インスタント小説 第一弾『背後に立つ男は笑っている』
本篇 1,249字
人は、思っているより無防備だ。
ある女はうきうきしながら道を歩いていた。
女は若く、背中の開いたパーティドレスがよく似合った。
女がデパートの前で足をとめた。ガラスを鏡に、体をひねってドレスを揺らし、背中に垂れる髪を一房ねじる。
つと、小さなこじゃれたバッグからスマートフォンを取り出し、画面を点灯させる。時刻は午後五時二十五分。女は少し慌てた素振りで小股に走り出す。
今日は久しぶりにあの人に会える日。
女の顔は少しだけほころんだ