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文才の無い私たちの、「文章の"作り方"」のかけら(15,365字くらい)

(時間の無い方→3~6へ。※本書をヒントに書かれたnoteは必ず読みに行きます。ご連絡ください。追記要望などお気軽にどうぞ。

文章を書くノウハウは身の回りに溢れています。有りすぎると言っても良い。ところが活用する段で大抵上手くいきません。「で、どうしたらいいの・・?」と。キャリアや経験に裏打ちされたもの(プロのノウハウ)だったり、肝心な悩み所が端折られていたりして、絵にかいた餅になりがちです。本noteでは「書けない呪縛から解き放たれる具体的な方法・思考パターンを例を示しながら記載します。まずはご一読を。(つまみ食いで結構です。)

1.はじめに(「ニワトリと卵」の話・「文章を書く」とは・本noteの対象読者)

「ニワトリと卵。一体どちらが先に生まれたのか。」

ニワトリと卵、一体どちらが先に。永遠の命題のように語られがちですが、科学に裏打ちされた結論が出ていることをご存知でしょうか。先に誕生したのは、そう、「卵」。ニワトリではありません。一体、なぜでしょう。

“ニワトリ” と ”卵” の対象を冷静に捉えてみます。ニワトリは鳥類の一種。卵は、ニワトリを含むほぼ全ての鳥類が産み落とします。虫も、魚も。ニワトリはこれら全ての種の発端ではないわけですから、答えは「卵」。QED。めでたし、めでたし、というわけです。

「文章を書く」とはどういうことか

もちろんこれは屁理屈で、ご指摘の通り、卵の前には 「ニワトリの という5つの文字が息を潜めています。わざわざ表に出る必要がない。なくても文が通ってしまう。正確に述べようとして、「ニワトリの卵とニワトリ。一体どちらが~」とすると、どうも歯切れが悪い。だから省くわけですね。

文章を書くとは、乱暴に結論付ければ、1つの結論を、あらゆる例え(比喩)を駆使して劇的に飾り立てる行為です。稀代の小説家、村上春樹氏は次のように述べています。

小説を書くというのは、とにかく実に効率の悪い作業です。それは「たとえば」を繰り返す作業です。ひとつの個人的なテーマがここにあります。小説家はそれを別の文脈に置き換えます。「それはね、たとえばこういうことなんですよ」という話をします。ところがその置き換え(パラフレーズ)の中に、不明瞭なところ、ファジーな部分があれば、またそれについて「それはね、たとえばこういうことなんですよ」という話が始まります。その「それはたとえばこういうことなんですよ」というのがどこまでも延々続いていくわけです。(村上春樹著 『職業としての小説家』 より ※1)

“たとえ”を駆使して世界を表現することは、学術論文でもない限り、文章を書く上での宿命です。プレゼンテーションに日々のコミュニケーション。何かを表現する場であれば同様ですね。「○○みたいな」とか「△△的な!」の無い会話がどのようなものか。想像もつきませんが、最低限の情報だけを伝達する、というのはかなり味気ない意思疎通のしかたではないかなと。

読者を引き込むリズム感

冒頭の「ニワトリ」の話に戻りますが、着飾った外観は、それでいて滑らかな、まとまりある状態が理想です。滑らかさに誘われて、読み手は無意識のうちに先へ先へと歩みを進んでいきます。文章全体の長短は、極論、関係ありません。先の一文のように、できるだけ滑らかに、滞りなく。時折エッジの利いた比喩が、文章にリズムを生み出す。そんなイメージです。

「天才」と才の無い私の違い

自分の書き方でずんずん書けてしまう人は、ここでお別れしましょう。文学賞などの客観的評価の有無(他人好みか否か)はさておき、それは文才があるということです。才能とは「何となく無意識のうちに繰り返している行動の集合」であり、簡単に言えば、ついついしてしまっていることです。乳幼児のようにいつでも自分につきまとう「才能」を自覚するには、それを見ようとする意識的努力が欠かせません。noteには、書かずにはいられない、という隠れた天才が多い。

残念ながら、私には文章を書く才能がありません。手や口や頭から、小気味の良い音とともに文章がプリントアウトされてくることはありません。だから私は文章を作っている。勝手に出てこないなら、作るしかありません。凡人には凡人の向き合い方があると思う。以下に記すその工夫の一端が、私のように「才能は無いが文章を書きたい」という方の一助になれば良いなと願います。前置きが長くなりましたことご容赦下さい。

2.ノウハウ→行動へつながる例示

冒頭述べた通り、ノウハウは行動に移れるようになってこそ価値があると思っています。そこで、過去に記載した以下2つのnoteを例に挙げながら、3.以降に具体的な思考の進め方、文章の作り方を書いていきます。(作り方→例示を繰り返すことで、「書く」という行動に直結しやすくなるはずです。)

<例1>

<例2>

※3.以降に記載する「具体的な作り方」を読んでからで構いませんので、上記noteを覗いて、文章を作っていくプロセスをイメージしてみてください。

3.書く前にすること(テーマ決め・テーマが浮かばない時の対処案5つ)

(1)テーマの明確化

まずは、テーマを明確にしましょう。テーマとは“タイトル”ではありません。書き出しや結びの一文でもありません。もっと原始的な着眼点、いわばnoteを作り始めるスタート地点です。端的にいうと「今から書くnoteに込める想い」です。(タイトルとは、それをキャッチーに示すワンフレーズのことです。)

テーマが明確でなければ、読み手はnoteを頭の中で「なるほど、こういうことが伝えたいのか!」と要約できません。要約できないことは理解できません。どことなく、もやっとした想いを抱えることになります。そうしたnoteに共感したり、感想をコメントしたりすることはできないのです。理解できないわけですから。

先日、「キナリ杯」というイベントを企画中の岸田奈美さんが、公開で即興エッセイを執筆するという驚くような試みをされていました。大分盛り上がっていましたので、ご覧になった方も多いのでは?本文の上に、書きたいことの小見出しのようなものが箇条書きされていたのが印象的です。ただ何となく書いたらエッセイができあがったということではないことが分かりました。

とても素敵なエッセイですので、ぜひご一読してみて下さい。

(2)テーマで見栄を張らない

岸田さんのような、「人間愛に満ちた素晴らしいエッセイ」を書かなくてはいけないと思うと少し腰が引けてしまいますが、別に感動を呼ぶもの、面白いもの、誰かの役に立つものである必要はないのです。自分が興味、関心、関心をもっていること、人。あるいは興味を「もってみようと思ったこと」でもOKです。例えば、

・Word文書の保存ボタンはなぜ未だにフロッピーマークなのか、他のものに変えたら何が良いだろうか考えてみよう
・あの大嫌いな政治家の、過去に実施した人のためになる良い政策や功績は無いか探してみよう

とか。「こんなテーマは…さすがにどうかな。」と思ったものでも、具体的でありさえすれば「こういうことが言いたいんだな」と理解してもらえることができます。当たり前ですが、何でも良いわけです。

何でも良いと言われても…と思うかもしれません。noteに書くほどのテーマはなかなか思いつかない、と。重要なことですが、自分にとって身近な、「少しくだらないかな?」くらいのことの方が、意外と筆(タイピング)が進むものです。貴方の当たり前が、他の誰かにとっての当たり前とは限りません。何万のnoterさんに見られている…などと敷居を上げずに、まずは楽に書けそうなテーマ、アイデアや自分の意見がどんどん浮かんできそうなテーマを探してみることが大切です。

・自身のnoteでの思考例

例1:育児はやってみると随分大変だが、なぜ大変なのかやる前はよくわかっていなかった。ここを明らかにすることで、妻側が夫側にその大変さの原因をビジネスライクに説明できるような文章を書き、家庭内不和が減ればいいな。
例2:世の中、利他的、利他的、というけれど、「貴方のためにやったのに、恩を仇で返して!」などと言われたりする。頼んだ覚えも無いのに。この矛盾は、なぜ、どのように起こっているのかを明らかにしたい。

堅苦しい内容ですけど、誰に頼まれて書いているわけでもないわけですから、自分の率直な疑問や想いをテーマとして書けば良いのだと思います。重要なのは、質(本来そんなものはないわけですが)より解像度、具体的であることだと思います。ふんわり系のエッセイや小説でも、抽象的な中に具体的な視点が隠れています。(無自覚に書けてしまっている方がほんと羨ましいです…)

(3)テーマはnoteの出発点

テーマは、noteの出発点だと思います。書くことと同じくらい、身の回りのモノや行為を不思議がってみたり、日頃と逆の発想をしてみたり、眼鏡を掛け替える工夫が重要です。新しい目で見てみることで、苦手や嫌いが克服されるかもしれません。私は長年“こんにゃく”が苦手なのですが、noteに書けばその良さに気づき、あるいは克服されるのかもしれません。。。

「こんなテーマや題材、失礼にあたらないかな?」好きなものほど思い入れは募りますが、執筆を通して貴方が成長する姿自体、書かれる方も嬉しいはずです。胸を借りる気持ちで、最低限の礼儀を忘れず、堂々と書いてしまって良いと思います。

(4)テーマが浮かばない時に使える作戦

①以前の自分のnoteを利用する… 以前は気づかなかったこと、心境・受け止め方の変化、以前のnoteで中途半端に触れた内容の掘り下げ等

②他人のnote・SNSを活用する
 … 好きなnoterさんのnoteの感想、共感できる点、自分なりの解釈、お洒落だなと思った表現等に理由を添えながら触れてみるのはいかがでしょう。(noteを引用されると喜ばれて交流に発展する可能性も。)

③オズボーンの9つの発想法で眼鏡をかけかえる

【オズボーンの発想法】
・転用:新しい使い方はないか?他の分野での使い道はないか?
・応用:他のアイデアから応用できないか?似た商品のアイデアを使えないか?
・変更:見た目を変えられないか?意味を変えられないか?
・拡大:大きくできないか?地域を広げられないか?
・縮小:小さくできないか?機能を減らせないか?
・代用:他の物で代用できないか?他の素材で代用できないか?
・置換:配置を入れ替えられないか?順序を入れ替えられないか?
・逆転:順番を逆にできないか?考え方を逆にできないか?
・結合:何かと組み合わせられないか?真逆のものと組み合わせられないか?

  上記の視点で、常識に対する自分なりの意見・見解を発想し、noteにぶつけてみるのも楽しいかもしれません。

④ジャンルを変えてみる
 … 自分があまり書こうとしていなかったジャンルに飛び込んでみるのもありです。例えば、

   ・小説の中でテーマを考えてみたけどエッセイにしてみる
   ・エッセイを考えてみたけど読書感想文を書いてみる
   ・読書感想文を考えてみたけど手軽な手製料理を紹介してみる
   ・文章を考えてみたけど、写真や音楽を紹介してみる

  等々。拘りたい文章と、書ける文章は意外と違うものだったりするかもしれません。私も、最初は経済学やビジネスに関する小難しい話を書きたかったのですが、大変書きづらく、いちいち調べたりする労力も尋常じゃないので、今は自分が何を考え、言葉をどう定義しているのか、がnoteに書く中心テーマの抽象物です。

⑤普段何気なく使っている言葉の定義や文法について考えてみる
 … 私たちは、何となく言葉を用いていますが、実のところよく分からず使用したりしています。(言葉はそうして変わるものなので、それが悪いわけではありません。)

・難しい言葉について小学生にもわかるくらい簡単に書いてみる(概念、観念、抽象、蓋然、etc)
故事成語、ことわざについて書いてみる
・普段使っている簡単な言葉を、かっこいい表現に変えられないか探して書いてみる
・好きな文字、気になった言葉の語源や本来の意味、愛用している商品の成り立ちやキャッチコピー等について調べてみる
他国の言語に置き換えてみる(「お先に失礼します」「よろしくお願いします」なんかは、英語にはあまりないニュアンスです。)

調べる前後で自分に起こった変化(調べる過程で得た知識や、難しい言葉への向き合い方、過去の経験で未来に生かしたいと思ったこと等)を追記すると、書き手の人間性が見えて共感しやすそうですね。

⑤のメリットは、自分の表現自体がどんどん豊かに、幅広くなっていく、ということです。どうやってその候補を探そうか、といえば、好きな文章や小説を当ってみるのが良いでしょう。大好きな作家が選んだ言葉の意味も知ることができて、一石三鳥です。

他にも色々アイデアの考え方はありますが、長くなりそうですので、この辺で切りたいと思います。

  ※オズボーンの発想法は、ゼミ活動でオリジナルの経済政策を考えていくときに活用したチェックリストで、上記のような視点で既存の政策を見直していくことで、皆で新しい着想を得ていました。ビジネスシーンでのアイデア出しでも有効な視点だと思いますので、ぜひ日頃から発想を広げるトレーニングにご活用ください。

4.書き始めに意識すること(比較・たとえ・仮書き出し・仮締め)

(1)比較の構造で核の書き出しを

文章の核になる部分を、何となくぼんやりと書きだしましょう。完璧な文章ではなく、イメージが捉えられればOKです。その際、テーマについて文章中に比較の構造(A vs B)を作ると書きたいことが多面的に浮き上がり、読み手の理解が深まります。

・自身のnoteでの思考例

例1:育児の大変さは、作業自体ではなく、思い通りにいかない(時間も相手もコントロール不可な)点。ここに焦点をあてねば。仕事は上司に怒られるといった大変な部分もあるが、大抵のことは管理可能。ゆっくり珈琲を飲む時間もあるし、頑張れば褒められたり、金を貰えたりといったことで承認欲求も満たされる。(育児vs仕事の比較)
例2:「相手のために」というのは嘘で、「相手に貢献したい、喜ばせたい相手のためにやっている」のが本質なのではないか。ということは、言ってしまえば、あらゆる行為は利己的だ。“利己”と“利他”を両立させるためには、対価を求めずみんなが「自分のためにやっている」という利己性を自覚すればいいだけだ。(利己vs利他の比較)

・比較構造の無い文章は読みづらい

比較構造の無い文章は想像以上に理解しづらいです。私たちは、何かと比較することで、何かを定義しています。 中国の共産主義はアメリカの資本主義と比較されて論じられます。貴方の好きな小説には、必ず複数のキャラクターが登場し、その関係性の中で主人公像を立体的に浮かび上がらせているはずです。布マスクが高いとか安いとかいう議論も、他のマスクの価格や性能との比較の中で無意識に判断しているのです。比喩やたとえとは、その対象が他と異なっている点を際立たせる役目も担います。明確に書き出す必要は無いのかもしれないですが、読み手がその構図を無意識で理解できるようにしましょう。

・比較の構造は既に頭の中にある

比較構造を作ると書きましたが、別に難しいことではありません。むしろ、何かを書こうとするとき、貴方の頭の中には必ず比較構造が出来上がっているはずです。「◯◯が好き!」という場合には、「◯◯以外のものより」という前提があるはずです。3.11の話であれば、平和な日常という比較元がありますし、リフレッシュであれば緊張感のある日常との比較があります。今の私であれば、過去 or 未来の私と比較することもできるでしょう。「作る」といって文章内で明記するより、その構造を他者が認識できるように、さりげなく補足してあげることが大切です。

・様々な比較の形がある

比較は必ずしも A vs B(対立構造)である必要はありません。A1 vs A2(好きなもの、似た者同士の比較)でもOKです。それが複数にまたがっても問題ありません。書きたいものが、他のものとの比較の中でどうか、という部分が浮かび上がることが大切です。貴方の好きな文章には、必ずこの構造が隠されています。

(2)比喩や例えの方向性を考える

文章の核について、読み手にイメージを想起させることができそうな例え話や比喩の方向性を考えましょう。

・自身のnoteでの思考例

例1:職場のデスクの横に常に子供がいる場面を書いて、育児のアンコントローラブルな面を想像してもらおう。
例2:迷惑な利他的行為について伝えるために、「押し売り」というような表現を入れよう。

以上のように、独り言のような感じでOKです。

前置きで触れた通り、文章とは、大なり小なりのたとえや比喩を駆使して読み手にメッセージを届ける行為です。 方向性について悩んだときには、具体的な読み手を1人意識して、その人が関心を持っていそうなことを用いると良いと思います。読み手は、noteの読み手でなくても構いません。家族や友人、恋人、未だ見ぬ第三者、自分。誰でもいいのです。 書きたいことと同じくらい、どんな人に届けたいかを具体的に意識することが大切です。使用するたとえや比喩も、相手の性格や思考にあった、イメージしやすいものだと良いですね。

(3)仮のタイトル or 書き出しを考える

どのような書き出しで始めるか、方向性を考えましょう。(綺麗な文章にしようと思うと挫折するので、こんな感じかな、という雰囲気や方向性だけを具体的に書き出してみます。)

・自身のnoteでの思考例

例1:ビジネスパーソンで育児に精を出している人がtwitterにいたので、その人の話から始めよう。確か、「育児はクリエイティブ」という素敵な表現があったので、私自身の認識の変化から書き始めよう。
例2:「人のため」という行為は、「自分のため」に割く労力が減っていて、余裕があるからできるようになったのだろう。そういえば、先日街で喧嘩を見かけた。暑いし、ストレスがたまっているのかな。現代人はエネルギーが有り余っている、という話からつなげて書いていこう。

書き出しはとても重要です。コンビニにはたくさんの清涼飲料水が並んでいますが、私たちは無意識にラベリング(+価格)で商品を選択します。手に取ってもらえなければ、飲んでもらうことはできません。良い書き出し方が浮かんだら、少しずつ上のイメージを文字にしていきましょう。浮かばなければ、一通り書き終わった後でも大丈夫です。(書き出しに悩んで本文を書く気が薄れては、本末転倒です。)

(4)仮の”締め”を考える

どのように締めるか、方向性を考えましょう。(こちらも(3)同様、綺麗な文章にしようと思うと挫折するので流れだけでOK)

・自身のnoteでの思考例

例1:家に帰ることを促す一文を入れよう。飲み会とかゴルフを理由に家を空けることが「恥ずかしい」と思えるような結びにしよう。
例2:自分のためにする行為が、結果的に相手のためになる、それでいいじゃない。という風に締めたい。 自分のために育てた木になった果実が、相手に喜ばれるとか、そんな感じの結びにしよう。

本文を書き進める中で着地点を変えたくなることはよくあります。その際は、思いついたアイデアを書き留めておくと良いでしょう。

(5)注意点

(1)~(4)は、あくまで仮の骨格です。書きながら変わったって良いですし、むしろそれは健全なことだと思います。人の頭の中には、思考が形を帯びない状態でぐるぐる渦巻いています。書きだすことで、自分が何を考えていたかが初めて分かることだってあるわけです。プロのコンサルタントは、紙とペンで顧客の頭の中身を描き出し、顧客自身が気づいていなかった、考えてもいなかった課題発見に努めます。日記も同じですね。自分の悩みや思考が具体的な形を帯びることで「なんだ、こんなことで悩んでいたのか」と安心できることがあります。仮決めだ!とラフに取り組んで、次の段階に移りましょう。未完成なものを直視する勇気が文章を作る上で最も重要かもしれません。

5.文章を書く(ひたすら書く・嫌になった時の対処)

(1)もりもり書く

以上で、書きたいこと、書き出し、結び、たとえの方向性が一応揃いました。文章が1~10で構成されるとして、1、4、7、10辺りのマイルストーンが決まったので、2、3、5、6、8、9をその間に落としていく、というイメージです。ここからは、ひたすら間を埋めるべく書くのみです。書けるところからとにかく書く。もりもり書く。どんどん書く。書く、書く、書く。

体裁は気にしないようにしましょう。人は、一度に複数の事ができません。体裁を整えている間、思いついたアイデアが失われて行ってしまいます。
良いと思った表現、フレーズ、比喩が2~3同時に思いつけば、忘れないうちに全部だーっと併記しておくと良いでしょう。冷静な頭でゆっくり校正するので、書くときは書くことに集中してしまいましょう。

(2)書くのが嫌になったら

注意点として、その文章(あるいは文章中に挿入したい一文、または一文を構成する例えなどの一要素)について書けない時が必ず訪れます。私たちは天才ではありません。嫌な気持になる前に、他の文章や段落、全く異なるテーマについてなら書き進められないか考えてみたり、いっそうスパッと止めて、他のことで気分転換を図りましょう書けない→無理やり書こうとする→やはり思いつかない→書くのが嫌になってくる→自分には書く資格が無いのだと思ってしまう→更に書けない、といった負のスパイラルに陥る前に切り上げることが大切です。

三上(トイレ、枕、移動中はアイデアを思いつきやすい三大場所だ)という言葉がありますが、頭を使わずにぼーっとできる場所で、電球が灯ることも少なくありません。皆さんも、そんな経験あるのでは?パソコンに向かわない時間も同様に、貴方の血となり肉となり、貴方の文章を形作っています。

6.校正(構成・加除・分解・テンポ・解像度 等)

どうにかこうにかできあがった文章。はやる気持ちもありますが、投稿する前に一読することを、ぜひお勧めします。客観的に見ると、読みづらかったり、分かりにくかったりする部分が浮かび上がってきます。読みづらいだけで、せっかく書いた文章が読んでもらえない、というのは一種の悲劇です。以下のようなポイントを気にかけながら、文章の表面を滑らかに削り上げましょう。

・文章の構造、段落の順番の見直し(こっちを先に持っていた方が、伝わりやすそうだ。)

例1:ビジネスの話題⇒育児という一方通行の展開より、ビジネス⇒育児⇒ビジネス⇒育児と行ったり来たりしながら例示した方がイメージがわきそうだ。
例2:他人にお節介をやきたい人がいる⇒それはエネルギーが余っているからだ、という展開より、エネルギーが余っていることとその原因を説明してから、お節介の話をした方がスムーズかな。

・内容、比喩の追加、削除(ここ、読みづらいからバッサリ削ろう、ここは、逆に何か例があったほうが伝わるかな)

例1:ビジネスに精を出す(とPRしたい)男は、ビジネスと育児を異なるものと分けたいきらいがある。育児のたとえの中にも、ビジネス的な用語(PDCAとか)を入れた表現を追加しよう。
例2:エネルギーが余っている⇒相手にお節介する、だと納得感が弱い。現代は生活保護とかセーフティネットが整っていること等も根底にありそうなので、そのあたりの例として入れておこう。

解像度も意図にあわせて見直してみると表現が変わるかもしれません。
… 例えば、「生命力」ということを表現するときに、宇宙なのか、地球等の1つ1つの星なのか、地球のある国なのか、地域なのか、あるスポットなのか、その中の1区画なのか、その中の1本の木や草や花なのか、その対象の一部分(枝・葉・花弁 等)なのか、その中の一要素(葉脈、クチクラ、樹皮 等)なのか、細胞なのか、細胞の中の様々な器官なのかなど。同じものでも、どこまで細かく(粗く)見るかで、表現って大分幅が広げられそうですね

・不要な接続詞(そして、しかし、けれども 等)、主語(私、貴方、彼、彼女 等)、指示語(これ、それ、あれ、どれ 等)、助詞・助動詞などの削除

一文を二文に分けられないかの検討(機能する限りできるだけ短くする。逆に、機能していれば、どれだけ長くても良い)

例1:
【修正前(例)】
先日、私が何となく「Twitter」を眺めていると、確か、外資系企業の管理職として活躍中のある方のアカウントのツイートの中に「育児はクリエイティブ」というとても気になる表現を見つけた。私には、そのことがとても新鮮な驚きだったし、それと同時にとても共感した。確かに、育児はとてもクリエイティブな行為だと思う。(3文)

【修正後】「Twitter」だっただろうか、あれは。確か、外資系企業の管理職として働く男性ビジネスパーソンのものだったと思う。「育児はクリエイティブ。」その"朝どれレタス"のような瑞々しくも新鮮なフレーズに、いたく共感したことを今でも覚えている。そう、育児とは「クリエイティブ」な行為だ。(5文)
例2:
【修正前(例)】
最近暑い日が続いているし、湿度も高いし、不快指数が高まっているということもあるのだろうが、私は街中でよく喧嘩をする姿を目にする。その喧嘩をする姿というのは、お互いに殴り合うまではいかない、具体的には胸ぐらを掴んだり、罵声を浴びせたり、睨みつけたり、要するに相手を威圧するとか、そういう程度のものでしかないわけではあるのだけど。(2文)

【修正後】
茹(う)だるような暑さのせいだろうか。街中で、喧嘩を目にする機会が多くなった。上限いっぱいの不快指数を身にまとい、なおメーターを振りきらんばかりに争う姿。争うといっても、せいぜい相手の胸ぐらを掴んだり、罵声を浴びせたり、睨み付けたり。「怒れる私」で相手を威圧し、発散している。せいぜいその程度のことだ。(5文)

体言止め(名詞で終わらせる)や、倒置(語順を入れ替える)を使うと、一文がグッと短くなります。

・母音(a, i, u, e, o)を揃える(同じ母音を一定間隔で何個か並べるとリズム感がでます。)

こういうことを述べると、「ああ、nemutai(iの音)さんはさぞ冷たい(iの音)人間なのだろう」とお感じ(iの音)になる方があるかもしれない。(iの音)"文字"(iの音)という限られた伝達手段で想い(iの音)を適切に伝えることは、殊の外難しい。(iの音)解(aiの音)ない(aiの音)でいただきたい(aiの音)のは、私は「ボランティア」を否定するつもりはない(aiの音)し、「結果として人のためになった行動」が確かに(aiの音)在(aiの音)することを承知している。

自覚無かったのですが、鍵になる部分だけは、私は結構このリズム感を重視しているようです。きっちり等間隔でなくても、定期的に同じ母音が出てくると耳障り良いですよね。(あまりやり過ぎるとラッパーさんみたいになりますが…)

音を揃える、という視点でのポイントは、同じ語で揃え続けないことです。品詞(名詞とか)を変える、同じ品詞の異なる用法を用いて音を揃える、などにより、わざとらしさが薄れ、読み手のノイズにならないと思います。

(aiの音=名詞の一部)しない(aiの音=助動詞・未然形接続)でいただきたい(aiの音=助動詞・希望)のは、私は「ボランティア」を否定するつもりはない(aiの音=形容詞)し、「結果として人のためになった行動」が確かに(aiの音=形容動詞・連用形)存(aiの音=名詞の一部)することを承知している。

ポイントになる文章で、2~3か所韻を踏んでみると滑らかに読みやすくなるかもしれません。読みやすい方の文章は、大体韻が踏まれている気がします。

※韻を踏むなんて難しいよ!という方は、難しく考えられていると思います。まずは、下記の中で組み合わせを選んでみてください。慣れるとほとんど無意識でできるようになります。(例のセンスが無いのはご愛敬です。)

音リスト
"aの音"
:①感嘆(ああ ・そうだ・そうか)、②過去形(~た、した)、③断定(~だ・~な)、④疑問(~か)、⑤指示語(こちら、そちら、どちら、あちら)⑥"あ"で終わる名詞(赤・miwa・ボランティアetc…)
"iの音":①形容詞(全部"い"で終わる)、②~否定の"ない" or "なし"の組み合わせ、③動詞の活用(~しない)、④指示語(こっち、そっち、あっち、どっち)⑤"い"で終わる名詞(香り・意識・エッセイetc…)
"uの音:①動詞(全部"う"で終わる)、②否定(~ず・ざる)、③推測(~だろう)、④疑問(どう?こう?)⑤指示語(こう・そう・どう)⑥"う"で終わる名詞(空・感覚・トリアージュetc…)、⑦相槌(ほう…、もう…)
"e"の音:①感嘆(え!?・えー…)、②並列(~て、~で)、③動詞の活用、④指示語(これ・それ・あれ・どれ)⑤"え"で終わる名詞(絵、入り江、ぐうの音、カフェetc…)
"o"の音:①感嘆(おー!)、②並列(~と、~の、~も)、③指示語(この、その、あの、どの)、④目的(~を)、⑤"お"で終わる名詞(子ども、まどみちお、チョコレートetc…)

複数母音の組み合わせで韻が踏めると、より気持ち良いです。お試しあれ。

・句点の位置を見直してみる(句読点を変えるだけでも大分リズム感が変わります)

・より適当な熟語、言葉、表現の模索(インターネットで「○○(スペース)二字熟語」とか「△△(スペース)故事成語」などと調べると、良い感じの言葉がたくさん出てきて、語彙も増える。

例1:
・ちょっとだけ注意を払う ⇒ 一瞥する
・社会の不合理が自然に解消されるはずのメカニズム ⇒ 神の見えざる手
・それなりのお給料 ⇒ 高給 等
例2:
・手足 ⇒ 四肢
・~することは全くない ⇒ つゆ ~ ない。
・笑っちゃうようなおかしいこと ⇒ 滑稽 等

※テーマ上、記載例が、固い表現ばかりですみません…ふんわりエッセイ向けの表現も、探せばたくさんできてきます!

以上の校正を経て、メデタク完成です。お疲れ様でした。あとは、タグと写真を付けて、アップロードするのみ。アップロード後、もう一度他人が読んでいる気持ちで見返してみると良いかもしれませんね。(私も、投稿後にコソコソっと修正することがあります。。)

7.まとめ

私が気を付けていることを3つにまとめると、以下のようになります。

① テーマを明確にする。

 … 肩肘張ったテーマでなく、多少砕けたもので良い。対比構造で、テーマを立体的に見せる。

② 比喩で着飾る。

 … テーマ外のものを移植すると新鮮さが増す。(比喩を考えるときは、例えたいものの要素を2、3書き出すと良い。例えば、「か弱い人間関係」なら、弱い+つなぐ=ホッチキスとか、気楽に発想していく。)

③ 流れを作る。

 … 文章はシンプルに、機能を保ったままできるだけ短く、滑らかに。②やインターネットで新しく習得した語彙、表現でアクセントをつける。

※以上3~7までの要素は、あくまで1つの視点やテクニックであって、言うまでもなく全部行う必要はありません。先ほども書きましたが、自分のスタイルでどんどん書き進められるならそれが一番いいわけです。書くことに悩んでいる方にとって、悩んでいるときにだけご活用いただければ、それがいちばん嬉しいです。

他にも細かい工夫はあるのですが、大分長くなってしまったのでこの辺で。ご興味のある方は、返信欄やwitterのDM等で気軽にご質問下さい。

・過去に記載した文章の書き方に関するnote(①~④+番外編)

※①の文末に②以降のリンクを貼り付けています。そのまま読み進めてみてください。

8.おわりに(文章を書く意義とは?)

こうして書き進めると、「いったい文章って何のためにある(書いている)んだ?」という気持ちになるかもしれません。才能も無いのに、書いてどうなるんだ、と。端的に言って無駄なことに時間を使ってやいないか、と。村上春樹さんは先ほどの著書の中で、次のように続けます。

だから「世の中にとって小説なんてなくたってかまわない」という意見もあって当然です。(中略)効率の良くない回りくどいものと、効率の良い機敏なものとが裏表になって、我々の住むこの世界が重層的に成り立っているわけです。どちらが欠けても(あるいは圧倒的劣勢になっても)、世界はおそらくいびつなものになってしまいます。」

自粛続きの憂鬱な生活の中で、無駄に見えるあらゆる要素が、私たちの生活を鮮やかに染め上げていた、という事実に、皆何となく気づいているはずです。無駄なものは無い。いや、無駄こそ尊い。貴方の無駄が、未だ見ぬ誰かの、今日を彩る一色になるかもしれない。新規の方も、書くのをやめていた方も、これを機に、note一筆いかがでしょうか。本noteがその一助、いやほんの些細なきっかけとなってくれれば、これほど嬉しいことはありません。それでは明日も、noteでレッツステイホーム。

おしまい。
(参考になりました点についてコメント等をシェア頂ければ、note改善に役立てられます…🙇✨)

9.あとがき(技術批判への私なりの解)

これまで記載してきたような、いわゆる「露骨な技術論」みたいなものをよく思わない方もいるでしょう。

・エッセイとは自分の心の赴くままに書くものだ。
・技術の上に言葉を落としていくのは、私は違うと思う。

お気持ちはよくわかります。

エッセイの良さの1つは、言葉や表現を選んだ時の「ミステリアス」な部分にあって、つまるところそれは「いかに隠せるか」ということでもあると思います。テクニックを露わにするというのは、そういう神秘性のベールを思いっきり剥いで、ネタのばれた手品を見せるに等しい。技術的な話の裏には、何となく人工物の厭らしさがありますよね。

書ける人は、そういう技術の多くを既に身に纏っていて、ほとんど無意識的に手を動かしています。読書量なのか、文章を書いてきた量なのか、何によるのかは分かりませんが、リズムにしても、andanteとかallegroといった、自分に心地良く響くテンポが何となく確立されている。

書けない人には、それがなぜできないのかが分かりません。だから、書きたいことはぼんやりあるのに、なかなか筆が進まない。幸い少し書き進めることができても、途端にそれが陳腐なものに感じてしまったりして、ワーっと消して無かったことにしてしまったりする。この世に生まれるはずのものが、自己嫌悪で消えてゆく。言ってしまえば、悲劇ですよね、これって。

私もかつて、日本語で書かれているはずの文章が理解できなくて、「なぜ同じ授業を受けているのに、同じ日本語で書かれた文章が私だけに分からないのか」と、ずっと疑問でした。簡単な話で、私は文章の読み方、論理的に情報を区別していく術を知らなかったんです。幸い、ほんのわずかなきっかけで解消されましたが、それまで文章というものが大嫌いでした。文章が読めない自分が嫌いでした。

昔ピアノを習っていたのですが、ピアノって耳に心地良い音階や奏法がある程度確立しています。それを知っているか知らないか。ランダムに弾いて不協和音を避け続けるのって、天才にしかできないんです。息子に適当な和音を組み合わせて玩具のピアノを弾くだけで妻は目を丸くします。チェスや将棋も同じ。定石という手を押さえた上で、組み合わせ方に個性が光る。定石はスタート地点であり、むしろ個性を拡げる道具であるはずです。

だからこそ、技術というか知恵というか、そういう視点みたいなものに触れる機会は平等にあって良いと思います。本質はその先にあって、「こりゃ要らんわ。」というものは使わないという選択をとれば良いだけだと思います。私はPVを集めるための技術には好感が持てませんが、書きたいものを表現する武器が広まることはとても有意義なことだと思っています。#noteの書き方 も、そういう趣旨の企画ではないでしょうか。

もっとも、技術は使われなくては意味がありません。「こういう技術がありまっせ」と横から横に展開するだけでは何にもならないのです。

技術が提供できる価値はたんなる「きっかけ」であり、文章の良さは、それを血肉にする過程ではじめて高められていくのだと思います。

本noteの担える役割はその程度ですが、一助となれば幸いです。

※ 冒頭引用した『職業としての小説家』には、著者の小説に対する考え方だけでなく、動機やライフスタイルにも触れているので、ご興味ある方はぜひご一読を。

おまけ。(余談サンドイッチで恐縮です。。)

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本当のおしまい。

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