眠る前に読む小話

寝る前の気分転換になるようなショートストーリーを投稿しています。

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    眠る前に読む一言小話です 読者になっていただけるととてもうれしいです。

最近の記事

公衆電話がきえて代わりになくなったもの

復活してほしいものといえば、公衆電話だろう。携帯が普及した今じゃあなかなかお目にかからなくなったが、昔は、よく使ったものだ。 テレホンカードなんて今の若いものは知らないだろう。なんて、こんなことを言ったらおっさんだな。といってもおっさんなんだが。 そんな昔話をしたいんじゃない。 携帯がなかった時は不便だった。特に待ち合わせは不便だった。事前に時間と場所を決める。遅れてもどうしようもない。駅前の黒板で伝言をかくこともできたが、駅前で待ち合わせなんてすることはあまりない。遅

    • 甘くない至福のスイーツ

      至福のスイーツと聞いて思い出すのは、治一郎のプリンだ。治一郎は、バームクーヘンで有名な店だが、最近はプリンも出している。バームクーヘンを作る技法をどうやってプリンに応用しているのかわからないけれど、美味しい、らしい。 「らしい」というのは、俺がこれを食べるのは今日が初めてだからだ。 ヤナコが一番好きなスイーツがこれだった。ヤナコはスイーツがとても好きだった。レストランに行くと必ず「スイーツ、スイーツ」といってデザートを頼んだ。 アイスクリームの時もあれば、杏仁豆腐の時も

      • バレンタインデーに自分に贈るチョコレートの味は。

        コンビニのポスターを見ながら「そうか、バレンタインか」と気づく。2月14日という日付を気にしなくなって、もう随分となる。 ー久しぶりにチョコでも買ってみるかな コンビニで並べられているチョコの前で立ち止まる。ダイエットのために間食を減らしてから、チョコは長らく食べていない。バレンタインの今日くらいは、食べてもいいかもしれない。 そして、そのチョコとコーヒーを飲みながら、昔の恋人に思いを馳せてみるのも良いかもしれない。こんな日でもないと、思い出さないのだから。法事で故人を

        • モロッコでの3日間の忘れられない恋物語

          忘れられない恋物語と聞いて思い出すのは、一番付き合いが長かった彼女でも、結婚を考えた彼女のことでもない。 モロッコで3日間だけ一緒に過ごした女性のことだ。赤い月が見える砂の町で。 その時、私は、モロッコのある町のユースホステルで新聞を読んでいた。旅行中に新聞なんて読む必要はなかったけれど、暇だったのだ。暇だったので、ホテルのテーブルの上におかれていた新聞を読んでいた。 すると、彼女が話しかけてきた。「Hello」と。 そこでまず旅行者はどういう反応をするか。もちろん警

        公衆電話がきえて代わりになくなったもの

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          114本

        記事

          自分に贈りたいものって実は...。

          ーなんで...。昨日まであったのに 帰り道に寄った恵比寿アトレで私は立ち尽くす。 自分のご褒美として買おうと思っていた、kate spadeの長財布。ハートのモチーフと色合いがとても好きで一目惚れしてしまった。 でも、私がすぐに買える値段でもなかった。だから、TOEIC800をとったら買おうと思っていた。それが今日だったのに。2週間前まではあったのに。 店員さんに在庫を聞いてみたが、もうないらしい...。 英語勉強をあれだけ頑張ったのもバカらしく思えてきた。そもそも

          自分に贈りたいものって実は...。

          サウナでする会話は何が正解?

          以前、twitterでは「マクドナルドで女子高生がいっていたのだけれど」という枕詞が流行った。自分の意見を他の人が言っているようにいう手法で。 僕はマクドナルドで女子高生の話を聞いたことがあるか、といわれると、記憶にない。マクドナルドで聞く会話はきっと記憶には残らないのだ。それがマクドナルドの良さなのだ、マクドナルドでは重い会話は似合わない。コーラで流し込めるような軽い会話がきっと似合う。「今日何する」とか「テストの試験勉強した」とか。 方や、僕はサウナで人の話を聞く機会

          サウナでする会話は何が正解?

          Airtagで偶然の再会を装って

          AppleのAirtagを知ってるか。 それをつけているとその位置がわかるというものだ。基本は、自分のカバンやペットにつける。そうすれば無くした時に、iPhoneからその場所がわかる。子供にもたせておいてもいいかもだ。 でも、これを悪用するやつもいる。そう、俺のように。 気になる女性のカバンにこれを入れておけば、彼女がどこにいるか俺には手に取るようにわかる。あとは、レストランやカフェで偶然会ったフリをする。 「わぁ、偶然だね。ここで何をしてるの」 そうして2回も偶然

          Airtagで偶然の再会を装って

          異国でみるべきはツイッター?インスタグラム?

          遠い異国の首都からさらに飛行機を乗り継いでたどり着く街で宿をとる。 「とれるチケットならどこでもいい」と考えた旅行だったけれど、思ったよりもワイルドな街に降り立つことになった。英語もうまく通じないし、そもそも空気だって日本と違う。水が国によって異なるように空気だって国によって異なるものとなる。アジアの島国に降り立つ時に南国の匂いが鼻孔を驚かせるように、異国の空気は肺を驚かせる。「なんかきたよ」と肺があわてて声をあげる。深呼吸して、落ち着かせる。「大丈夫、この空気は吸っていい

          異国でみるべきはツイッター?インスタグラム?

          テクノロジーで花見はどう楽になった?

          テクノロジーによって我々の生活はとても便利になったと言われるけれど、実際、便利になったものは少なかったりする。花見なんて、なにも便利にならない。 たとえば、週末に花見を予定したとして、「週末の天気は?」と簡単にインターネットで調べられるようになったかもしれない。ただ、昔から、177に電話をすれば、天気を知ることはできた。 花見の撮影がスマホでできるようになったからって、撮影は昔からできた。インターネットができたからといって数千年前から桜の美しさは変わっていない。 結局の

          テクノロジーで花見はどう楽になった?

          セレンディピティとは

          「ね。セレンディピティって何」と、女が尋ねる。 ベッドの上で携帯を見ながら気だるそうに男が答える。 「偶然の出会いってやつだよ」 「人との出会い?」 「人にも限らないんじゃないかな。仕事とか、探してるものとか」 「いじめられている亀を探してたら、亀と出会う。これもセレンディピティ?」 「竜宮城に行きたいの?それとも何かの比喩?」 「セレンディピティのことが知りたいのー!」 「その単語、どこで聞いたの?」 「友達が飲み会の席でいってたー」 女は、Siriに話しかける。

          セレンディピティとは

          ツイッターで事故死を演出する男

          ツイッターで死を演出するということを楽しんでいた。 たとえば、「このアニメが好き」という設定の人物を作る。そして、その設定に合わせたプロフィールを作り、ツイートを始める。そのアニメのことをつぶやき、そのアニメが好きそうな人をツイートする。食事や週末の遊び方も練り上げて投稿する。 そして、同じようにそのアニメが好きそうな人をフォローする。コメントする。リツイートする。趣味がある者同士はつながる傾向にあるから、フォロワーはどんどん増えていく。まるで、俺の偽物のアカウントが本物

          ツイッターで事故死を演出する男

          2人きりの部屋

          男がドアを開けて中に入る。続いて女が「失礼します」といいながら部屋に入る。酔っているからか、足元がおぼつかない。 女はブーツを脱ぐのがめんどくさそうに、足のかかとでブーツをける。 男が先に部屋に入る。「コートかして」と男が女からコートを受け取る。ハンガーにかける。 部屋に入ると女が言う。「わぁ、キレイにしてるのね」 「Alexa、ジャズをつけて」と男が言うと、「はい、わかりました」という声に数秒遅れて、部屋にジャズが流れる。 「座って。ソファーなくてごめん。ベッドの

          14106と言って

          「14106」という言葉が世の中を騒がせるころ、僕は高校生だった。そして初めてのデートを経験することになった。 当時は、ポケットベルという数字を送り合う端末が登場し、学生たちはこぞって持ち始めた頃だ。それまでは、デートの誘いは、相手の実家に電話をしなければいけなかった。誰しも「親に電話を切られる」という洗礼を受けていたものだ。 愛しているという意味を込めた「14106(この数字の読み方を語呂合わせでアイ(1)シ(4)テ(10)ル(6)と読んだ)」という数字を送り合って。愛

          ポケベルが残してくれたもの

          2018年12月に、ポケベルが終了した。1990年代の後半に流行ったサービスで、お互い数字を送り合うことができるものだった。とはいえ、ポケベルは数字を受け取るだけの機能で送ることはできない。だから、僕たちは公衆電話からその番号を送りあった。 ポケベルはたくさんの思い出を僕たちにくれた。それまで、家には家庭の電話しかなかった。友人とコミュニケーションをする時は、そこに電話をするしかなかったのだ。家族がでることもあったし、それにそもそも家にいないとつながらないこともあった。

          ポケベルが残してくれたもの

          ホモデウスからみる未来

          ホモデウスを読んだ。世界中で、4000万部以上売られているユヴァル・ノア・ハラリのビッグセラーだ。 我々は不死と幸福、神性をめざし、ホモ・デウス(神のヒト)へと自らをアップグレードする。そのとき、格差は想像を絶するものとなる。35カ国以上で400万部突破の世界的ベストセラー というのが紹介文だが、そんなオカルト的な内容というよりも歴史や社会学をベースに、今後、人間や世の中がどうなっているのか大胆な仮説を提示した一冊である。 いろいろな読み方があると思うが、僕が得た感じた

          ホモデウスからみる未来

          下書きに残ったメール

          下書きに残ったメールを眺める。週に何度かは見返して文章を修正するけれど、まだ「送信」ボタンが押されていないメール。切手をはられてまだ封をされていない手紙のよう。 毎回、見返すたびに「こういう表現がいいな」と書き直す。文章って本当に難しいな、と思う。夜みる文章と朝みる文章は違う。タイピングをしてかじかんだ手を「はー」っと息で温めながら、そんなことを考える。 彼女と会ってから2年以上もたつ。最初は、飲み会の席だった。いわゆる合コン。最初の印象は「キレイな人だな」という印象だっ

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