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アメリカ人にとっての「緑茶」とは?

私たちチームは、前々回のnoteの最後でお伝えていたように、アメリカ市場でのリサーチを3月から4月にかけて、米国人の思考や価値観ニーズを理解したいと考え、オレゴン州ポートランドとカリフォルニア州ロサンゼルスで調査を実施しました。今回はそこでのファインディングスを中心にお伝えしたいと思います!

この調査は、3つの問いを立てました。最初に、アジア系アメリカ人アメリカ人にとって今日の緑茶はどのようなメンタル(認知)モデルなのか?次に、アメリカの消費者は一坪茶園のお茶をどのように感じるのか、また商品のポジショニングにどのような示唆を与えているのか?最後に、一坪茶園のお茶ついての価値提案とその効果的な表現方法とは何か?です。

緑茶のメンタル(認知)モデル

今回は特に前者2つを中心にお話をしたいと思います。早速一つ目のメンタルモデルなのか?についてです。まず最初に、それぞれリサーチ参加者のご自宅に直接訪問し、対面で飲料の消費習慣、ライフスタイル、考え方、ニーズ、そして緑茶が現在どのような形で日常生活に溶け込んでいるかいないのか、もしくは将来的に溶け込んでいくのかについて洞察を進めていきました。そして、一坪茶園の(定番のお茶3種類が入った)プチギフト、その試飲の方法、試飲後の反応を各自が記録するための日記を、一人ひとりにお願いしました。参加者は、1週間かけてお茶を試飲し、その時思ったことや感じたことを日記に書き留めていってくれました。

その後、回答者一人一人と遠隔フォローアップのズームミーティングを実施し、一坪茶園のお茶の体験談を聞いていきました。また、新たなお茶の潜在的な価値提案をより深く理解するため、4つのコミュニケーションテーマ(わたしたちの仮説)の可能性について、そのイメージと言葉を評価してもらいました。

緑茶から連想されるイメージや感情を明らかにするために、写真を使ったカード並べ替えのアクティビティを行いました。まず、コーヒー、水、エナジードリンク、紅茶など、1日の中で最も好んで飲む飲み物を想像してもらいました。次に、その飲み物と「緑茶」(どんな形であれ、どんな銘柄であれ)を比較しました。そして、自分の好きな飲み物の意味と比較して、緑茶の意味を3~5枚のカードで、追ってその意味を言葉で表現してもらいました。

リサーチ参加者がカードを選ぶ様子

緑茶から連想される最も強く明確なものは、明らかに "健康 "でした。しかし、参加者は緑茶の健康効果について、すでに健康なときと、病気になったときの2つのタイプを想像しています。

前者のタイプは、プロアクティブ(先を見越した)、もしくは「ポジティブ」な健康ベネフィットと呼ぶことができます。これは、すでに完全に健康であっても享受できる健康増進の種類です。例えば、新陳代謝の促進、免疫力の強化、など、さまざまな効果を含みます。

後者のタイプの健康ベネフィットは薬や自然療法のようなものです。ここでは人々 は主に、消化不良や風邪などの特定の病気のオケージョンと緑茶を関連付けます。 例えば、緑茶は重い食べ物や脂肪分の多い食べ物の後の膨満感を和らげるのに役立つと考えられています。また、風邪をひいたときや熱を出したときにも、病状を和らげ、免疫反応を高めると言われています。既述したもうひとつのタイプのプロアクティブな考え方をする人と違い、治療的という考え方をする人は、緑茶を日常的な習慣にしたいという気持ちが少ないようで
す。

インタビュイーが選んだカード

「体に良いけど、味はイマイチ」

「BIGELOW」、「RISHU」、「TAZO」など競合分析でMichaelがマトリックスにしてくれていたブランドが実際に飲まれていることが体感できました。多くの人が、緑茶に健康効果は期待しているがが味は苦手という人が多く、緑茶にジャスミン、ミント、ピーチ、レモン、ペパーミント、ローズなど、より親しみやすいフルーティー、スイート、フローラルのフレーバーを混ぜたお茶を購入していました。このように、緑茶を飲むときは、このようにいろいろなフレーバーをを混ぜ合わせた形で飲むのが一般的です。

リサーチ参加者が飲んでいた緑茶の数々

その中で、分かったことは、緑茶に期待される健康効果とは裏腹に、緑茶を絶賛する声はあまり聞かれません。 なぜなら、あまり美味しくないと思われているからです。少なくとも、何も味を加えていない、そのままの状態では。よく行くお店で見かける "プレーン "や "ストレート "の緑茶は、どれも苦かったり、味がないように感じたりしていることがわかりました。

「薬」は苦いことで知られているので、緑茶の健康的な評判は、この文脈では実際に不利に働くかもしれません。英語でよく使われる表現があります。例えば、「飲み込むのに苦いピル」、「苦い薬」のように。多くの人々が「(緑茶茶)体に良いけど、味はイマイチ」ということを口にしました。

本物の緑茶への入り口

アジア系以外の多くのアメリカ人にとって、レストランが、本物の緑茶への入り口になっているようです。そうしたレストランで出される緑茶において、人々は別のカテゴリーを思い浮かべています。それは「アジアの」お茶だということ。彼らは、そのお茶に対して、中国茶も日本茶も両方連想しています。(味や産地の区別はあまりないようです。)

アジア系レストランのイメージ写真

彼らはこのお茶がとても好きなのです。しかし、それを探しに行くほどではありません。そのためには、アジア食料品店に行かなければならないが、そこで何を頼んだらいいのかわからない。仮に適切なお茶を買ったとしても、レストランで飲むようなお茶の淹れ方は自分にはできないと思うのです。 あるアメリカ人は、「アジアのレストランでは、それが最高の緑茶なんだけど、それが見つからないんです。チャイナタウンなどに行けば、レストランで出される本物の緑茶に出会えるかもしれませんが・・・。家で作るのは、無理ですね。」

レストランで出されるようなおいしいお茶は自分には作れない。なんで自分で作ろうとするのか?という態度です。だから、本物のお茶は彼らにとってどこかとっつきにくいものなのです。

私たちが、リサーチで得たこれらのファインディングから、お茶は誰にでもフィットするものではなく、舌の肥えた人やお茶の経験がある程度ある人達だけが楽しめるものであることを理解することができました。これをよく理解した上で、一坪茶園のお茶を通じて、飲み手にとって、緑茶を飲むと風邪を引きにくい、緑茶を飲むとコンディションが良いと言ったように(先ほど記述した、病気の時に飲むものではない)プロアクティブな健康に貢献し、燃え尽きることなく、エネルギーを持続させてくれるという存在になることが私たちの勝ち筋なのではないかと考えています。

プロダクトの中でもコアな価値を形成する味わいの設計を進めるために、リサーチ対象者の人たちが様々な形でくれた示唆から、更に洞察を深めていきました。

「空に高く」は、ヒーロー!

現在日本で販売している、一坪茶園の定番の煎茶「空に高く」は、ヒーローでした。ほとんどの調査対象者が美味しい、と答えました。また同時に、私たちが提唱する、水だけあれば、ポンっと淹れられるという作り方のプロセスに対して、「こんなに簡単だとは思わなかった」「この方法で作るのは簡単だ」「誰でも、正しくできる」と比較的簡単に自身のルーティンに適応させることができると感じられていることがわかりました。

当初、この新しいやり方を知ったときに、多くの人がお茶の抽出を待つことが問題になるのではないかと心配していましたが、それは取り越し苦労でした。

一坪茶園の定番煎茶の「空に高く」の水出しと朝日

一方で、アメリカチームの日本人メンバーにとって驚いたことは、 玄米茶と華琥珀の馴染みのなさでした。特に、私自身の一押しである、一坪茶園の定番の焙じ茶「華琥珀」に至っては、華琥珀の香りと味は強く、明らかに "土くさい "と言われました。この土くささが好きな人は、バラなどの香りの良い花々が咲く庭を思い浮かべ、嫌いな人は牧場や牧草地、海の匂いを思い浮かべました。これは驚きでもあり、焙じ茶の紹介の仕方によっては、新たな焙じ茶のスタンダードを作っていけるのではないかと感じました。

5月のリサーチ結果について議論する様子(5月下旬)

リサーチの中でてきたワードやコメントなどを一つ一つ丁寧に拾っていくと、味づくりのための多くのヒントがあります。私たちはこれらをしっかりと理解しながら、一坪茶園のお茶として、どんな味のバリエーション(製品ラインナップ)を持つべきか?私や茶葉設計技師の永井さん、エコフォーマーの服部さん、ほかメンバーが、チーム一丸となって議論を深めています。それと並行し、私たちにしかできない一坪茶園の提供する価値を規定し、それをどう伝えるのかといったコミュニケーション戦略(ネーミングなども含め)も同時にしっかりと考えていきたいと思っています。現在は、4月から並行して進めているアメリカでのネーミングを議論している最中で、常に言葉が降ってきたときのために携帯は手離せません!笑。次回もお楽しみに!!

(一坪茶園代表 脇奈津子)


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