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夏の日のミニオン。

夏休みも終盤戦。

休みと言っても休むのは4歳の息子、その人だけである。本日から私は仕事に戻り、妻は日中、息子にかかりきっきりになる。それは文字通り戦いに他ならない。

ビジネスシーンでは、基本的に「そうですね。」とお膳立てがあるものだ。スーツに負けないくらいみんな社会人を着飾り、物事がパパパッと進んでいく爽快感。こちらは、そうもいかない。

ゆっくり回る室外機、電車の玩具の車輪の具合、絵本に出てくるキャラクターの振る舞い、STAFF ONLYのドア文字に、果ては勤務先のオフィスの状況まで。あれやこれや、ますます色々気になるようだ。その都度、お給料を貰って接している取引先の誰某よりずっと丁寧に、あの手この手で説明しても、少し時間が経つとまた気になってしまう。仕方無いよね。考えれば、「同じ質問はできるだけ繰り返さない。」とは、社会人になってからのマナーだ。

「酷暑日」なんて言葉もできるくらい、うんざりする暑さ。文明の利器のおかげでひんやり涼しいリビングも、一枚隔てた廊下やトイレでは汗がじんわり滲んでくる。早くあちらに戻りたいのに、やれトイレットペーパーがどうだとか、なぜブルーレットの色が変わっているのかといった屈託の無い疑問の連打を浴びると、ああ仕事の方がラクだ…と思う。

家族に言いたいこと、言ってしまいたくなること、つまりは不満だが、それが無いと言えば嘘になる。けれど僕の相手は、少なくとも見かけ上は僕や会社を慮ってくれるジェントルばかりだ。そこに戦いはない。あるのはそれっぽいコントだけである。

帰宅早々冷凍庫をこっそり開けたのは、そこにビールを忍ばせるためではない。(我が家のビールは配給制である…)霜の溶けたカップの表面で、イタズラ気にこちらを見つめるミニオンの顔は、まさに息子のそれである。同時に、恐らくこの後中身を堪能するであろう、妻のそれのようでもあった。

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