【小説】鏡の中の君〜棗藤次〜

…鏡に映る裸身の君は、どんな春画よりも美しゅうて、艶かしゅうて…

もっと鳴かせたいと、深く抉るように中を穿つと、身体が跳ねて、口紅に縁取られた口が壁に触れて、鏡の表面に情欲の花が咲く。

「も…だめ…立ってられない…」

「まだや…もう少し、辛抱し…」

泡の浮かぶ、鏡張りの浴室の中で、後背位でコトに及ぶ。

いつもは見れん背後から突き上げる時の表情は、やっぱり色っぽくて、扇情的で、官能的で…なにより、鏡で繋がってるとこ丸見えなんが、いつもより興奮が高まらせて、欲望の赴くままに突き上げて、鳴かせて、水飛沫と泡が飛び散る中、彼女を背後からキツく抱きしめて達する。

同じく達して、湯船にずるりと落ちて行く君を支えるように抱いて、浴槽に浸かる。

「…どや?興奮したやろ。鏡張り。」

「……よ。」

「ん?」

「興奮しすぎよ。あんな男丸出しの顔で攻められたら……しちゃうじゃない。」

「しちゃうて、なに?聞きたい。」

背後から抱き締めて、赤く上気した頬に張り付いた髪の毛を弄びながらその顔を覗き込むと、プイッとそっぽ向きよるから、無理やり手でこっちを向かせると、真っ赤に染まった君の顔に、胸が高鳴る。

「言わせないでよ…バカ…」


「そんな可愛い顔見れんねやったら、バカで結構…」

そうして深く口付けをして、そっと耳元で、いつものように囁く、君と俺の愛詞(あいことば)


「好きや…」


「…ワタシも、好きよ。藤次…」


鏡に映る赤い唇が湯気に溶け、ニタリと妖しく嗤ろたんは、きっと何かの錯覚やろ…

そんなことを考えながら、君の濡れた肌に、そっと口付けた…


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