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人工衛星とダイエット

人工衛星もダイエットが必要になることがあります。

ロケットには打上げ能力といって打上げられる重さに制限があるのです。 そうです。メタボな衛星は打上げられないのです。衛星なんて人が作るのだから軽く作れば良いだけ?

確かにそうなのですが、そう簡単には行かないのです。 衛星は複雑なシステムです。部分ごとに設計者が違いますし、作る会社が違うこともあります。また、少しでも余裕があれば燃料を余計に積んだり、装置を増やしたりしたくなるのです。

大きなシステムはみなそうですが、衛星もシステム設計と言って全体をまとめる役目をする設計者がいます。システム設計をする人は最初にどの部分が何kgという具合に割り振ります。

一方、部分部分(サブシステムといいます)を担当する人は、自分の担当部分がどれくらいの重さになるかを計算しますが、最初のうちは正確な計算はできません。かといって後で重くなると困るので、重めに計算します。

みんなが重めに計算すると…かくしてメタボ衛星ができあがるのです。

しかしそのままで良いわけがありません。システム屋さんによるダイエットが始まるのです。どうやってダイエットするか・・・。

人工衛星にビデオを見せたり、バナナを食べさせる・・・はずはありませんよね。でも、測るだけダイエットに少し似ているかもしれません。

システム屋さんは常に機器の重さを集計しています。そしてどの部分は予定より何kg重い(軽い)といったことを把握しています。

重いところにはダイエットの勧告が下るのです。そうすると、その部分を担当している設計者は少しでも軽くなるように設計を見直します。場合によってはグラム単位で少しでも削ることもあります。ただし、一番効果が大きいのは…

単に設計が進展することなのです。

設計者は後で苦労したくないので最初のうちは重めに計算しておきます。ところが細かい所まで設計すると、軽くなることが多いのです。たとえば厚さが3mm必要だと思ってたのが2mmで済んだとか、部品が20個いると考えていたのが18個で済んだとか・・・

一方、システム屋さんはそれを最初から見抜こうと、経験に照らして重いところを重点的に攻めるのです。そうしたせめぎあいの中で、最初はメタボだった衛星も、徐々にスリムになり、バランスのとれた体型(?)になっていくのです。 複数の人がかかわるだけに衛星のダイエットは人間のダイエット以上に大変なのです。

そこの、メタボなあなた…自分が頑張ればいいんですよ。

そんな簡単じゃないか・・・

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