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志が人を繋ぐ

今回は、一坪茶園のインターン生である石井くんがそのおじさんにあたるエコファーマーである服部さんを紹介してくれた経緯をお話ししたいと思います。これが何より、アメリカチームが求めていた最高の出会いであったことを含めて!

志が人を繋ぐ

1月下旬、一坪茶園のCFOを務めてくれている難波さんからいつもの通常の連絡手段であるメッセンジャーで連絡が入りました。医療系のスタートアップで一緒に働いていた石井くんと言う医学生が、一坪茶園に大変興味があるとの事で、一旦会ってみないかという内容でした。大変な光栄なことだと言うことでその後すぐに、難波さんと脇でミーティングを設定させてもらい、石井くんとお話をしました。石井くんは、一坪茶園への取り組みについて興味をもって熱心に聞いてくれました。よくよく話をしていると、実は石井くんの親戚のおじさんが、静岡で有機茶農家をされていると教えてくれました。

一坪茶園の全体ミーティングに参加している石井くん(左右)

その日話しきれなかったこともあり、翌週にまたミーティングの時間をもらいお話をしていく中で、インターン生として、日本でのECサイトの購買データ分析やSNS運用などをお手伝いしてもらえることとなりました。そうこうしている中、石井くんが一坪茶園の目指していることと親戚のおじさんが目指していることが共鳴しあえる可能性があると思ってくれたようで、一度会ってみないかと提案してくれました。そして、3月上旬のとある土曜日、服部さんにオンラインで初めてお会いする運びとなりました。

服部さんの第一印象は、とにかく尖った農家さん!でした。お茶は何より土作りである、だからこそ、一坪茶園のようにお茶を世界の人に飲んでもらうためには、源流である農家と膝を突き合わせて、茶園の土づくりを理解した上で、味づくりをしていくことが大事である、と力強くお話ししてくれました。溢れだす服部さんの農家さんとしてのエネルギーを真正面から受けることで、改めて一坪茶園としてどういった立ち位置からお茶と向き合うのかを改めて考える機会を頂けた気がします。

服部さん(ソーラーパネルでお茶に覆いをしている茶園にて)

茶業界のプレーヤー

ここで改めて、ご説明してお来たいと思います。日本茶のバリューチェーンは、作り手である農家さんと飲み手の消費者の間に、茶商が入り、その人たちが農家さんから(市場経由や相対取引で)お茶を買い付け、そのお茶を焙煎し、販売ルートに乗せる機能を担います。そのため、農家さんと飲み手の顔が直接見えることはなかなかありません。私たち一坪茶園は、農家さんと飲み手の顔が見えるようにしていきたい、という想いから、タグラインを「ととのう、つながる」としています。

一坪茶園は、脇と茶葉設計技師である永井が茶商である丸山製茶さんとタッグを組み、いろいろなお茶を丸山さんと関係が深い農家さん達から仕入れ、それぞれのお茶農家さんのお茶の味わいを最大限に引き出す焙煎・ブレンドをすることで、一坪茶園ならではの、水だけあれば誰でも美味しく入れられるお茶を作ってきました。

一般的なお茶のバリューチェーンと一坪茶園の比較

農家さんや地球に優しい栽培方法

ちょうどこの時期と並行して、アメリカチームが3月から始動。3月下旬から4月にかけてロサンゼルスとポートランドで家庭訪問やズームでのインタビューを繰り返し、さまざまな角度でリサーチを行っていきました。その中で、アメリカでは有機茶葉でないとターゲットの人々に価値を感じてもらえないと気付き始めていた時期でもありました。

アメリカのターゲットの人々ににとって、自分にとっても、農家さんにとっても、地球にとっても優しい作り方(栽培)をしていることが何よりも価値なのだということが見えてきたからです。ただ、有機茶農家と組むのは容易にできることではありません。

有機茶葉の生産量の統計

と言うのも、日本全体の茶葉生産量に対して、有機茶葉の生産率は6.1%(平成30年全国茶生産団体連合会・全国茶主産府県農協連連絡協議会データ参照)。一坪茶園がご縁があって本社を置く静岡県内に限っては、県の生産量に対して約4%(茶商へのヒアリングベース)しかありません。一坪茶園創業当時から多大なるサポートいただいている丸山製茶さんでは、もちろん有機茶葉の調達はしているものの、その数や種類(味わいのバリエーションにつながる品種の種類など)には限りがありました。

何より、お茶は有機転換するのに5年以上程度かかる為、5年前から有機茶葉の栽培に着手していない限り、現時点その数量を確保することもできません。そうした日本国内で数少ない有機農家でその中でも、アメリカ人の価値観に響くようなユニークなお茶作りをしている服部さんとの出会いは私たちにとってまさにセレンディピティーでした。

何がユニークかと言うと、茶園の上にソーラーパネルを設置し、周辺地域へ太陽光エネルギーを供給。またそのソーラーパネルは、夏の炎天下で茶園作業をする農家さんを熱射病から守り、また同時に茶園そのものが太陽により干上がるのを防いでくれるのです。

服部さんの茶園の上に設置されたソーラーパネル

品種植替えという中長期投資

そして3月下旬に服部さんから、品種の植え替え作業に来ないかとお誘いを頂きました。全国の約75%がやぶきたと言う品種(静岡県に限っては、県内90%がやぶきた)で、比較的お茶の味ががしっかりしている一方で、苦渋味が目立ちやすい品種です。こうしたやぶきたを様々な品種に植え変えていくのが服部さんの特徴です。これは5年後10年後を見据えた先行投資で、先を見据えにくい茶業界の流れとして、一線を画すやり方です。それを自分で体感したくて、最短で伺う事に決めて、朝4時起きでとある3月下旬の茶園に向かいました。

植え替え作業をした時の写真①
(左:脇、真ん中左:石井くん、右:五十嵐さん)

服部さんの茶園は、土作りを大事にしているからこそ、土が柔らかく、しっとりとしていて、お茶の苗(ポット)を一つ一つ、掘った穴に丁寧に植えていく作業を繰り返します。それが次行った時に大きくなっているのを見て、そのまた次行くときに更に大きくなっているのを見ることで、お茶に対する愛着が湧くことが想像できました。

植え替え作業をした時の写真② 
(左:石井くん、真ん中:五十嵐さん、右:脇)

その植え替え作業前に、服部さんの作るお茶を飲ませて頂きました。品種や冠せ(摘み採る前の茶葉に寒冷紗(かんれいしゃ)と呼ばれる布などを被せて、日光を遮り、茶葉の中のテアニンがカテキンに変化しにくくなり、テアニンが多くカテキンが少ない=旨味や甘みが強く、渋味や苦味が抑えられたお茶にしていく)による味わいの違いはもちろん、その栽培された土の栄養をしっかりと受けた、大地そのものの味わいを感じました。これは、一坪茶園が得意とする強い焙煎にも耐えうるしっかりとした茶葉だと感じ、また、有機茶葉は、味が物足りないことが多いのですが、服部さんの有機茶葉は、びっくりするほど味がしっかりとしていて、今でも感動したのを覚えています。改めて、アメリカで水だけあれば誰でも美味しくいられるお茶を一緒に開発させて頂きたいと強く思いました。

周波数が同じ人が共鳴、発するエネルギー

そして4月頭に、服部さんがプライベートブランドとして、お茶を作り卸している千葉県をメインに展開している自然派のスーパーマーケットで服部さんがお茶の実演販売をするとのことで、そこにお邪魔しました。そのスーパーマーケットの最寄り駅からしばらく歩いていくと、お店のあるアーケードに差し掛かったとたん、ほうじ茶を焙煎する香りが充満していて、一瞬でお茶のアロマに包まれました。こうした飲み手にとって、分かりやすいやり方で、お茶の良さを伝える大切さも改めて気づかせてもらいました。

茶園で話が絶えない二人(右:服部さん、左:脇)

この実演販売の合間に、抜け出してきてくださり、近くのカフェで服部さんとお茶ついて語り合いました。不思議とこうした波動が同じ人との会話をする時間というのは、心が潤い、また同時に、エネルギーに満ち溢れます。日本茶の未来を創る、という同じ志を持っている人同士が意見を交わすこそ、エネルギーが湧き起こると実感する時間でもあります。

いざ出陣

4月中旬、一坪茶園の茶葉設計技師である永井さんと一緒に服部さんの元へ。今後、アメリカのターゲットの人々に向けてどのようなお茶を作っていくのかを膝を突き合わせて議論し、それを作り上げていきたいと申し入れました。服部さんは既にヨーロッパを中心とする海外に大きな取引先を持っている中で、協働先にはみじんも困られていない中で、私たちのようなスタートアップとの取組みを快諾して下さり、取り組みがスタートしました。

茶葉の調達業務をしていた私と永井さんからすると、志を同じ、前向きな農家さんと取り組みをする事は容易ではありません。このような貴重なご縁をいただいたことに心から感謝をしています

服部さんの製茶工場を案内いただく
(左:永井さん、真ん中:村松さん、右:齋藤さん)

一方で、同じタイミングで、日本事業での茶葉の調達、一坪茶園の茶葉設計に基づき、お茶の焙煎とブレンドして下さっていた丸山社長には、改めて現状をしっかりと報告し、アメリカ展開、そこにおける有機茶葉の必要性などについてお話ししたところ、自分たちのサポートできる事はいくらでもやっていくが、有機茶葉など制約があるものについては、一坪茶園として今の選択がベストだろうと背中を押していただきました。創業当初から、おんぶに抱っこで、支え続けて下さっている丸山社長には、感謝しかありません。改めて、このタイミングでアメリカ事業においては丸山社長の手を離れていくこととなります。

22年1月放映された 「news everyしずおか」での
丸山社長と脇

急遽2週間前にさしこんだ撮影

アメリカ事業でのリサーチも終盤に差し掛かる4月中旬の定例会議でのこと、茶葉の摘採が始まったことを伝えているときに気づいてしまったのです。今しか撮影できない茶園の風景があることに。まさに立春から88日目の前後含んだ時期が、主に新茶が摘採される時期となり、ちょうど4月下旬は、新茶の摘採を開始する時期なのです。

まさに静岡では、一年の1番最初に摘採される一番茶は、通常4月中旬から下旬、被せ茶などは、4月下旬から5月上旬にかけて最盛期になります。1番最初に芽吹く新茶は透き通った黄緑色で、茶葉に含まれる成分も一番多いのです。このきれいな黄緑色は春にしか見ることができません。それを今後のアメリカ事業展開のウェブサイトやキービジュアルなどに使用する必要があり撮影をしなければならないことに気づいたのです。色々なことを同時並行で進めており、定例会議のタイミングで気づけて本当に良かったです。

定例MTGでのMichaelからのキービジュアル撮影
におけるディレクション風景

慌ててアメリカチームのマイケルに相談しキービジュアルのディレクションを依頼、いつもお願いするカメラマンの方々にご相談しオリエン。同時に、服部さんにも茶園での撮影の詳細をご相談。しかし、ゴールデンリークの前半は、雨の予報ばかりで、撮影予定していた候補日は何度か見送りとなり、前々日に撮影日を決定、綱渡り状態でした。結果、撮影は、ゴールデンウィークの真っ只中の5月3日と4日に無事に終えることができました。

当日朝は4時に起き、菊川入り。そこから夕方まで通しで撮影。翌日は、3時起きで朝日をとらえるために富士山と朝日と茶園が入るスポットでスタンバイし、朝日が昇るのを待ち、無事に快晴の元、撮影することができました。そこから夕方手前まで撮影。こんなハードなスケジュールに付き合ってくれるカメラマンさんには感謝しかありません!

朝日が昇り始めた茶園にて。いつも写真&動画を
撮影してくれる西田夫妻を脇が撮影。

チームの定例会議でリサーチの洞察・議論をする中で、アメリカでのターゲット層のお茶に対する印象、今後どのようなものであれば新たに買い続けたいと思ってくれるのか?など含めて話していると、日本人の感覚とは全く違うことがわかります。

いよいよ5月末、リサーチの洞察の結論をだし、それに基づき、ターゲットの課題設定とその解決方法、提供価値、ネーミング、味作りに突入していきます。私たち自身、未知の挑戦となりますので、気を引き締めて目の前のことを全力で頑張って参りたいと思います。

次回も、引き続きアメリカ事業の進捗についてお話ししたいと思います。
(一坪茶園代表 脇奈津子)


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