見出し画像

新年のご挨拶と、名古屋タカシマヤ催事無事終了の御礼

こんにちは。
伝統工芸・奈良一刀彫ブランド「NARADOLL HIGASHIDA」の職人見習い、阪本小雪です。
作家 東田茂一先生のもとで、日々勉強させていただいています。

2021年最初の投稿です。
あけましておめでとうございます。
NARADOLL HIGASHIDAではおもに節句人形を制作しているため、3月3日の桃の節句に向けて年末はいつも大忙し。制作のピークとともに、新しい年を迎えます。

コロナ禍による世の中の混乱とともに駆け抜けた2020年から、まだまだどうなるかわからない2021年へ。私たちも粛々と手を動かしながら、これからの世界のためにできることは何かと考えています。

奈良の大仏さんが作られた西暦700年代には、天然痘の流行により日本の総人口の約30%もの人が命を落とすという過酷な状況があり、天平の疫病大流行と呼ばれているそうです。そのうえ、大地震や旱魃・飢饉などに次々と見舞われる苦しい状況をどうにか落ち着かせたいと、願いを込めて作られたのが東大寺の大仏さんです。

それから現在までずっと、奈良でどっしりと鎮座し続けている大仏さん。
昔も今も変わらず、人々が平穏を願う気持ちが込められている祈りのシンボルですね。
そんな大仏さんに見守られながら、私たちは今年も地道にせっせと節句人形を作っていきます。どんな状況下でも、人形をこしらえながら願うのは奈良人形一刀彫を手にとってくださる方の笑顔のみです。

どうか今年も、みなさまの節句に彩りを添え、思い出すたびに心があたたまるような人生の1ページを築くお手伝いができますように。
まだまだ修行中、たくさんのことはできない私たちですが、がんばっていきます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、実は、年明け早々にNARADOLL HIGASHIDAとして催事に出展させていただいておりました。
JR名古屋タカシマヤにて毎年開催されている、「日本の伝統展」です。

コロナ禍のなかでこれまでに経験したことのない状況となり、毎年楽しみにされているお客様のなかにも、今年は足をお運びになれなかった方もおられると思います。
百貨店スタッフ様方や出展者の方々にも、多くのご苦労があったことと思います。

NARADOLL HIGASHIDAは、初参加だった昨年に引き続き2度目の参加となり、当初は工房スタッフ全員で張り切って参加することを予定していました。
しかし、感染拡大防止の観点から、私たち見習いスタッフは参加を控えることを直前で判断しました。
気持ちとしてはとても残念ではありましたが、東田先生、恵子マネージャーのご厚意もあり、NARADOLL HIGASHIDAの節句人形とともに私たち見習いスタッフの商品「雪ん子だるま」と「奈良の鹿」もブースに並べていただくことが叶いました。

雪ん子だるまを見て「かわいい」と言ってくださったお客様の声や、海外で暮らされているお子様へのギフトとして奈良の鹿をお求めくださったお客様のお話など、催事でのさまざまな出来事を東田先生方からお聞かせいただきました。
直接催事会場には行けなかったものの、私たち見習いチームにとってまたひとつ大きな、ありがたい経験をさせていただき、感謝感謝の思いです。

「奈良の鹿」は、今回の催事にて初めて販売させていただいた商品です。
奈良一刀彫の伝統的なモチーフであり、名匠森川桂園も多くの作品をのこしている題材、奈良の鹿。
これから長い時間をかけてずっと探究していきたいモチーフの、第一歩目です。


NARADOLL HIGASHIDAらしい愛嬌と品のあるデザインを大切に、いまの私たちの技術で実現できる姿を模索して仕上げました。今回の催事で、大変ありがたいことにご好評の声をたくさんいただき、ご用意していた数が少なかったこともあり完売となりました。

今後も作り続けていきますので、またどこかでお手にとっていただくことも叶うと思います。
「奈良といえば」の鹿。私自身も大好きな鹿さんを、奈良の伝統工芸である一刀彫で表現し、多くの方に喜んでいただければこんなにうれしいことはありません。

職人の腕は、同じものをいくつもいくつも作っていくなかで磨かれていき、それがいわゆる「職人技」の気持ちよさを感じさせる魅力として作品の姿に現れてくるようになると、東田先生からも常々教わっています。
それはたとえば「こなれた感じ」や「スムーズさ」といったものとして、そのものを見た人が感じる「気持ちよさ」につながっていくのだと思います。

江戸時代に描かれた『大日本名産図会』 (文化10年刊行)には、大和の土産物として、「銘物(めいぶつ)ハさっと彫たる奈良人形 これそ春日の作といふべし」と記されています。
…私は、この奈良の鹿、まだ「さっと」彫れていないですねぇ。四苦八苦しながら彫っています。
これからもたくさん、たくさん数を重ねて、「さっと」彫れるようになること。それが、この奈良の鹿をより気持ちのいいものとして高め、奈良一刀彫らしい魅力を発揮させられる大切な鍵だと思っています。たくさん、彫りますよー!

先日、塗師の赤木明登さんとお話させていただく機会に恵まれました。
その際に伺って大変勉強になった、次のようなお話がありました。

ー 同じかたちの漆器の上塗りをいくつもしていて、「これはうまくいったな」という上塗りができることがある。それは塗師としての感覚的なもので、見た目にほとんど違いは無いようなことだけれど、展覧会に出すと、そういうものから真っ先に選ばれて購入されていくことがある。お客さんの目、人間のもつ感覚というのは、あなどれない、すごいものだ。

…というような内容だったと思います。(正確でなかったら申し訳ないです。)
このお話を聞いたときに、「工芸の魅力・底力」のようなものを改めて感じました。熟練した作り手の生み出すものには、人間の感覚に響く何かが宿ることがあるのだと思います。
その何かを言語化すると、気持ちよさとか、バイオリズムとか、きっとそういうものなのではないでしょうか。

目に見えないほどの、目立たないほんの小さなことなのだと思いますが、それが私にとってはゾクゾクするほどかっこいい工芸の魅力です。
一刀彫、奈良の鹿にも、そういう気持ちよさを纏わせることができるように…やっぱりひたすら、手を動かすことです。(何をどう考えても、結局いつもそこに至る。)



進化の過程の話。
人類は、脳が大きくなったから道具を使えるようになったのではなくて。
遠くを見るために2本足で立ち上がったので手がフリーになって、その空いた手を動かして道具を作るようになったからこそ、脳が大きく発達したのだという説を読んだことがあります。
手先を使うと、脳が活性化する。ぼけ防止にも手先を使うこととはよく言いますもんね。

だから、工芸家の先人たちの語ることは面白く奥深くて。手仕事のものづくりをしている人たちの脳はいつも潤ってスパークしている。
だから彼らの考えはとても自由で豊かで、真実味があるのではないかと感じています。あぁ、工芸、ほんとうに魅力的です。

なんていうことをつらつらと考えながら。
今年もワクワクして、奈良一刀彫を学んでいきます。

長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
2021年がみなさまにとっても、楽しみに心踊る一年になりますように。

NARADOLL HIGASHIDAとしても、そして職人見習いチームとしても、また新たな取り組みもいろいろと勘案しております。
また改めてお知らせさせていただけるよう励みます。
本年もどうぞ、よろしくお願いいたします。

NARADOLL HIGASHIDA HP
http://naradoll.com/

NARADOLL HIGASHIDA Instagram
https://www.instagram.com/naradollhigashida/


この記事が参加している募集

この街がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?