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作る人と飲む人の想いを紡ぎ、日本茶の未来を創る

こんにちは!一坪茶園代表の脇奈津子です。一坪茶園とは、私がサントリーで働きながら、農家さんが作った美味しい日本茶を、手軽に飲めるスタイルをグローバルに提供するべく、2019年に複業で立ち上げた組織であり、ブランド名です。名前の由来は、一坪の茶園を会員さんにシェアしてもらい、季節のお茶とお便りを送っていた立上げ当初のサービス名。現在、私を含めた8名のメンバーで運営しています。

なぜ、サラリーマンをしながら一坪茶園を起業

をしたのか。その背景には、私がサントリーで緑茶飲料ブランドの原料茶葉の調達責任者を務めていた時代と幼少期における2つの原体験があります。調達責任者からマーケティング部署へ異動し、日々の業務で多忙を極める中、プロジェクトに一旦一区切りがついたタイミングでこれら2つの原体験に突き動かされるように起業しました。

まず、1つ目です。私がペットボトルの原料茶葉の調達責任者だった当初、出会った農家さん達が口々に「自分の子供には茶業を継がせたくない」と言っていました。これを聞く度に私は悲しい気持ちになり、涙がこみ上げてきて、慌てて農家さんの茶園の横にあるトイレに駆け込んでいました。こんなことは何度もありました。美味しいお茶を作っていることに誇りを持てないでいる現実。こうした状況をどうにかしたい。ならば、それに気づいた人がやるしかない!と思ったからです。

農家娘
一坪茶園のお茶を作ってくれている松本さんの娘さんと茶園

もう一つは、私は祖父母と幼少期から日本茶を飲む家庭に育っており、農家さんが作るおいしいこのお茶がペットボトルのお茶という形以外にこの世の中から、なくなっていく未来に耐えられないと強く思ったからです。いつも祖父母の家のリビングで、お茶をお茶菓子を食べ、のんびりテレビをみながら、過ごした時間を今でも鮮明に思いだします。その時には、わからなかったのですが、今から思い返すと祖父母の愛情に包まれ、幸せな贅沢過ぎる時間でした。コーヒーが飲めない私にとって、大人になってからもお茶は祖父母を思い出す特別な存在です。食事しならが飲んだり、食後のフルーツと一緒に飲んだり、仕事の合間に飲んだり、と生活の一部としてなくてはならないものとなっていきました。

私と祖母が祖父母宅のリビングでお菓子とお茶とを楽しんでいる姿

ペットボトルは、何より便利で手軽です。ただ、ペットボトルは製品にする充填段階で熱による殺菌工程があり、とうていペットボトルのお茶では表現しきれない味わいがあることを誰よりも業務経験上、理解していた私は、ペットボトルでは表現しきれない日本茶本来の味わいをより多くの人に届けることができれば、より多くの人たちに日本茶の素晴らしさに改めて気づいてもらえるのではないかと、調達責任者時代から考え続けてきたからです。

この2つの原体験に突き動かされるようにして、私は、一坪茶園を立ち上げました。

私たちの想いを動画で表現

しておりますので、是非ご覧いただけると嬉しいです。

志を共にする仲間との出会い

まず、調達責任者時代の仕入れ先の中で一番お茶づくりのセンスの良かった大手商社系列のお茶工場勤務経験がある、永井(茶葉設計技師)を誘いました。その1年後、やりたいことがあるのにできない中、悩むよりも先に行動、ということで、SNSで「私と一緒に日本茶の未来を創りませんか?(ビジョンだけはあります!)」と仲間を募り、そのビジョンに共感し、参画してくれたメンバーが現れました。

そのメンバーこそが、今一緒に仕事をしている仲間たちです。そもそもは、経営大学院(私は、卒業していません)時代に知り合ったり、一坪茶園の初期サービスの会員さんだったり、と様々です。私にとって、既にある組織・コミュニティでの共感という形ではなく、純粋な共感からつながる初めての体験でした。オンラインで「はじめまして」、1年後にようやくオフラインで「はじめまして(関係性はかなり深くなっているのですが)」といった感じでした。

純粋な共感で繋がっているから、オンラインなどで物理的距離は離れていても、日々強い絆を感じる。そう、私は、一人じゃない、私には仲間がいる。だからこそ、日々仲間の存在に励まされて、突き進むエネルギーをもらっています。

茶業の現実

まず、農家さん達が口々に、子供に茶業を継がせたくないと言う背景を説明させてください。国内の日本茶生産量を見ていきます。以下グラフは生産量のグラフです。このグラフの緑色の部分は急須で飲まれるような高単価で上質な日本茶です。

青色の部分はペットボトルで使われる比較的廉価な日本茶です。前者は急激な減少傾向で、20年後には消滅、後者は横ばいで維持される予測となっています。

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国内茶葉の生産量(実績と今後の予測)

今お話しした急須で飲まれる上質な日本茶は、農家さんの生産量の約39%程度を占めます。このお茶は市場で取引される単価が高く、農家の収入の約7割を占めます。しかし、その上質な日本茶はライフスタイルの変化などで急須で飲まれる機会が減ったことで需要が減り続け、市場取引単価は年々下落し続け、農家はもはや茶業を存続できなくなっているのが現実です。

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国内茶葉市場取引価格推移

こうした状況に陥ってしまったのは、作り手である農家さんとお茶を飲む人の顔がお互いに見えず分断されていたからこそ、起こってしまったと私たちは考えました。そこで、農家さんとお茶を飲む人、それぞれお互いの顔が見えるようにし、それぞれの想いを未来へつないでいきたいと私たちは考えました。

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一坪茶園の考えていること

水だけあればお茶が飲める世界を創るため、掛川から踏み出した一歩


私たちはご縁があり掛川市に本社を置き、私の東京の自宅を東京支社としています。掛川にご縁があったのは、スタートアップである私たちのビジョンとミッションに心から共感し応援をしてくれている、掛川最大手のお茶屋さんである、丸山製茶株式会社 の丸山社長の存在です。

もともと関係性はあったものの、スタートアップからの製造業務委託を柔軟な形で受けてくれるお茶屋さん等は間違いなく他に存在しません。私たちは、こうしたご縁のあった掛川産茶葉を100%使い、そして、本来ペットボトルでは使われず飲む機会が減っていっている上質な茶葉を作って、ひとりひとりの農家さんの顔を思い浮かべながら、茶葉の設計をしています。われわれ一坪茶園が設計したレシピに基づき、丸山製茶さんで、焙煎とブレンドをしていただいています。

こうしたご縁のある掛川の農家さん達、ひとりひとりの想いを知りたい。そして、その思いを私たちが心から受け止め、その受け止めたひとつひとつの想いを紡ぎ、飲み手の飲んだ時の顔を想像して、お茶の設計に落としこんでいく。こうしたひとりひとりの農家さん達の想いをブレンドしたお茶を、潜在的に求めている人たちの元へ届けるのが私達の使命だと考えています。

急須がなくても、美味しいお茶が飲める世界。私たちは、「誰でも失敗せず、水だけあれば、美味しくいれられるお茶」を日本茶の未来に対する「パスポート」と位置づけています。まずは、手軽に、美味しい、日本茶を飲んでもらえれば、お茶の未来の扉は必ず開くと、心から信じています。

世界で緑茶は、「健康食大全(医学博士:ウィリアム・リー)」の中にある通り、満塁ホームランという食材の位置づけであり、スーパーフードだと世界では称されています。こうした日本の緑茶を「手軽に、美味しく、マイボトルでサステナブルに」飲む。こんなスタイルを世界中に届ける。

こうして世界中に日本茶の需要を創造することで、日本茶が市場で適正価格で継続的に売買されるようなることで、茶農家さん達は、茶業を存続することができるようになります。

作り手である農家さんが飲み手を想い、お茶を作る。そして、飲み手が作り手を想い、お茶を飲む。そんな世界を作り手と飲み手のみなさんと一坪茶園で創っていきたいと考えています。

次回は、掛川の農家さん達とお話ししたことを初めて言語化して、書いてみようと思います!次につづきます。

(一坪茶園代表:脇奈津子)

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