謎のエンジニア

人工衛星についての色々な話を主婦でもわかるように説明しています。

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最近の記事

人工衛星と老化

人工衛星も老化します。機械が老化するはずないって?その通りです。正確には劣化ですね。(^O^)/ 人工衛星の設計をやっていると、BOL と EOLという言葉が出てきます。 BOL : Beginning of Life EOL : End of Life という言葉なのですが、人工衛星の一生の初め(BOL)と終わり(EOL)という意味です。BOLは打上げた直後の衛星の使い始めの時期、EOLは衛星の寿命が尽きる時期です。ちなみに衛星の寿命は3~10年程度です。 さて、こ

    • 人工衛星の仕組み

      人工衛星ってどのような仕組みでうごいているのかを書こうと思ったのですが、意外と大変そうなので、今回は導入編として、サブシステムのお話です。 人工衛星を設計する際にはサブシステムと言って、機能別にいくつかの部分に分けて設計します。ざっと挙げると、 テレメトリ・コマンド・通信系(TTC系) 姿勢制御系 電源系 熱制御系 推進系 構造系 この他にこれら全体をまとめたシステム設計も必要になります。ここまで書いてこれで終わってしまうのもあんまりなので、一番わかりにくそうなTTC系

      • アポジとペリジ

        今回は専門用語解説です。 さて、タイトルを見て何を思い浮かべますか? 食べ物を考えたあなたは食いしん坊ですね。衛星の軌道に関係した言葉です。 アポジ点 : 遠地点 ペリジ点 : 近地点 といって衛星の軌道の特定の点を示します。人工衛星、中でも静止衛星のような高い高度の衛星は、ロケットで一気に軌道に投入できる訳ではありません。 一旦、トランスファ(遷移)軌道と言って、中間的な軌道に投入します。この軌道は楕円軌道と言ってその名の通り、楕円形をしています。その楕円の片方の中心

        • 人工衛星とサバイバル

          サバイバルって何を思い出しますか? 生き残りをかけた密林や砂漠での死闘? 人工衛星の生き残りに関する話です。人工衛星を設計していると、 「サバイバル温度」 という言葉が出てきます。生き残り温度 ??? でもその通りなのです。 人工衛星は電気で動いています。正常に動いているときは衛星の中で電気を使っているので、衛星の温度は上がります。パソコンを使っているとパソコンが熱くなるのと同じですね。 ところで衛星はトラブルや故障などで、地上からコントロールできなくなることがありま

        人工衛星と老化

          人工衛星とロケット

          今回はクイズ形式です。 下記の地名の場所には何があるでしょうか。 ケープカナベラル/米国 バイコヌール/カザフスタン 西昌/中国 クールー/ギアナ これで分からない人も次の地名で分かるでしょうか。 種子島/日本 そうです。これは主要なロケットの発射基地がある場所です。 ケープカナベラル : スペースXをはじめとした米国のロケット バイコヌール : ソユーズなどのロシアのロケット 西昌 : 長征 クールー : アリアンロケット 種子島 : H-IIロケット、H-III

          人工衛星とロケット

          人工衛星の操縦

          人工衛星ってロケットで打ち上げた後は、放っておいても仕事をしてくれるように思いませんか。 探査衛星など地球から遠く離れたところまで行く衛星は、ある程度衛星が自律的に動きます。そうしないと電波が届くのに時間がかかるので、うまくコントロールできないのです。 地球を回っている衛星の多くは、姿勢制御など自律的に動く部分もありますが、運用と言って、地上からリモートコントロールもしています。 つまり地上から操縦しているのです。 さて、静止衛星は地上から見ると一定の位置にいます。したが

          人工衛星の操縦

          人工衛星と油

          油といえば天ぷら ではなくて、機械には潤滑油といって、油を差す必要があります。一番、分りやすいのは自動車のエンジンオイルでしょうか。エンジンオイルを入れないとエンジンは焼きついて動かなくなってしまいます。 人工衛星にも機械部品がついています。たとえば太陽電池のパネルは打上時には畳んであるのですが、ヒンジといって、蝶番のようなものがついていて、宇宙に行ってから開くことができます。また、開いたパネルは常に太陽の方を向くように、モータでまわしています。 しかし!  こうした

          人工衛星とワイングラス

          声だけで、手でさわらずにワイングラスを割ることができる人がいるって聞いたことありますか。 決してあやしい超能力ではありません。実際に可能なのです。難しい言葉が二つ出てきます。1つめが、 固有振動数 です。ものにはそれぞれ固有の振動の仕方があります。一番わかりやすいのは音叉ですね。音叉をはじくと一定の音がします。これは音叉が持っている固有振動数で振動しているのです。音は振動なので、音叉からは一定の高さの音が聞こえます。木琴の音盤も同じですね。音の高さ=固有振動数を変えるた

          人工衛星とワイングラス

          人工衛星とダイエット

          人工衛星もダイエットが必要になることがあります。 ロケットには打上げ能力といって打上げられる重さに制限があるのです。 そうです。メタボな衛星は打上げられないのです。衛星なんて人が作るのだから軽く作れば良いだけ? 確かにそうなのですが、そう簡単には行かないのです。 衛星は複雑なシステムです。部分ごとに設計者が違いますし、作る会社が違うこともあります。また、少しでも余裕があれば燃料を余計に積んだり、装置を増やしたりしたくなるのです。 大きなシステムはみなそうですが、衛星もシ

          人工衛星とダイエット

          宇宙は危険がいっぱい

          宇宙は真空とか、低温になったり高温になったり、環境が厳しいので、人工衛星も設計が大変と言う話は耳にすることがあると思います。 でも大変なのはそれだけではないのです。 原子状酸素 紫外線 放射線 といったものが飛び交っています。プラスチックなどの有機材料はこういったものに弱いことが多いのです。 原子状酸素は、耳慣れないと思いますが、要注意です。その名の通り、分子ではなく原子状態の酸素なのですが、大気圏に近い低い軌道には特にいっぱいあり、プラスチック等の有機材料は削ら

          宇宙は危険がいっぱい

          スイングバイ

          スイングバイって聞いたことありますか。 ジャズとは関係ありません。 たぶんSF好きの人は一度は聞いたことあると思うのですが・・・。 衛星や宇宙船が宇宙空間を飛んでいく時に惑星の近くを通ると惑星の引力に引かれて燃料を使わずにスピードを上げることができるのです。これってSFの世界の話ではなく、実際に可能なのです。あの「はやぶさ」や月に着陸した「SLIM」もスイングバイを使いました。 でも少し不思議に思いませんか。 確かに惑星に近づく時には引力に引かれて速度が上がります。し

          人工衛星と浮気

          人工衛星の寿命は3年程度から、長いもので10年くらいです。寿命10年の衛星は10年後もちゃんと動いていて当たり前・・・と思いますよね。 実はそうではないのです。人工衛星の設計を行うときに、寿命とセットで決めることがあります。それは、「寿命末期の生存確率」なのです。たとえば寿命5年の衛星で、5年後にも衛星が正常に動作している確率は何%以上とすること。といった話になります。この「何%」ですが、どれくらいだと思いますか? 衛星にもよりますが、だいたい、70%くらいが多いのです。

          アッシー君とメッシー君

          このタイトルが分かる人って・・・年代がばれますね~。 人工衛星は打上げて宇宙に行ってしまうと修理ができません。 そのために、大事な機器については故障しても衛星全体がだめになってしまわないように、2つ同じ機器を搭載したりします。これを 冗長 といっています。 冗長って普通はあまり良い意味ではないですよね。辞書を引くと、「むだが多くて長いこと」なんて書いてあります。実はその通りで、人工衛星も故障さえ起こらなければ、同じ機器を2台積むなどと言うのは無駄なのです。 しかし、

          アッシー君とメッシー君

          人工衛星と爆薬

          大型の人工衛星の多くは爆薬を積んでいます。と書くとなんだか物騒な話に聞こえますが、衛星を自爆させたり、他の衛星を攻撃したりといった話ではありません。 何のために爆薬(火薬)を使うかと言うと、いろいろなものを開くために使います。例えば太陽電池がついているパネルは、ロケットで打上げる時には振動で壊れないように衛星の横にしっかりと固定しておきます。それを宇宙に行ってから開くのですが、この時に爆薬を使うことがあります。太陽電池のパネルを固定しているボルトを、爆薬で吹き飛ばしたり、切

          主婦でもわかる人工衛星の話

          このシリーズでは人工衛星や宇宙に興味がない主婦や若い女性でも分かることを心掛けて書いています。これって実は、意外と書くのが大変なのです。何も考えずに書くと普通の人には、多分ちんぷんかんぷんな文章になってしまいます。しかも宇宙関係ってやたらと略称を使います。 SAP、PAF、ACS、TCS、AKE・・・・ なんだかわけ分かりませんよね。 SAP : Solar Array Paddle PAF : Payload Attach Fitting ACS : Attitu

          主婦でもわかる人工衛星の話

          ロケットと人工衛星

          世の中にはロケットと人工衛星をいっしょくたに考えている人がいるようです。そう、この記事を読んでくださっているお嬢さんやおかあさん、あなたです。 ロケットは大体の人がわかると思います。火を噴きながら空に上っていくあれです。いうなれば荷物や人を宇宙に運ぶトラックです。それでは人工衛星はというと、その名の通り人工の星で、ロケットの積荷です。ロケットで打上げられた人工衛星は上空でロケットから切り離されます。切り離された後は人工衛星についているロケットエンジンで地球を回り始めます。

          ロケットと人工衛星