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ジャスパー・ジョーンズへのインタビュー記事 その4

ジャスパー・ジョーンズへのインタビュー記事の日本語訳4回目です。

前回(その3)

DSはインタビュアーのDavid Sylvester、JJはJasper Johnsです。(※訳者注のカッコ内は私の勝手な解釈なので、参考程度に思って頂いた方が良いと思います。)

the processes involved in the painting are of greater certainty and of, I believe, greater meaning, than the referential aspects of the painting.

DS:以前あなたは、人が視覚によって興味を惹かれそうなものを作りたいと言いましたね。しかしあなたが作るものは単純に美的なものではありませんよね。

JJ:私、そんなこと言いましたっけ?

DS:言ったと思いますよ。確信していたわけでなかったようですが。

JJ:もし言ったならば、私は今それを否定して他のことを言いたいですね。一般的に人が仕事をしている時、そのような結果には関心がないと思います。人は自分の仕事に取り掛かりしなければならないことをしていると、それでエネルギーは使い果たされます。そしてそれの全体を見ずに物体として見るのです。それはもはや人生の一部ではありません。その瞬間、純粋に何者でも無くいれる者はなくなり、視覚や判断など様々なことに巻き込まれていくのです。見られるものを作ることは意図的ではない(※訳者注:見られるために作品を作ることと、それに一方的な思想を持たせることはイコールではない、という意味だと思います。)と思いますが、視覚と思考を通して物体を理解するのだと思います。そして、私たちが物体に与える意味は視覚によってもたらされるのだと思います。

DS:あなたの言う物体とは芸術作品の事ですか。

JJ:そうです、そうです。

DS:しかし、どの物体から始めるのですか。

JJ:新品のキャンバスじゃないんですか?

DS:いや、新品のキャンバスの事じゃなくて、そうですね、モチーフ、文字とか旗とかそういう、何でもそれになり得る好きなものとかです。

JJ:それは単に始め方の一つに過ぎないです。

DS:言葉を変えて言うならば、絵はあなたが最初に始めた要素には関係ないということですか。

JJ:いつであろうと、絵に入り込んだ要素はそれ以上の何ものでありません。例えば旗の絵は常に旗に関するものですが、しかしそれはもう旗に関するものではなくなり、筆の運び方や色、または絵の具の物理的性質に関するものになるのです。

DS:絵はそれらの要素に関係しないから、あなたが最初に始める要素として数字や文字などを繰り返し使うということですか。

JJ:関係はします、けれどそれだけではない。

DS:しかし、完成した作品とされるプロセスは、ペインティング以外のなにか一定のプロセスと類似点があるということでしょうか。

JJ:全くその通りだ。

DS:私が質問しているのですが。

JJ:えっと、そうですね。それはこういう様な類似点があります。あなたがあることをしていて次にまた違うことをします。それが違う別の所にあるプロセスについての考えを描写しているならば、それはより疑わしいと思います。そう言った場合は、真実であることもあればそうではないこともある(※訳者注:本当に全く別のことをしているのかどうか疑わしい、同じアイデアの延長ではないのか、という意味だと思います)。どのようなアイデアにせよ、それは常に疑いの余地があり、後に変化するであろうその構想は何か他のものを取り入れる可能性があるのです。これは、たとえば絵において、絵そのものが持つ理論よりも、それにまつわるプロセスは確実で有意義であることを意味すると私は信じています。絵画にまつわるプロセス自体が絵そのものの価値と同じかそれ以上の意味があると思います。

その5へつづく…

-References-
-引用元-

Harrison, Charles. Wood, Paul.(2003). Jasper Johns (b. 1930) Interview with David Sylvester. Art in theory, 1900-2000:an anthology of changing ideas. 2nd ed. Blackwell Publishing, pp.739-740

Johns, Jasper.(1963).Hand. The Art Institute of Chicago