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(随筆)不確定な世界「達成感」

駅をおりて、グーグルマップを起動させた。

なのに、ぼんやりした色のまま動いてくれなくて、少しあせる。

いただいていたメールで住所を確認する。

よっしゃ、これで伺える! 私は小躍りするきもちだった。

ちょうどそのころ、グーグルマップ起動。

私のなかで妙な達成感が、ぐにゅんと突き出てきた。グーグル先生に頼らなくても、行く先わかったもんね、というねじ曲がった想い。

でもそういうプチ達成感(いや優越感か?)はすぐに消えてしまうものだ。

だってもう一度ちゃんと迷って、グーグルマップに助けてもらうことになるのだから。

でも今夜。

私はひさしぶりに、ほんものの達成感を知ることとなる。

最近、仕事が忙しくてプライベートの文章を書くことができなかった。

やっと時間がとれたので、しるすことにしたのだ。

しかし、笑っちゃうほど進まない。

筆がのらないとか、情景が浮かばないとか、そういう生易しいものではない。さっぱりアイデアが生まれないのだ。白紙をみつめ、四角や三角を描き、さまざまな発想法を試した。締め切りから逆算して考えられる「執筆可能な枚数」で終われる書き物ができるとは思えなかった。

もうダメかもしれない。

自分の好きな世界観を描けなくなってしまった。友人がひとり、ふたりと夢から離れていった。私も、いつまでも果たせない世界を見ていないで、少し手を伸ばせば届く空間を楽しみながら生きる。

そんなお年頃なのかもしれない。

今日の締切に間に合わせることは、ひとつの意地であり区切りであり、決意でもあった。もし間に合わなければ、もうおしまいにしよう。そう思っていた。

結論からいうと間に合ったけれど、それ以上に達成感が私に教えてくれたことは「もっとがんばれるよ」というものだった。

グーグルマップでは出逢えない、人だけが見つけられる世界。まだまだきっとあるはずだ。

こういう想いを、ひっそりと探していけたらいいね。



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