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音楽で愛すラーメンズ+小林賢太郎

2020年12月1日。
その日もなんら変わりのないいつも通りの朝で、けれど何故かなんとなくanonymassが聴きたくなって、久しぶりに再生ボタンを押してみる。東京に住んでいた頃がちょっとだけ懐かしくなって、次の休みには久しぶりに『Sweet7』のDVDでも観ようかなぁ、なんて思っていた。いつも通り仕事に取り掛かり、ひと段落した昼過ぎ。ふとスマホを開いたら、トップに上がっていたあるひとつのニュースと目が合った。


「ラーメンズ 小林賢太郎が引退」


マスクの中で小さく「えっ」と声が出る。
手が、時間が、一瞬で止まった。

歴は浅いかもしれないが、私は紛れもなくラーメンズそして小林賢太郎さんのファンで、特に賢太郎さんの存在は私の人生に大きな影響を与えた。大好きで、憧れで、大切な人だ。
そんな賢太郎さんが、表舞台から去ってしまった。しかもすでに過去形で。

それからしばらくは仕事が手につかず、ぼんやりとしてしまっていた。賢太郎さん、相方の片桐仁さん二人のコメントは勿論、所属していた事務所や度々共演していた方々のコメントを何度も見返してはなんとか納得しようと試みた。それでも時間が経つにつれて寂しさや悲しさが色を濃くしていき、結局号泣しながらその日は眠りについた。翌日の顔は見るに耐えないものだったが、必死でメイクで隠して出勤した。


今までずっとやろうと思っていたことがある。
ラーメンズや小林賢太郎作品の音楽をまとめることだ。

ラーメンズに出会ったことで徳澤青弦さんのことを知り、そこから一気に聴く音楽の世界が広がった。
anonymass、ノーナ、椎名林檎さん、キリンジ、他にも沢山。知れたことで、好きになったことで見える世界は彩り豊かなものになった。だから、今までの作品の一部しか知らない人やまだ知らない人に向けてラーメンズそして小林賢太郎作品の魅力を、作品を彩ってきた楽曲を通じて伝えたい。そう思って、急いでプレイリストをこしらえたのだった。

その名も、『音楽で愛すラーメンズ+小林賢太郎』

これまで出演・発表された作品のテーマ曲などを、時系列に並べてプレイリストにしました。この記事では、そのプレイリストに入っている楽曲についてひとつずつ解説していきます。なお、今回は音源化されているもののみを集めたので、それ以外の作品については解説を省略させていただきます。
このプレイリストを通して「ずっと探していたあの曲だ!」や「あの作品の曲ってこれだったのか!」とか、新しい発見や懐かしい再会に繋がれば幸いです。

1.groovin' 椿 / 徳澤青弦
ーラーメンズ本公演第8回公演『椿』(2001)
2.Bach's Prelude from Cello Suite No.1 / 徳澤青弦
ーラーメンズ本公演第9回公演『鯨』(2001)
3.interbox / 徳澤青弦
ーラーメンズ特別公演『零の箱式』(2001)
4.Hachimonji / 徳澤青弦
ーラーメンズ本公演第10回公演『雀』(2001〜2002)

まず、これからラーメンズ本公演作品や小林賢太郎演劇作品の音楽を語る上で、徳澤青弦さんの存在は欠かせません。簡単に説明しますと、クラムボンやハナレグミ、くるりなど様々なアーティストの作品やライブに参加しているチェリストです。劇伴音楽も多数制作・参加しており、最近では新海誠監督作品の『君の名は』や片渕須直監督作品の『この世界の片隅に』ストリングスを担当。NHK Eテレの番組『ムジカ・ピッコリーノ』ではメロトロン号の船員・ゴーシュ役として出演していました。
第8回公演以前の映像や資料がないため正確な時期は不明ですが、ラーメンズ本公演では第8回の『椿』から劇伴を担当しているようです。第9回本公演『鯨』では東京公演最終日にサプライズとして “チェロ無伴奏組曲第1番ト長調 プレリュード” を生演奏しました。この演奏が名作『器用で不器用な男と不器用で器用な男の話』へ繋がっていきます。私がラーメンズおよび青弦さんを好きになったのもこの演奏がきっかけです。今回プレイリストに入れた4曲は『ラーメンズサントラ vol.1』からで、上記以外にも『椿』から第10回公演『雀』までの幕間音楽が収録されています。

5.early RISER / Plus-Tech Squeeze Box
ーチョコレイトハンター『チョコレイトハンター'00』(2000)


そもそも、“チョコレイトハンター” とはなんぞや?という皆さまへ。それは遡ること1999年、のちの東京03であるアルファルファとTBSラジオ『バナナマンのバナナムーンGOLD』でお馴染みの放送作家・オークラさん、そしてラーメンズが「今世紀最後にして最低のアイドル芸人」をキャッチフレーズにユニットを組んでいたことがありました。それが ”チョコハン” ことチョコレイトハンターです。エレクトロでほのかにフレンチポップが香るPlus-Tech Squeeze Boxの “early RISER” はチョコハンの解散ライブ「THE FINAL HIGH TENSION BUS」のオープニング映像に使用。バーバラ(片桐さん)の色気がすごい。アルバム『FAKEVOX』に収録されています。

6.Twenty-Five / anonymass
ー小林賢太郎プロデュース公演 #002『Sweet7』(2003)

2002年からは小林賢太郎プロデュース公演(以下、KKP)がスタート。#001の『good day house』は映像化されており、音楽も青弦さんが担当していますが、まだ見たことがなく検証ができないため、残念ながら今回は省略とさせていただきます。2作目となる作品『Sweet7』は、青弦さんが参加する音楽ユニット・anonymassの “Twenty-Five” がテーマ曲です。作品名に掛けたのか、楽曲が7拍子となっているのがポイント。なめらかなホーンとストリングス、小気味良いテンポのパーカッションに乗せた神田智子さんの歌声が、作品の上質なポップさを引き立てます。anonymassの2ndアルバム『'harusame'』に収録。

7.ニュー・ソウル / NONA REEVES
ー小林賢太郎プロデュース公演 #003『PAPER RUNNER』(2004)

小林賢太郎作品の音楽を語る上で欠かせない人物がもう一人。バンド・NONA REEVESの西寺郷太さんです。アニメ『パラッパラッパー』のテーマ曲としても有名なノーナですが、本作『PAPER RUNNER』をきっかけに以降後述する作品に楽曲を提供しています。この作品では西寺さん名義で『ペーパー・ランナーのテーマ』として発表していますが、バンドとして『ニュー・ソウル』でリリースしています(“ペーパー・ランナーのテーマ” はカップリングに収録)。ラーメンズと同学年ということで意気投合した賢太郎さんが西寺さんに「30代のテーマソング」を依頼。ノイズもといコーラスには “PAPER RUNNERS” として 作品の出演者が参加、MVの終盤ではノーナが劇中のセット内で演奏しています。ちなみに西寺さんと片桐さんは生年月日・血液型まで一緒で、西寺さんは占いを信じなくなったそうです。明るく前向きな楽曲なのに少し切なさを感じるのは、西寺さんと当時ノーナが所属していたレーベルのディレクターさんとのあるエピソードと想いが込められているのが理由でした。

8.茎(STEM)〜大名遊ビ編〜 / 椎名林檎
ー小林賢太郎プロデュース公演 #004『LENS』(2004)
9.おだいじに / 椎名林檎
ー椎名林檎『短篇キネマ 百色眼鏡』(2003)

まさか、この世界観が交わるとは。KKP4作目は『LENS』。この作品は前年に発表された椎名林檎さんの映像作品『短編キネマ 百色眼鏡』の前日譚が物語となっています。林檎さんのアルバム『加爾基 精液 栗ノ花』に収録されている楽曲が挿入歌となっている『百色眼鏡』。大正末期の耽美でモダン溢れる時代を舞台にアルバムの世界観を表した作品です。『茎(STEM)』は二作のテーマ曲として、さらに『百色眼鏡』のエンドロールを彩る楽曲 ”おだいじに” をプレイリストに入れました。なお、今回プレイリストに入れませんでしたが、『LENS』のDVDメニュー画面には、同じく『茎(STEM)』に収録されている『迷彩 - 戦後最大級ノ暴風雨圏内歌唱』がインストver.でBGMとして流れています。

当時、林檎さんのライブコンサート『賣笑エクスタシー』に賢太郎さんが “天城” としてゲスト出演。さらに2019年にNHK Eテレの番組『SWITCHインタビュー 達人達』で二人の対談が実現しました。

10.Still Life / anonymass

11.クレイジー・サマー / キリンジ
ーJam Films2『机上の空論』(2004)

映像クリエイターのショートフィルムオムニバス作品『Jam Films2』にラーメンズと女優・市川実日子さんが主演した『机上の空論』が収録されています。賢太郎さんと映像作家の小島淳二さん(teevee graphics)によるユニット “NAMIKIBASHI” が制作した作品『日本の形』の “実践編” ともいえる作品です。anonymassの ”Still Life” は物憂げでミステリアスな雰囲気で作品の幕開けを彩り、キリンジの ”クレイジー・サマー” は混沌をくぐり抜けた物語のフィナーレをセンチメンタルに飾ります。 ”Still Life” はアルバム『opus01』に、 ”クレイジー・サマー” は『スウィートソウル ep』に収録。その後、NAMIKIBASHIは2017年に『東京五輪音頭-2020-』公式MVで二番の映像を担当しています。その模様はもはや『日本の形 〜東京五輪音頭〜』。NAMIKIBASHI色満点。

12.The Opening of "Potsunen" / 徳澤青弦
ーKENTARO KOBAYASHI SOLO CONTE LIVE「ポツネン」(2005)

2005年からは賢太郎さんの代名詞ともいえる作品『POTSUNEN』シリーズがスタートします。音楽はもちろん青弦さんが担当。ミステリアスでややダークな世界観を、ピアノやストリングスを中心とした音楽が作り上げます。映像はNAMIKIBASHIが担当。アルバム『ポツネンの音楽』に収録されています。POTSUNENシリーズについての説明は後述。

13.(They Long To Be) Close To You / The Carpenters
ートヨタホームCM(2005)

何故ここにカーペンターズが?とお思いのあなた。実はこの楽曲が使用されているCMシリーズに、賢太郎さんがトヨタホームの社員役として出演していました。個人的にカーペンターズの曲を初めて認識したのがこのCMだったものの、そこに登場していたのが賢太郎さんだったことに気づいたのは何年も経った後のこと。家にまつわる家族の温かいCMです。人生をごいっしょに。

14.The Last of "maru" / 徳澤青弦
ーKENTARO KOBAYASHI SOLO CONTE LIVE「◯ -maru-」(2006)

全体的に寂しさがありつつも、やわらかな優しさの雰囲気が印象的なPOTSUNENシリーズ2作目。そのラストを飾るの「丸の人」であり、そしてそのラストシーンでこの楽曲が丸の人を包みます。この文章を書く上で気づいたのですが、アルバム『ポツネンの音楽』には東京スカパラダイスオーケストラの創始者であるASA-CHANGさんがドラムで参加しています。びっくりしたのと同時に納得。繊細でダイナミックなドラムは必聴です。冬になる度にこの曲が聴きたくなります。『ポツネンの音楽』に収録。

15.「Drop」から派生した作品群より「雨」 / 徳澤青弦
ーKentaro Kobayashi Solo Performance Live Potsunen 2008 『Drop』(2008)

POTSUNENシリーズ3作目。タイトルの通り、水滴が流れるような美しい旋律が特徴の楽曲です。作品内ではChapter9「Drop」にて使用されています。この楽曲が収録されている『ポツネンの音楽 その2』ではLittle Creaturesのドラム・栗原務さんやサックス奏者の田中邦和さん、青弦さんと同じくanonymassメンバーでありユーフォニアム・フリューゲルホルン奏者のゴンドウトモヒコさんといった多くのミュージシャンが参加しています。豪華。ちなみに作品内で個人的に好きなシーンは「マトリックスのように水滴を一瞬で止める」ところです。

16.線上の手男 / 徳澤青弦
ーKentaro Kobayashi Solo Performance Live Potsunen 2010 『SPOT』(2010)

シリーズ1作目『ポツネン』で発表された「handmime」がパワーアップ。「線上の手男」として発表されました。2014年に開催された『小林賢太郎が コントや演劇のために つくった美術 展』では映像で使用された原画が展示され、お客さんが絵に合わせて実際に手の再現をしている光景がしばしば見られました。この曲の他にも、会場内ではずっとポツネンの音楽が流れていました。また、後述する『うるう』の元となった演目「うるうびと」もこの作品内で演じられています。

17.うるう序曲 / 徳澤青弦
ー小林賢太郎プロデュース公演#008『うるう』(2012)

作品のサントラである『うるうの音』が発売されたのは再々演が全て終了した後の2019年5月でしたが、作品の初演は2012年でした。青弦さんによるチェロの生演奏とともに繰り広げられる物語が静かに心を打ちます。ここでは物語の幕を開ける ”うるう序曲” をプレイリストに。作品のフライヤーとなった写真は、深い森の中に照明器具を吊るしてスモークを焚き、実際にチェロの演奏が行われながら撮影されたそうです。撮影は写真家の宮原夢画さんで、『ポツネンの音楽』『ポツネンの音楽 その2』のジャケット撮影を担当しています。アルバム『うるうの音』に収録。

18.AUGUST / NONA REEVES
ー小林賢太郎プロデュース公演 #007『ロールシャッハ』(2010 / 2012)


KKP7作目は『ロールシャッハ』。初演は2010年ですが、今回は再演の方をチョイスしてプレイリストのこの位置に入れました。テーマ曲であり、劇中で辻本耕志さん演じる串本益夫が好きな歌が、NONA REEVESの ”AUGUST” です。元々この曲は2000年にリリースされた楽曲ですが、2010年夏に賢太郎さんから西寺さんへ「この曲を次の舞台のテーマソングにしたい」との連絡があり、実現したそうです。アルバム『ディスティニー』に収録。本作で楽曲が流れるタイミングに思わず鳥肌が立ちます。

19.ポツネンのテーマ / 徳澤青弦
ーKentaro Kobayashi Solo Performance LIVE POTSUNEN 2013『P+』(2013)

これまでのシリーズの集大成とも言える作品『P+』。この曲が流れるオープニング映像では一つずつカウントがされる毎に、過去の『ポツネン』のシーンが現れます。参加アーティストが増えたこともあり、楽曲がより多彩かつ力強さを増したポツネンの音楽。それが如実に現れているのがこの楽曲ではないでしょうか。POTSUNENシリーズのみならず、後述する『小林賢太郎テレビ(KKTV)』内でも様々なポツネンの音楽が使用されていることから、『Drop』辺りから賢太郎さんと青弦さんがそれぞれ持つ世界観がより深くマッチしていったように感じます。私は賢太郎さんがマグリットの絵画のようで、青弦さんがモーリス・ラヴェルのような世界観を持っているように思うのですが……皆さんはどう感じますか?

20.カジャーラストン・ビート / 徳澤青弦
ーカジャラ#1『大人たるもの』(2016)
21.裸の戴冠式 / 徳澤青弦
ーカジャラ#2『裸の王様』(2016)


2016年からは小林賢太郎作品の新たなスタンダードとも言える『カジャラ』がスタートしました。音楽は言わずもがな青弦さん。ポツネンの音楽とはまた違い、絢爛で異国籍感が滲む雰囲気となっています。『大人たるもの』には片桐さんが出演し、7年ぶりにラーメンズ二人が舞台上に揃うことになりました。ちょうど『〜美術 展』を見ていた時にその発表を目にして、それまで見た内容がほどんど吹っ飛びました。幸運にもチケットが取れて横浜でカジャラを鑑賞したのですが、それが今のところ最初で最後の生で見たラーメンズでした。とても幸せな時間でした。笑いすぎてマスカラが取れて、目が真っ赤になったのも良い思い出です。実はカジャラ#2はまだ見れておらず。ということで、前作からメインテーマを引き継ぐ ”裸の戴冠式” をセレクトしました。それぞれ『カジャラの音楽』『カジャラの音楽 その2』に収録。

22.大逆転 / NONA REEVES
23.最終回 / KREVA
ーNHK BSプレミアム『小林賢太郎テレビ10』(2019)

2009年から毎年放送されていた『小林賢太郎テレビ』も2019年で最終回。シリーズの最後を締め括る『10』のテーマ曲はお馴染み、NONA REEVESの最新アルバム『MISSION』に収録されている ”大逆転” です。KKTVオールスターズ勢揃いとも言えるオープニング映像は見応えあり。これまでの世界観が凝縮されています。また、今作のゲストであるKREVAさんが予想以上にコントが上手くて大爆笑しました。そのコントの結末が少し切なくもあり、その余韻のままエンドロールへ向かう流れは、今改めて見返すとはっとさせられて胸に迫るものがあります。そこで流れるのがKREVAさんの ”最終回” 。このプレイリストを組む上で楽曲の存在を知ったのですが、まるでこの為に、この先の為に用意されていたかのようにも思えてしまいます。 ”最終回” はアルバム『OASYS』に収録。

24.それとこれとは話がべつ!feat.宇多丸,小林賢太郎 / KREVA(2019)


さて来ました。「あなたいつの間に出てたんですかオブザイヤー2020」です。びっくりしました。この楽曲が収録されているアルバム『AFTERMIXTAPE』のwikiを見たんですが、先述した『小林賢太郎テレビ10』でのKREVAさんと賢太郎さんの共演がきっかけで実現したそうです。宇多丸師匠と賢太郎さんの名前が並んでいるのを見ると不思議な感じがしますね。賢太郎さんは終盤に登場。いつもの小林節が炸裂しています。
追記:なお、こちらの楽曲はMVがありませんが、賢太郎さんが参加しているということで今回特別にプレイリストに入れました。

25.うるうのテーマ 〜 春夏秋冬 / 徳澤青弦
26.再会 / 徳澤青弦
ー小林賢太郎演劇作品「うるう」(2019〜2020)

事実上、賢太郎さんがパフォーマーとして舞台に立つ最後の作品となった『うるう』。プレイリストの最後はこの2曲で締めくくりたいと思います。初めて『うるう』を観た時、 “まちぼうけ” と “カノン” の重なり方にとても驚きました。こんなにきれいに重なるのか、と。青弦さんのアレンジが成せる技だと思います。それ以来、どこからか “カノン” が流れてきた時はこっそり “まちぼうけ” を口ずさんでみたり。“再会”のシーンは何度観ても涙が止まりませんでした。なんと言っても曲が終わった瞬間のラストシーン。今まで観た舞台の中で一番好きなシーンです。また、『うるうの音』を聴きながら絵本『うるうのもり』を読んだところ、物語にさらに没入できたので読み聞かせBGMとしても是非おすすめします。


以上が今回プレイリストに収録されている楽曲ですが、実は泣く泣くプレイリストに入れられなかった楽曲もありました。こちらも機会があれば是非ともチェックしていただきたいです。

・HAE / LOSALIOS
ー小林賢太郎プロデュース公演 #005『TAKEOFF〜ライト三兄弟〜』(2006〜2007)

これは本当に入れたかった……!屈指の名作『TAKEOFF』といえば、劇中でも手拍子として登場する印象的なあの7拍子のフレーズ。アカデミックでコンテンポラリーさが特徴的なこれまでの劇中音楽とはまた違い、本作はいわば泥臭くも疾走感のあるロックサウンドとなっています。それもそのはず、テーマ曲 “HAE” を演奏しているのはLOSALIOS。伝説のバンド、ブランキー・ジェット・シティのドラマーである中村達也さんを中心に、東京スカパラダイスオーケストラのギタリスト・加藤隆志さん、ベーシスト・TOKIEさん、同じくギタリストのアイゴンさんこと會田茂一さんといった、日本ロック界を牽引する名手が音楽を奏でています。北海道で行われたRISING SUN ROCK FESTIVAL 2005ではこの曲が演奏され、真夜中のオーディエンスを熱狂の渦に巻き込みました。この曲が流れるカーテンコールの熱狂も、きっと一生忘れられません。残念ながらサブスクでは未だ配信されていない為、今回プレイリストに入れられませんでした。アルバム『ゆうれい船長がハナシてくれたこと』に収録。

・国民的行事 / KREVA(2005)
・tell me / Fantastic Plastic Machine(2006)


プレイリストの編集上、今回入れなかったこの2作ですが、どちらとも賢太郎さんがMVに出演しています。 ”国民的行事” の胡散臭い演技はさすがの一言。その前である2003年にリリースされたアルバムKICK THE CAN CREWのアルバム『magic number』に収録されている ”ナニカ” ではイントロの前にコント「無用途人間」のワンシーンがサンプリングされており、CMにはラーメンズが出演しています。同じく ”tell me” も賢太郎さんが出演していますが、こちらは映像をNAMIKIBASHIが担当。FPMは2005年に行われた『Rahmens presents Golden Balls Live』、2008年に上演されたKKP #006『TRIUMPH』で音楽を担当しています。テレビ番組でもよく流れる代表曲 ”paparuwa” はTBSラジオ『エレ片のコント太郎』オープニング曲としてもお馴染みですね。 ”国民的行事”はアルバム『愛・自分博』に、 ”tell me” は『imaginetions』に収録されています。

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賢太郎さんは表舞台から去ったものの、創作活動は続けると言います。それが何よりの希望であり、将来に向けての楽しみでもあります。生きている限り、いつかまたきっと会える。そう信じたいです。私はこのプレイリストを作ることで誰かの世界が広がるきっかけになればいいなぁと、おこがましくも思ったりしています。私の世界を広げてくれたあなたのように。
あれからずっと凹んでいたけれど、この文章を書きながら聴いたエレ片で元気が出ました。深夜にあんなに大笑いしたのは久しぶりだった。ありがとうエレキコミック、ありがとう片桐さん。『コントの人』観に行きたいなぁ。そして、この文章を書くにあたって、今までのラーメンズのコント、KKP、 KKTVを見返しました。やっぱり面白い。笑ったり、はっとさせられたり、じんと来たり、この一年で忘れていた感情や感覚が蘇ってくるようでした。コロナ禍に陥ってから感情はもとより、声を出して笑うということをすっかり忘れてしまっていました。ありがとう賢太郎さん。私はあなたのおかげで人間に戻れて、忘れていた大切な何かを再び思い出せた気がします。なにより、ラーメンズも、あなたの作品も大好きなんだなと再認識しました。

あなたが舞台の上にいない日常がこれからも続くのは、やっぱりちょっと不思議な感じがします。カーテンコールでの鳴り止まない大きな拍手を受けて胸いっぱいな嬉しそうな顔、今でも忘れられません。これまでの作品を愛しながら、また会える日を楽しみに待ちたいと思います。


賢太郎さんの新たな門出を応援しています。

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