮深く穏やかな彼は同じ顔を持ちながらあまりに遠い存在だった。
その傍らには月が寄り添って、沢山の星々が彼を囲む。
時々寝過ごした月に寄りかかられるだけの俺とは大違いだった。
そばにいてくれる誰かが現れることをずっと待っていた。
俺には誰もいなかったから。
俺は夜空が羨ましかった。

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炭酸ソーダの雨様企画 土曜日の電球『空』。

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