女性社員

私とアンドロイド10

男が玄関の鍵を開けた。


ガチャ


「お邪魔します。」


といって男の後について、部屋に足を踏み入れた。

ここは。。


重なったCD。

思ったより薄暗く、埃っぽい部屋。

独特な古い建物の匂い。

そして、薄汚れた洗面台。

壁に掛かっている服は、初めて出会ったときに着ていたものだが、前見たときよりも、安っぽく見える。。



この部屋のせいだろうか。

なんか違う。

と穂乃果は思った。


この薄汚い部屋は、アンドロイド男のイメージとはかけ離れている。

生活感のある部屋だ。



穂乃果は知ってしまった。

この完璧にイケてる男の人は作り上げられた虚像なんだと。


見た目だけ。

そう思ってしまった。


さっきまで完璧なアンドロイドだと思っていた男は穂乃果を見て言った。
「なんで僕のこと気に入ってくれたの?」


「えと、前、居酒屋で見かけて。」

なんか違う。
とまた穂乃果は思った。

穂乃果は突然帰りたくなった。
少し話したあと、タイミングを見計らって。

「あの。私、これから用事があるので・・失礼します・・」
そういうと、穂乃果は彼の家を出た。


男は、無理に穂乃果を引き留めはしなかった。


帰り道。
さっきと同じ道。
さっきと同じ夜。夜風。


なのに、


さっきと全然違う。





「魔法が解けた。」



と穂乃果は立ち止まってつぶやいた。

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