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儀式

まず白い模造紙を広げる。幼稚園で使うからと買っておいたもので横1メートルくらいありそうだ。そこに大きく二重丸を書く。マジックでいいや。大きなコンパスなどあるはずもない。気をつけて書いたつもりだけれど丸は歪んでしまった。大丈夫だろうか。

そこに星形を書く。五芒星だったか六芒星だったか詳しくないので分からない。とにかく、星形を書いて、大きい丸と小さい丸との間に文字を書く…文字?文字って何を書くんだろう。調べてみるとギリシャ語やヘブライ語で神様か天使の名前を書くらしい。ギリシャ語?うーん、日本だから日本語でいけるだろう。神様の名前ってヤマタノオロチ?は倒される方だから、えーっと草薙の剣?いやそれは武器だし…確か菅原道真が学問の神様だった筈だ。とりあえず、漢字で菅原道真と小さい時に亡くなった祖母の名前を書いた。

次に四隅にロウソクを立てて火を灯す。星形は角が5個あるのに四隅って何だ。分からないままロウソクを引っ張り出す。一つは大きなロウソクで花やフルーツが入っている。火を灯すとボタニカルな香りが部屋に広がった。二つめは小さな瓶に入った金平糖みたいなロウソク。マンゴーの甘い香りがした。三つめはカップケーキ型。やっぱり甘い香りがする。最後の一つはサンタ型。頭に火を灯す。特に集めていないのに何故かプレゼントされて捨てられずにいたロウソク達。災害時に使うかな?と思っていたけど儀式に必要だったとは。とりあえずだけれど何とか役に立ってくれますように。

ついに玄関で呼び出し音が鳴った。

深呼吸して、召喚呪文を唱える。

あれ、召喚呪文って何だろう?調べている余裕は無い。

もう一度、呼び出し音が鳴る。どうしよう。

オモチャで散らかり放題の居間を見る。「近くまで来てるから、今から行くわね。」と電話が来たのは10分前だった。片付ける時間なんて無かった。玄関の外にいる義母は合鍵を持っている。居留守は出来ない。なんとかして、義母の義母を召喚して助けてもらう他ない。

エロイムエッサイム、ザオリク、パルプンテ!

玄関の外で義母の声がする。

「おかしいわね。ユウマのオムツでも替えてるのかしら。百合さん?チーズケーキ買ってきたわよ。」

すぐ開けます、お義母さん!!

え!?サポートですか?いただけたなら家を建てたいです。