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信じられる仲間と、お茶の未来を創る

一坪茶園のお茶を作ってくれているお茶農家さんである、掛川城南茶業組合の理事 松本さん(一坪茶園のビジョンムービーにも登場)と代表理事 角皆さんにお茶づくりやお茶の未来についてお話を聞きました!

個人農家の限界

茶園を運営を、家族単位の個人経営でしていくことは年々困難になってきています。それというのも、茶園運営のための機械以外に、生葉を荒茶(お茶の半製品)にしていく(製茶)ための機械は、ものすごい高価なもので、個人農家だけで購入・メンテナンス・維持していくことは経済的負担がとても大きいのです。

工場内の荒茶製造機械

また、お茶の芽は春に一斉に芽がでてきて、摘採の良いタイミングを待っていてはくれません。そうした中で、お茶の芽が適度に伸びた、最適なタイミング(茶期)で摘む必要があります。茶期は、年間3~4回(4月、6月、8月、10月)の各2週間程度。朝から夜通し製茶機械を動かし続け、生葉を荒茶に製造していくために、夜も寝られない位忙しく、猫の手も借りたいというのが現状です。

こうした中で、2~3人の家族単位の個人農家として、毎年限られた収穫時期である茶期を切り抜けることは、親世代の体力が落ちてくることも加味すると困難になってきます。そうした中で、平成3年松本さんのお父様が中心となって、共同で茶園を管理・運営し、それらの生葉を製茶する為の工場を共同で運営する、農事組合法人として、掛川城南茶業組合を設立、今に至ります。メンバーは、現在10名で、茶園の茶葉管理においては、しっかりと組合内で施肥などのルールを設け、収穫された茶葉にはしっかりと格付けを行い、各農家メンバーがもつ茶園の品質レベルに差ができないような仕組みとしています。

収穫時期(茶期)に茶園で摘採する様子

信じられる仲間とお茶を作る

掛川城南茶業組合では、製茶される段階で、各メンバーの茶園事に、別々にラインで製造するのではなく、信頼があるからこそ、あえてブレンドをして製造しています。各農家が好き勝手に管理をするのではなく、信じられる仲間と作るお茶を最高のものにすべく、チームで議論を重ね決めたルールに基づき、品質を担保し続けています。それは、品評会で「農林水産大臣賞」をとったことからも、品質の高さは証明されています。

角皆さんはいいました。
「こうして信じられる仲間と作ったものが、評価されることが、お茶人生の中で、一番嬉しい。茶園運営・管理、製茶工程で不安なことがあっても。お互いの存在に励まされて、(茶園の運営を)やれていることに改めて今(聞かれて)気づきました。」

掛川城南茶業組合のメンバー

「茶農家を、辞めたい」と思ったこともある

「ここ数十年で、茶価が市場で下落し続け茶業は苦しい。頑張っても茶価がつかないし、茶農家を辞められるものなら、辞めたいと思ったことあります。」と松本さんは言いました。

22年1月放映  news everyしずおかでの放映場面(松本さん・角皆さん)

どうして、茶業がこうした状況に置かれたのかをお二人に質問してみました。

そうすると、角皆さんは「やっぱり、時代の流れの中での飲み方など、求められているものは違ってくると思うんです。お茶であれ、農作物いろいろなものがそうだと思うんだけども、そういう中で何が求められているのか、勉強不足だった部分もあるだろう。」と。

そして、脇はこう伝えました。
飲み手の人の顔が見えない業界構造してますよね、茶商がいるから、見えない部分もあるのかもしれない。また、茶業界では、急須を使う飲み方が当たり前だけど、”水だけあれば(急須やお湯を沸かす必要がない)誰でも失敗せずに、美味しいお茶が作れる”ティーバッグのコンセプトは、21年12月脇が渡米した時に、強い可能性を感じました。だから、もっと飲み手が潜在的に求めていることを知ってそれに応えていきたい!世界に、私たちのお茶は通用するんだ!私たちが、こういう(手軽なのに、美味しいお茶が飲めるという)カルチャーを創るんだ!って、私たち一坪茶園だけじゃなくて、茶農家さんと一緒にやりとげたいなと思っています。改めて、お二人にとって”お茶”って何ですか?」

受け継がれたバトンの意味

松本さんは、「考えたことない。」と。

角皆さんは、「改めて聞かれると、、、何か凄く大事なものですよ。それこそ、親父の代から引き継いでやってきて、その前の世代から受け継がれて、そして、今(先ほど述べた)農林水産大臣賞を取らせてもらえたのも、前の世代がいてくれたからこそ、今があるじゃないかと思う。農家っていうのはそこの自分の土地に思い入れがあったり、小さいときから親の仕事を手伝ったりする中で、やっぱり思い入れが強くなったと思う。

松本さんの娘さんが茶園作業をお手伝い

掛川市、ひいては、静岡県でお茶を作ることの意味について、脇から質問をしました。

松本さん「考えたことない。とにかく自分もお茶を作って目の前のことをやるだけ。静岡をどうにかしたい、掛川をどうしたい、とかいうよりも、目の前のことを一生懸命にやるだけ。」

角皆さん「掛川や静岡といえば、”お茶”をみんな想い浮かべてくれますよね。これは、とてもすごいありがたいことだし、これこそさっき言ったように、自分らがそれを今やった訳じゃなくて、前の世代(それ以前も含めて)からお茶を作り続けた結果、みんなからこうした想起をいただけていると思う。だからこそ、次の世代にも続けてもらえるような形にしたい、本当はね。この茶園の景色であったり、茶園自体もそうだし、こういうものを(次の世代が)続けられたら、本当は嬉しいというか、ありがたいっていうか、いいのかなとも思います。」

角皆さんのお子さんは、2022年春に東京の大学へ進学、ただ茶業を継ぐかは、本人の意思に委ね、自らお子さんに薦めるようなことはしないそうです。

お茶の仕事は、やっぱり楽しい

松本さんは、「一般の製造工場のラインに入る形じゃなくて、こうして茶園でのびのび、開放的な感じが性に合っているのかな。大変だけど、体を動かすのが好きかな。」と。お茶工場は、一般的な製造工場のように、年中製造ラインに入るような形ではなくて、生葉を摘採しその生葉を荒茶にする茶期に主に製造ラインに入る形なのです。だから茶農家さんは、茶園での作業が殆どなのです。お茶を栽培しながら、そのお茶を半製品に加工していくメーカーの役割も果たしている、茶農家さんの特異性を改めて感じました。

このお話の後、お二人の所属する掛川城南茶業組合のお茶が入った一坪茶園のお茶で乾杯しました。

一坪茶園のお茶で乾杯

急須もいらない、お湯も沸かさなくていい、この手軽なお茶が、お茶のスタンダードになる未来を創ろうと3人で乾杯をしました!何事も、ファーストエントリーで挑戦した人しか見えない世界があると信じています。

このお茶を飲んで、お二人から、お茶の焙煎が強めだとコメントをいただきました。そうなのです!一坪茶園のお茶は、海外の人もすっきりと飲みやすいのように、本来弱火で焙煎するべし、といわれている上質なお茶に果敢に強い焙煎をしているのです。上質なお茶に特徴的なリッチな旨味が苦手だと思う人は多く、一坪茶園では、その旨味に焙煎をしっかりとすることで、芳醇な香りとライトな旨味を楽しんでいただけるような設計をしているのです。また、お茶の液色がキレイであることも、大切にしています。

”キレイなみどり色”

透明のボトルで、お茶の液色を見せるのは、凄く大事だと思いました。海外で、透明のボトルで緑茶を入れていると、綺麗だから!と写真を撮らせてほしいと言われたことがありました。

透明ボトルに入った綺麗なみどり色の水色

ただ、お茶の液色を簡単にキレイ見せる為にお茶に抹茶をいれるケースが多いのですが、私たち一坪茶園は、「お茶(形状のある)だけで味をデザインし、変化をつける」ポリシーにしています。抹茶を入れるといくらでも綺麗な色にはなるのですが、あえてお茶の本来の味わいを、誰でも手軽に楽しんでもらうために、手元で抽出してもらうことを大切にしているからです。

透明ボトルにティーバッグを「ポン」と入れるだけの新たなお茶カルチャー

手元でお茶を手軽にいられることは、飲み手のお茶を淹れる(お湯の温度管理や、抽出時間管理など)スキルを選ばないので、世界的に飲み方として、受け入れられる可能性が高いと考えています。

飲み手の顔が見えたらもっと楽しい!

どこの誰が、自分のお茶を飲んでるかなんて、全然わからない」と松本さん。

アメリカでの店頭販売の状況やsnow peak主催の雪峰祭展開の写真を見せながら、お二人とお話をしていく中で、お客さんの顔が見えることがいかに茶農家さんにとって、大事なのかということを身をもって体感することができました。どんな人が、喜んで飲んでくれているのか?こういう情報を伝えていける、インタラクティブな関係を農家さんと飲み手の間に創っていきたい。それが一坪茶園のタグラインである「作り手と飲み手の想いをつなぎ、お茶の未来を紡いでいく」が意味するところなのです。

作り手と飲み手のコミュニケーション(Makuakeリターンツアーの1コマ)

コロナ禍で世界中がパンデミックになる中、美味しいだけではなくて、体に良いものが世界中で求められています。日本茶は、そうした世界中のニーズに合った飲み物だと思います。今、まさに世界に出て行って、より多くの人たちに飲んでもらう。それが、お茶の未来だけでなくて、世界中の人々の心身の健やかさにも繋がると信じています。水だけであれば、世界中どこでも、お茶本来の味わいが、手軽に楽しめる世界を農家さんと飲み手のみなさんと一緒に創っていければと思っています。

(一坪茶園代表 脇奈津子)


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